【50代 脳の疲労】物忘れ・うっかりミスの原因は 脳のゴミ?! 疲れているのは体ではなく脳!

最近めっきり記憶力が落ちた、会話に「あれ、あれ」が増えたなど、アラフィー世代に多いその現象。実は年齢のせいではなく、脳に“ゴミ”がたまっているのが原因かも!? 「脳の“ゴミ”っていったい何?」「すでに認知症が始まっているということ!?」など、気になる脳のあれこれに脳神経外科医の奥村先生がアンサー。

 

教えてくれたのは…
脳神経外科医 奥村 歩先生

脳神経外科医 奥村 歩先生

おくむら あゆみ●’61年、長野県松本市生まれ。岐阜大学医学部卒業後、同大学大学院博士課程修了。『「朝ドラ」を観なくなった人は、なぜ認知症になりやすいのか?』(幻冬舎)など、著書多数。

 

① あなたの“脳のゴミ”蓄積度をチェック!

【Check!】こんなことが増えてきたら危険信号!

下は、「脳の疲弊」度と、「脳本来の機能を使っていない/使えていない」度のチェックリスト。多ければ多いほど、脳にゴミがたまっている!?

 “これ、覚えとかなきゃ”と思ったものは、迷わずスマホで写メを撮る

 

 最近、漢字が書けなくなった

 

 「あの人の名前、なんだっけ」など「?」が浮かんだときは、すかさずネットで検索する

 

 やらなければいけないことがいくつもあり、日々追われている

 

 仕事や家事に集中できず、以前はしなかったようなつまらないミスをすることが多くなった

 

 ホテルの部屋番号が思い出せない

 

 用事があって移動したのに「何をしにきたんだっけ?」といった状況に陥ることがよくある

 

 誰かがお茶をこぼしたときなど、とっさの行動がとれない

 

 同じ本を2冊買ってしまったことがある

脳のはたらき

脳のゴミっていったい何?

医学的には、脳内にある神経細胞が消滅した際に出る残骸、アミロイドβを指す。若いころは、アミロイドβが発生しても、ある程度は自然に除去されるが、年齢とともにその機能が働かなくなり、蓄積される一方に。アミロイドβが増えて凝集し、かたまりとなり、多くの神経細胞に毒性をもつことで、アルツハイマー型認知症が起こるとされる。

脳に散らばったゴミが「記憶の取り出し」をじゃまする

全国から毎日100名以上の患者が訪れる「おくむらメモリークリニック」の「もの忘れ外来」。その院長であり、これまで10万人以上の脳を診(み)てきた奥村歩先生は、「なかでも増えているのが、40代から50代の、女性の患者さん。もの忘れがひどくなっていることを気にして来られるのですが、皆さん、脳がゴミ屋敷になっているようですね」と!

「脳のゴミ、アミロイドβは、加齢だけでなく、脳のオーバーワークによっても増えてしまうんですよ。40代、50代の女性は、仕事に家事、育児、介護と、毎日とにかく忙しい。頭の中が『あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ』といっぱいになり、うまく働かなくなっているのでしょう。しかも最近は、スマホやタブレットの普及で、ちょっと時間があればそれを開き、よけいな情報を大量に取り入れてしまう。それで脳が疲弊し、神経細胞がやられて、アミロイドβが増えてしまうのです」
認知症の進行過程
「アルツハイマー型認知症を発症する30年ほど前から、脳内にアミロイドβがたまりはじめるといわれています」。個人差はあるものの、40代以降にゴミは急増。この蓄積をストップするか否かの分かれ目も、エクラ世代での“脳の鍛え方”にあり!
つまり、すでにアルツハイマー型認知症が始まっているということ!?

「いえいえ、アルツハイマー型認知症は、30年ほどかけて発症しますから、40代、50代ならその可能性は低いですね。ただし、アミロイドβが凝集し、かたまりの状態で脳内に散らばっていると、必要なときに、必要な記憶が取り出しづらくなってしまいます。結果、人の名前が思い出せないといった“もの忘れ”が起こることに」

そもそも脳はどのような仕組みになっているのかというと、まずは、視覚情報は後頭葉、聴覚情報は側頭葉、触覚情報は頭頂葉のように、五感を通じて得た情報を特定の部位にインプット。海馬がそれらをいったん“仮登録”し、長い間覚えておくべき情報か否かを選別。前者の場合は脳内ネットワークにちりばめて貯蔵し、脳の司令塔たる前頭前野が、そこから、必要なときに、必要な記憶を取り出すようになっている。ところが、脳内にアミロイドβのかたまりがうようよしていたら……。“お目当ての記憶”がどこにあるのか、見失ってしまうのは当然かも。
アミロイドβと認知症
正常な脳はアミロイドβが血流と逆行して体外に排出されるが、アミロイドβが増えてかたまりになったり、動脈が硬化したりすると、うまく排出されず、脳内に蓄積。これがアルツハイマー型認知症を引き起こすと考えられている。
「また、前頭前野の情報処理システムには、迅速に浅く考える『ワーキングメモリー』と、深く考える『熟考機能』、ぼんやりと考える『デフォルトモード・ネットワーク』があり、ワーキングメモリーが働いているときは、熟考機能はフリーズしています。やるべきことに追われているときや、ネットで情報収集しているときに活動しているのは、ワーキングメモリー。そこが、四六時中働いていると、深く考える機会がなくなり、脳の衰えにつながりかねません。脳を若々しく保つには、ゴミをためないのと同時に、脳の機能を錆びつかせないよう鍛えることが大切です」

 

② 脳の大掃除に役立つ4つの習慣<室内編>

エクラ世代は、脳の老化を食い止めるラストチャンス

「脳の大掃除に欠かせないのが、オーバーワークを避けること。かわりに、ぼんやりする時間をもち、脳のデフォルトモード・ネットワークの活性化をはかってください。これは、『自分とは何か』と自己認識したり、社会の中での自分の立ち位置を把握したりと、自分らしくある、いわば、『我に返る』ためのシステム。『我を忘れる』のが認知症ですから、いかに大切なものかわかるでしょう。また、デフォルトモード・ネットワークが低下すると、夢や希望がなくなり、うつ病を引き起こすともいわれています。デフォルトモード・ネットワークは、脳を健やかに保つカギなのです」

と同時に、脳にポジティブな刺激を与えることにも積極的に取り組みたい。

「脳の神経細胞はシナプスを通じてつながっていますが、脳がプラスの刺激を受けると、シナプスはつながる相手を広げ、脳内に太く、しっかりした回路ができます。この“つながる力”を認知予備力というのですが、これが多いと、脳にアミロイドβがたまっていても、認知症を発症しないというデータもあるんですよ」

この認知予備力、なんと貯金が可能とか。今から貯(た)めておけば、数十年後も若々しい脳でいられる可能性は大。

「脳を変えるには、生活を変える必要があり、生活を変えるには、習慣を変える必要があります。とはいえ、高齢になってから、長年の習慣を変えるのは至難の業。可能なのは、せいぜい50代まででしょう。いわば、皆さんの世代は、脳を変えるラストチャンス。この機会にぜひチャレンジしてほしいですね」

《習慣1》ネットで検索する前に、自分の頭で1分考えるクセをつける

脳 習慣1

スマホ依存が、脳の機能を低下させる!

漢字からタレントの名前まで、わからないことがあれば即座にネットで検索。それが習慣になっている人も多いようだけど、「それでは、脳の“思い出す力”が低下します。せめて1分は、自分で思い出そうとがんばって」と、奥村先生。同様に、覚えておかなければいけないことを写メしたり、メモ機能を使ったりすると記憶力が、目的地に行くのにナビに頼っていれば空間認知能力がダウンするので要注意。「脳を使う作業と、スマホに頼る作業を、自分なりに線引きすることも大切です」。

 

《習慣2》就寝1時間前から「スマホ絶ち」をし、目覚めたら朝日を浴びる

脳 習慣2

脳のメンテナンスには、良質な睡眠が必須

「就寝中、脳では、疲労物質の代謝や脳細胞の修復、アミロイドβの除去といったメンテナンス作業が行われています。ところが、就寝前にスマホやタブレットを操作してしまうと、ディスプレイの光が、睡眠物質であるメラトニンを減少させ、良質な眠りを妨げることに。そうならないためにも、せめて就寝1時間前にはスマホをオフにしてください。また、朝起きてすぐに太陽の光を浴びると、約15時間後にメラトニンが分泌されます。睡眠リズムが整うので、こちらもぜひ実践を」

 

《習慣3》食器はマシンに頼らず、手洗いをする

脳 習慣3

単純作業が脳をデフォルトモードに

「退屈な作業をしているうちに頭の中がクリアになり、ひらめきが生まれたという経験はありませんか? それは、リズミカルで単調な行動を続けていると、脳の意識的な活動が低下して、デフォルトモード・ネットワークが台頭するため。かのビル・ゲイツも、毎日30分、食器を手洗いしているというエピソードもあるほどです」。食器を洗う、靴を磨く、いんげんのすじをむく、etc.。考えずともできるような、体が覚えている作業に取り組む時間も、脳にとってゴールデンタイムに。

 

《習慣4》一日の終わりに“振り返り日記”をつける

脳 習慣4

一日1回は、自分と向き合う時間をもつ

デフォルトモード・ネットワークを活発にするには、日記を書くのも有効。「日記は、他人や社会、自然、世界と自分とのつながりを確認するのに役立つツール。寝る前に、今日一日の自分をぼんやり振り返りながら、行動や感じたことなど、数行でかまわないので、書きとめること。こんなふうに、自分とかかわる時間をもつことが重要です。

ここで紹介した4つの習慣は、すぐ効果が現れるものではありません。けれど、一日一日積み重ねていけば、きっと脳は変わりますよ」。
 

 

③ 脳の大掃除に役立つ4つの習慣<外出編>

もの忘れ、うっかりミス、うつ症状……。その原因は“脳のゴミ”がたまっているせいかも。あと数十年、いきいきと元気な脳でいるために、今すぐ脳の大掃除&トレーニングを! 外出時に実践できる脳の老化を食い止める習慣を、脳神経外科医の奥村先生がお教え。
 

《習慣1》すき間時間のスマホやタブレットの利用をやめてみる

 

大掃除の第一歩は、情報過多からの脱却

電車での移動中や、仕事がひと息ついたときなど、ちょっと時間ができると、スマホでSNSやニュースサイトをチェック。「その情報、本当に必要ですか? 自分にとってどうでもいい情報ならば、ワーキングメモリーを酷使し、脳を疲弊させるだけ。すぐにやめ、その時間をぼんやり過ごすことにあてましょう」。日々予定に追われている人は、スケジュール帳にあえて空白をつくること。何もしない時間を“予定”として組み込んでしまえば、ぼんやりタイムが確保できるはず。「“我に返る”時間をもてば、頭がクリアになって、すばらしいアイデアがひらめいたり、思いがけない考えが浮かぶかもしれませんよ」。

 

《習慣2》ストレスや悩みを“大”“中”“小”に仕分けする

 

自分を客観視することが、脳の疲弊を軽減

マルチタスク解消には、優先順位をつけ、順に片づけていくのが有効だけど、脳を疲弊させるストレスや悩みも、同じ方法で対処が可能。「すぐになんとかなることは小、少し手間がかかることは中、じっくり考えるべきことは大と、ランク分けを。こうすることで、自分が何にストレスを感じ、どういう問題に悩みがちかが客観視でき、頭の中が整理できると思います。ただし、大中小をつけるのは、自分でなんとかできる悩みに関してのみに。他人の言動など、自分でコントロールできないことは悩んでもしかたがないので、気にしないのが一番ですよ」。

 

《習慣3》週3回、30分のウォーキングをする

 

運動によって、“脳細胞の肥料”が分泌

「脳を健全に保つには、運動も必須。筋肉を動かすと、脳にBDNF(脳由来神経栄養因子)という脳細胞の肥料となる物質が生まれ、脳細胞が勢いづき、脳内回路が成長しやすくなるのです。週3回、1回30分以上の運動をする人は、まったく運動しない人に比べ、認知機能の低下が40%も押さえられたという研究報告もあります」。週3回、1回30分、ウォーキングなどの有酸素運動をベースに行い、余裕があれば、ゴルフやテニス、社交ダンスのような、対人的スポーツにもトライを。「相手と駆け引きをすることも、脳を刺激し、活性化させてくれます」。

 

《習慣4》本屋さんで、なじみのないコーナーをチェックする

脳活性化

偶然の出会いが、神経細胞のつながる力を活発化

「脳は、偶然の出会いや予期せぬ発見が大好き。それに対応すべく、神経細胞同士のつながる力が活発になるのです。今は、ネットで本を買うのが主流のようですが、それだと、新しい発見には出会いづらいと思います。時には、本屋さんに行き、なじみのないコーナーをのぞいてみては? 思わぬ掘り出し物に出会い、きっと脳が喜ぶはず。そもそも“リアルな体験”自体が、脳回路を太くするのに役立ちます。映画は映画館で見る、服は店頭で買うなど、足を運ぶことも重要です」

 

【体験記録】実際にデジタルデトックスをやってみた!

脳活性化

〈編集Jの場合〉

脳活性化
通勤時間は仕事のメールやSNSのチェックに追われ、帰宅後は娘が寝ついてほっとする時間はもちろん、お風呂にまでスマホを持ち込むほどのスマホ依存度。電車には本を持ち込むようにし、夜はスマホを置き毎日ストレッチをするようにしたら、リラックス度が上がりよく眠れるように!
 

〈編集K野の場合〉

脳活性化
就寝前の癒しのYouTube&動画配信鑑賞(深夜2~3時におよぶことも多々)、移動中のキャンディークラッシュ(ゲーム)を控えただけでスマホ稼働時間は半減! ベッドに入ったら即消灯で久しぶりに熟睡。朝6時にパッチリ目覚め、朝日を見ただけでおのずと今日もがんばろう!と前向きに。
 
脳活性化

 

④ 疲れているのは体じゃなく「脳」! 50代が注意したい“脳疲労”とは?

日々の疲労感にお悩みを感じているアラフィー女性も多いのでは? 実はその原因は脳にあるかも! 脳の老化にもつながるという“脳疲労”をためないアドバイスを、専門医がお教えします。

教えてくれたのは……

東京疲労・睡眠クリニック院長
梶本修身先生
大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授、「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」総括責任者。疲労回復の大切さを説く『すべての疲労は脳が原因』など著書多数。

「体」が疲れているのではなく、実は脳が疲れていた!

「なんとなく体がだるい」「ぼーっとする」というような慢性的な疲労感に悩むのが現代人。
「焼き肉で疲労回復しよう!」などと思いがち。でも、「それは大間違い!」と主張するのが、“脳疲労”のエキスパート、梶本修身先生。

「現代人の疲労は、筋肉などの体組織の疲れではなく、脳の疲れが原因です。多少の運動なら筋肉自体が疲れるということはなく、運動時に脈拍や体温の安定を保とうと働く、脳の自律神経に負荷がかかっているのです。

また、同じ作業をずっと続けるなどして脳の特定の部位を使い続けたりする場合も、同様。そのとき、脳内で活性酸素が発生し、脳細胞の酸化がすすみます。この状態を、“脳疲労”と呼びます」

そういう状態を、私たちは体の疲れだと誤解しているということ?

「そのとおり。ですから、疲れているのは脳なのに、焼き肉で疲労回復というのはナンセンス。効果にも科学的根拠はありません。でも、人はスタミナがついて回復したように思い込み、本来の疲れに気づかない。それが人間の脳の厄介なところでもあるんですね」
脳の疲れ

✔今すぐcheck! 脳疲労度チェックリスト

□朝起きるのがつらい

□もっと休んでいたいと思うことがある

□ 日中、眠くてぼーっとすることがある

□ なかなか物事を始められない

□ 仕事でもなんでも、途中で気力がなくなる

□ 筋肉の衰えを感じる

□ 最近、集中力が低下した気がする

□ 話すときにうまく考えをまとめられない

□ 記憶力が落ちてきたように感じる

□ 何事にも興味がわかなくなってきた気がする
ひとつでも思い当たる人は「要注意」というシビアなチェックリスト。現代人がなんとなく引きずっている疲労感は、実は筋肉や末梢神経などの末端ではなく、「脳」の自律神経の疲れが原因なのだそう。

加齢で疲れやすくなるのは自律神経にも一因が

脳疲労との関係で見逃せないのは、加齢による自律神経の機能低下。
「自律神経のパフォーマンスは、年齢が進むと男女とも確実に下がります(下グラフ)。
それなのに、若いころのペースでがんばるのは脳疲労をためるもと。また、女性の場合は更年期障害の影響もあります。
交感神経と副交感神経のバランスがくずれ、集中したいときに集中できなかったり、リラックスしたいときにリラックスできなくなったりする、自律神経失調症が起きやすい。」
脳の疲れ
加齢による自律神経の機能低下は、実は筋肉量の低下よりも大幅なもの。若いころのような生活・行動が徐々につらくなるのはこのせいで、無理を続けると、脳疲労がたまることに。
一度低下した自律神経機能の回復はむずかしいので、日々質のよい睡眠を心がけ、疲労回復に努めよう。

自律神経に優しい生活で脳疲労をためない!

睡眠時も注意が必要。
「更年期には女性ホルモン分泌量の低下によってのどの筋肉がゆるみがちになり、女性もいびきをかきやすくなります。女性のいびきは男性に比べれば音は小さめ。しかし女性は肺活量が少なく、男性よりも脳の酸欠状態になりやすいのです」

ただでさえ自律神経のキャパが減っているのに、夜も眠れなくなるなんて……。

「日中の活動で酸化した脳細胞を修復する唯一の方法は、その日の夜にしっかり睡眠をとることです。脳疲労が“疲れ”のうちは睡眠で回復できますが、それが修復不可能な“サビ”になるのが老化。脳が老化すると脳梗塞や心疾患などの生活習慣病発症のリスクにつながりますから、日々の睡眠の質を高めて、しっかり脳を休めましょう」
 

疲れたときの定番行為が、脳疲労の上乗せに?

脳の疲れ
■精がつく食べ物… 消化が悪く、自律神経へ負担大。
■デスクワーク後の激しい運動… 自律神経フル稼働。
■温泉旅… 旅疲れやのぼせで脳疲労が起こるケースも。

「元気になるはず」「気分転換」というマスキングによって、疲労を自覚しないのがかえって怖いので、注意。では、そもそもの日中の脳疲労の蓄積を少なくする方法はある?
「まずは脳からのサインをしっかり受け止めてください。疲れの段階として、“飽きる”“パフォーマンスが下がる”“眠くなる”というのがあります。飽きを感じたら、休憩したり、作業内容を変えて、使う脳の部位を変えてあげましょう。

また、加齢によって自律神経が機能低下しているのは事実ですから、エクラ世代のかたは、若いころのようにがんばりすぎず、要領よく“手抜き”することも大切です。これまでの経験を生かして、うまく力の配分ができるようになるのが理想ですね。
また、抗酸化物質“イミダペプチド”を積極的にとるようにしましょう。」
 

24時間フル稼働の自律神経を疲労から守るべし!

脳の疲れ
意識的に体を動かすときに使われる体性神経と違って、内臓器官の機能維持にかかわるのが自律神経。体が安定した状態にあるよう、24時間目まぐるしく気くばりしている。

「自律神経は交感神経と副交感神経に分かれ、活動時には交感神経優位、休息時には副交感神経優位というように、バランスをとりながら働いています。交感神経優位から副交感神経優位になるほうが時間がかかるため、睡眠前には時間をかけて副交感神経が優位になるよう心がけましょう」。12月にしがちな暴飲暴食も自律神経にはNG!

 

⑤ 老化を阻止せよ! 「脳疲労」をためない10のコツ

「だるい」「リフレッシュしようとしても体がついてこない」…実はその原因は脳にあるかも。脳の疲労はためずに、その日のうちに解消を! 「疲れ→老化」の流れを可能なかぎり阻止する10の方法を専門医が伝授!

脳疲労をためない10のコツ

1.3食しっかり食べる。特に朝食は必須

朝は、目覚まし時計のけたたましい「音」ではなく日の光とともに自然に起きるのがよいそう。そのうえで、「朝食は体をきちんと目覚めさせるスイッチ。忙しいときも、せめてフルーツぐらいは口に入れましょう。血糖値の上がり下がりが大きくならないよう、規則的に3食しっかりとるのが大切です」。また、しっかり噛むほうが、自律神経にも好影響が。
脳疲労をためない10のコツ

2.仕事は要領よく、「手抜き」する

自律神経のパフォーマンスが下がっている分を経験でカバーするのが、エクラ世代が目ざすべき生き方。「すべてに全力投球して100点を目ざすことはやめましょう。へとへとになって疲労がたまります。物事の優先順位と重要度を勘案してスケジュールを決め、明日できることなら今日はやらない、というのが大事ですね」。
疲労をためない10のコツ
例えば日中にしっかり家の掃除をと決めたなら、それに合わせてペットのシャンプーは必要、疲れを見越して夕飯は作らず外食にし、洗濯も日中ではなく夜にまわすなど、注力のバランスを決めて。
 

3.飽きたと感じたら、休む、違う作業に切り換える

「飽きる」のは、脳からの「疲れた」というサイン。「そのまま続けると活性酸素がどんどん発生します。飽きを感じたら、ひと休みを。あるいは、別の種類の仕事をしてみましょう。企画を考える→回覧書類に目を通す→調べものをするなど、使う脳の場所を変えることを意識してください。仮に、2時間で終わる仕事が3種類あるなら、2時間ずつ続けるよりも、1時間ごとに順繰りに取り組むほうが脳の疲労はたまりにくいといえます」。
疲労をためない10のコツ

4.長時間座るときは1時間ごとに立ち、歩く

現代は、座り仕事が圧倒的に多い。「同じ姿勢を長時間続けるのは、疲れがたまるもと。つらくなる前に立つ、を心がけましょう。目安は1時間に1回。さらに歩くとなおよいです。飲み物やトイレなど、何か用事をつくって」。会議などで立つのがむずかしい場合は、座ったままかかとの上げ下げをするのもおすすめ。
疲労をためない10のコツ

5.リラックスできる方法を見つけておく

3のひと休みをより効果的にする、自分なりの方法をいくつか用意しておくとよい。甘いものを少し口にする、音楽を聴く、リラックスできる香りをかぐ、ペットと遊ぶなどして、気持ちをリセット。「人間の活動は、思いのほか視覚中心です。パソコンのデスクワークを続けたあとに“スマホを見ながら昼食”では、脳は休めません。例えば昼休みの終わりに、10分程度目をつむる。これだけでも自律神経の状態を整えられます」。
疲労をためない10のコツ

6.イミダペプチドを含む食品を積極的にとる

ポリフェノールやビタミンCなど、抗酸化物質は数あれど、脳内で再合成され、脳疲労に対してきちんと効果を上げるのはイミダペプチドだけ。「鶏のむね肉にダントツに多く含まれるので、一日に100gを目安にとりましょう。ほかに多いのは豚肉やカツオです」。イミダペプチドは調理法を選ばないが、「水溶性なので、汁物に入れる場合はスープも飲んでください。鍋の具にするなら、締めは雑炊にするほうが効率的に摂取できます」。ただし、タンパク質の摂取は動物性と植物性をバランスよく。
疲労をためない10のコツ

7.運動は汗をかかない程度。90分以内で、週2~3回

ワークアウトやエクササイズは人気だけれど、「過剰に汗をかいて自律神経に負荷をかけるのは、活性酸素を発生させるだけなので好ましくありません。ヨガなどの軽い運動でも疲労因子FFが体内に発生し、疲労回復因子FRがそれを打ち消します。激しい運動では、FRの効き目が追いつかないことがあるので、要注意です」。外での運動は、目の角膜が受ける紫外線刺激も疲れを招く一因となる。日焼け止めだけでなく、UVカットのサングラスやメガネも着用したい。
疲労をためない10のコツ

8.ぬるめのお湯で10分程度の半身浴を

よい睡眠に入るためのルーティン3

夕食は就寝の3時間前、入浴は同じく2時間前に済ませ、副交感神経を優位にする行動習慣を決めておこう。脳疲労から回復するために、質のよい睡眠を心がけて。

冷える冬こそ湯温高めのお風呂に入りたくなるものだが、のぼせて体温調整が必要になるのは、交感神経が優位になってしまって逆効果。「38~40℃程度のお湯で、半身浴を心がけてください。“半身”といっても、腰から下という意味ではありません。首まではつからず、みぞ落ちから心臓くらいまでの高さを目安にして10分程度にしましょう。のぼせないことが大切です」。
疲労をためない10のコツ

9.眠る前はやや暗めの部屋で、オレンジ色の照明に

疲労をためない10のコツ

10.睡眠は6時間以上。右向き寝で、いびき対策を

「理想の睡眠時間は?とよく聞かれるのですが、個人差があるのではっきりとはいえません。目安として6時間以上です。特に最初の3時間を大切にしてください。死亡率からいって、6時以前の早起きをする必要はありません。少しまどろんで、起き出すくらいが自律神経にいいでしょう」。また、エクラ世代から増えるといういびきに効果的なのは、横向き寝だそう。「右半身を下にするといびきが出にくいので、気になっているかたはぜひ試してください。症状が重いかたは治療によって睡眠の質は改善しますので、医師に相談を」。
疲労をためない10のコツ
取材・原文/村上早苗 本誌編集部 イラスト/きくちりえ(Softdesign) ※エクラ2019年1月号・2020年1月号掲載

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