【50代介護の心配】親が認知症になってしまったら…。どうすればいい?「その時」のために備えておきたい

親が認知症になってしまう。50代ならだれにとっても、それは、決して他人事ではない。親が認知症になってしまったら…。保険の手続き、通院、介護…、どうすればいい?認知症についての基礎知識や介護の種類や方法、手続き、お金のことなど専門家にお聞きしました。「その時」のために、ぜひ参考にして。

 

教えてくれたのは……

認知症専門医 奥村 歩先生

認知症専門医 奥村 歩先生

おくむら あゆみ●岐阜大学医学部卒業、同大学大学院博士課程修了。「おくむらメモリークリニック」の「もの忘れ外来」で10万人以上の脳を診てきた第一人者。『認知症の「家族」と暮らす技術(テク)』(世界文化社)など著書多数。
在宅介護エキスパート 渋澤和世さん

在宅介護エキスパート 渋澤和世さん

しぶさわ かずよ●両親の介護を機に、社会福祉士など、福祉に役立つ資格を取得。その経験や知識を生かし、「在宅介護エキスパート協会」を立ち上げ、代表に就任。自治体の介護相談員や、認知症在宅介護講座講師なども務める。

 

①認知症の現状&アラフィー世代のリアルな声

認知症の高齢者(65歳以上)は、

2025年には約5人に1人相当する、約700万人に達する

(「内閣府平成29年版高齢社会白書」より)

【65歳以上の認知症患者の推定者】

65歳以上の認知症患者の推定者

認知症が原因とみられる

行方不明者数が、6年連続で

1万人を超える

(警視庁「平成30年における行方不明者の状況」より)

【行方不明者数の推移】

行方不明者数の推移
親が認知症になってしまったら

●物を置いた場所がわからなくなり、冷蔵庫には同じ食品が大量に入ったまま(買ったことを忘れている?)。危険な兆候は多々あるのに、「大丈夫!」と言い張る母。このまま放置していたら、症状が進行しそうで心配です。(54歳・自営業)

独立前の子供がいて、仕事もあるので、郷里でひとり暮らしの母が認知症になったら、施設に入れる予定だけど……。母の年金と貯金だけで賄えるのか不安。(46歳・会社員)

父は糖尿病と右目視力喪失、母はうつ傾向があり、今も病院への付き添いなど、私がしています。このうえ、どちらかが認知症になってしまったら、ひとりで看(み)るのは、体力的にも精神的にもムリ。その時がきたらどうしよう!(51歳・主婦)

2/1(土)発売のエクラ3月号では「親が“認知症”になってしまったら」を大特集。読者のお悩みQ&Aやお役立ち情報、専門家のアドバイスなど、今読んでおきたい情報満載です。書店で見かけたらぜひ手に取ってみてくださいね。

 

②まずは「認知症」を正しく知ろう

親が認知症を発症することに不安や恐怖を抱いている人は少なくない。けれど、認知症専門医の奥村先生いわく「正しく認識し、適切な対応をすれば、恐れることはありません」。いざというときに慌てないための正しい認知症の知識をご紹介。

知識に基づいた対処ができれば、恐れるに足らず。

高齢になれば、誰でも認知症になる可能性が

「読者の親は70代から80代? ならば、いつ認知症になっても不思議はありません。専門医の間では、軽度も含めれば認知症患者は1000万人といわれる時代、80代の4人に1人は、認知症という計算になりますから」と、奥村歩先生。

「認知症にもいろいろありますが、親の場合、アミロイドβの蓄積によって神経細胞が変性し、脳の広範囲が萎縮することが原因とされるアルツハイマー型認知症がほとんどでしょう。しかし、長く生きれば、それだけアミロイドβがたまってきますし、ほかの原因でも脳が萎縮し、衰えてくる。つまり、高齢になれば、誰もがなる可能性のある状態ですから」

病気ではなく、状態?

「皆さん誤解されているようですが、認知症は、病気ではなく、脳の機能低下が原因で、社会生活に支障が出る“状態”のことをさします。なので、たとえ記憶があいまいでも、同じ話を繰り返そうとも、生活に支障が出ていなければ、認知症とは診断されないんですよ」

こうした誤解や偏見こそが、「認知症の介護を泥沼化させている要因のひとつ」とも、奥村先生は指摘。

「認知症とはどんなもので、なぜこうした症状が起こるのかなど、正しい知識をもって、適切に対応すれば、怖れるに足りません。暴言や暴力なども、誤った対応が原因で引き起こされるのですから。それに、薬で症状を軽減することもできますし、進行を遅らせることも可能。手術で治すことができる認知症もあります」

認知症の発症は、本人や家族を含め、誰の責任でもない。

認知症

不便ではあるが、不幸ではない。

その人らしさの維持と他者との絆こそが特効

私たち子世代が、まずすべきは、見て見ぬふりをしないこと。

「早期発見のカギを握っているのは家族。以前の親を知っている人でなければ、異変には気づけませんから。それに、家族の『何かおかしい』は、たいてい当たっています。親が認知症であるという事実を認めたくない気持ちもおありでしょうが、『まだ大丈夫』などと見過ごさず、まずは、親のかかりつけ医に相談を。そこで、認知症の疑いがあると診断されたら、認知症専門医を紹介してもらいましょう」

もうひとつ、家族が心がけたいのは、「認知症だから、何もできない・させられない」と行動を制限せず、本人ができることはどんどんやらせ、なるべく人とかかわるように促すこと。そうやって、“その人らしさ”を維持し、他者との絆をもつことが、認知症の進行を食い止める大きな助けになるのだとか。

「認知症によって、今までできていたことができなくなるのは不便かもしれません。でも、認知症=不幸ではないのです。『親が認知症になった』と嘆くのではなく、親が晩年を安らかに過ごせるよう、ご家族で探っていただきたいと思います」

 

③知っておきたい認知症の「種類」と「症状」

認知症がどんなものかを学ぶことからスタート! 実は認知症にも種類があり、症状も大きく分けて2種類が存在する。

実は認知症にも種類がある!

・アルツハイマー型

レビー小体型

前頭側頭型

脳血管性型

今回、“親の認知症”として取り上げるのは、日本人の認知症の約半数といわれ、老化が主な原因になるアルツハイマー型認知症。でも実は、認知症には100以上種類があるのだとか。「それぞれ適切な治療法・対応策があるので、何が原因か見極めるのが必須。アルツハイマー型に加え、レビー小体という異常タンパク質の増加が原因のレビー小体型、脳梗塞や脳出血など、脳内の血流障害によって引き起こされる脳血管性型、前頭葉と側頭葉の萎縮で起こる前頭側頭型が“4大認知症”と呼ばれ、全体の9割を占めてはいますが、なかには、熱中症やインフルエンザといった別の病気や、薬の影響で認知障害が起きていることも。なので、異変を感じたら、まずは内科などでほかの病気が隠れていないか診てもらうのが安心です」。

【50代介護の心配】親が認知症になってしまったら…。どうすればいい?「その時」のために備えておきたい_1_7

認知症の症状は大きく分けて2種類

認知症の症状は、「中核症状」と「BPSD(認知症の行動・心理症状)」の大きく2つに分けられる。「前者は、根本的な改善が不可能なので、症状を受け入れ、生活の支障を軽減するための具体的対策を講じることが重要です。対して後者は、中核症状である情報処理能力の低下でもたらされる、二次的な症状。介護者が、それを理解し、本人に共感した対応をすることで、症状の緩和が期待できます」。

【中核症状】

「ひと言でいえば、情報処理能力の低下。直近のことを忘れてしまうなどの記憶障害、視覚に入ってくる外界の物質との間合いをとる視空間認知の障害、手順に従って遂行する遂行実行機能の低下、伝える・理解するといった会話能力の衰えなどがみられます」

【BPSD】

情報処理能力の低下によって、「以前のように自分らしくいられない」「人と上手にかかわれない」とストレスや焦燥感を抱くことで生じる症状。「本人の心の状態が深く関係しているため、周囲が上手に対応すれば、症状をコントロールすることが可能です」。

認知症
※せん妄/意識の混濁や混乱、注意力や思考力の低下した状態。心気症/身体的疾患がないのに「自分は病気(重病)だ」と思い込む精神疾患。仮性作業/周囲からは無意味に見える動作を繰り返す症状。

こんな症状が出たら認知症かも!? チェックリスト

認知症の早期発見に有効なのが、「記憶」「視空間認知」「遂行実行機能」という3つの“認知機能”のチェック。「認知症の場合、30分前のこと(近時記憶)はすっかり忘れているといったケースが目立ちます。また、視空間認知が衰えると、歩行時に障害物につまずいたり、道具をうまく使えなくなったりし、遂行実行機能が低下すると、きれい好きだったのに掃除ができなくなるといった症状が現われます。これらの中核症状と、それが原因のBPSDが出ていないか、さりげなく親の様子を観察してください。ただし、脳が疲れているなど別の理由で起こるもの忘れもあります。下記のリストを参考に、認知症の危険性があるのか、心配がないものか、冷静に判断を」。

認知症認知

“心配ない”もの忘れと“心配な”もの忘れ チェックリスト

認知症

《認知症専門医が教える》親が認知症かも?と思ったらすべきこと

1.まずは“かかりつけ医”に相談を

いきなり認知症専門医を訪ねるのではなく、ふだん親がお世話になっているかかりつけ医に相談を。「親の抵抗感も少ないですし、ほかの病気が隠れているかどうかのチェックも可能。より詳しい検査が必要なら、そこから専門医を紹介してもらえます」。

2.転ばぬ先の杖で、介護保険の申請を

「認定には時間がかかるので、『まだ早いかな』という時点で、申請を。それに、要支援1でもデイサービスは受けられ、その間介護者は休養がとれます。介護で、心身ともに疲弊しては、親子ともに不幸。そうならないためにも、早めの申請がおすすめ」

3.「ククカカ」は家族が管理

「親が認知症になっても、できることはなんでもさせるのが基本ですが、車(の運転)、薬(の管理)、金(の管理)、火(のもと)=「ククカカ」だけは別。万が一のことが起こったら、取り返しがつきませんから、家族がしっかりと管理してください」

 

④親のサポートのために、まず押さえるべきは?

家族だけで介護を続けるのはムリだと割り切る。

「7割できれば合格」くらいの気持ちで臨んで

4年にわたり、父母の遠距離介護を続け、父の死後、認知症の母を夫とふたりの子供と暮らす自宅に呼び寄せ、在宅介護を9年間行ってきた渋澤和世さん。その間ずっとフルタイムで働き続け、在宅介護エキスパートとしても活動している。

「こうした経験から、まず皆さんにお伝えしたいのは、介護に完璧はないと割り切ること。そして、決して無理をしないことです」

認知症の症状には、厄介なものが少なくない。暴言や妄想、徘徊といった問題行動が出ることも。

「介護は毎日のことなので、本当に大変。完璧を求めてがんばりすぎてしまっては、介護者が精神的に追い詰められ、介護うつになりかねません。そもそも今は、核家族化が進んでいるうえに、寿命が延びて介護期間が長くなっているため、家族だけで介護するのはむずかしいのが現状。プロの手を借りながら、『7割できれば合格』くらいの気持ちで臨めばいいのではないでしょうか。介護保険制度の知識を得て、地域包括支援センターに相談に行くなど、情報を集め、親の状態と、自分たちの状況に合ったサポートを利用してください」

介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない。

読者の中には、「大好きな親だから、喜んで介護する」という人もいたけれど、「自分を犠牲にしすぎないで」とも、渋澤さん。

「私は旅行や出張のときは、母を施設のショートステイに預けます。そんなふうに、“今”やりたいこと、“今”しかできないことは、介護より優先するようにしてきました。仕事も続けたかったので、働きながら介護できる方法を考えました。もちろん、自分の時間を確保しようとすれば、その間は、お金を出して母の介護を別の人に頼むことになります。気持ち、お金、時間。どれかを優先すれば、どれかは多少あきらめなくてはなりません。そこもまた、3つとも思いどおりになるのは無理と割り切って、その時々で、優先順位をつければよいのではないでしょうか。自分の生活や、やりたいことを優先したほうが、結果的に、よい介護ができるような気がします。介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにならない。私は、そう思っています」
認知症

介護に正解はない。自分の判断を正当化して。

苦しく、つらかったからこそ工夫をし、考え方を変えた

渋澤さんの母は、昨年他界した。

「今となれば、介護はさほど大変ではなかったといえます。苦しく、つらかったから、自分なりに工夫をし、考え方を変えたおかげでしょう。もちろん、『あのときこうしておけば』という後悔がないわけではありません。でも、介護に正解はないのですから、そのときの判断を正当化し、自分を責めないほうがいいと思います。介護は、気持ちも手も、ほどよく“抜く”のが大切ですよ」

 

ステップ1:介護保険を申請する

 

認定を行うのは住民票のある市区町村

介護保険は、原則40歳以上の人が加入する社会保険制度。65歳以上は第1号被保険者となり、介護や支援が必要になった際、住民票のある市区町村の認定を受け、サービスを利用することになる(40歳以上65歳未満の第2号被保険者でも、一定条件下で利用が可能)。まずは、市区町村の役所で介護保険認定申請書をもらい、必要事項を記入。申請書を提出すると、認定調査が行われ、それをもとに、介護認定審査会で介護の必要性を審査・判定。原則、申請から30日以内に認定結果が通知がされる。

「認定は、調査員による訪問調査と、かかりつけ医(主治医)の意見書をベースに行われます。訪問調査時は、親への聞き取りや動作確認のほか、介護者への確認事項もありますので、主たる介護者は必ず同席を」

また、介護保険制度とともに活用したいのが、地域包括支援センター。市区町村から業務委託された社会福祉法人や医療法人などが運営しており、高齢者のための総合的な相談やサービスを実施している。

「本人だけでなく、家族からの相談も受けつけていて、しかも、電話でのやりとりも可能。遠方在住の家族も、利用しやすいと思います。ただし、母体が民間なので、公正中立性に疑問が残ることも。事前に知識をつけたうえで訪問するのが安心です」
認知症

《地域包括支援センターで相談できること》

◆福祉サービスの紹介、介護保険制度の説明、介護保険申請の手伝い

認知症に関しての相談、福祉用具の紹介や使い方の助言

要支援1、2と認定された人、介護予防・日常生活支援事業の対象の人へのケアプラン作成

健康維持のアドバイス

など。

 

ステップ2:介護保険認定調査って? ケアマネジャーの選び方とは?

 

認定調査ってどんなもの? どうすればいい?

介護保険認定申請書を提出すると、認定調査員が利用者本人のところに出向き、身体機能・起居動作、生活機能、認知機能などを調査。「その際、親が虚勢を張り、『自分は大丈夫』という態度をとることが多々あります。なので、現況や困っている事象などをメモにし、調査員に渡すのがおすすめ。親が聞いたら、怒って否定しそうなことも、メモなら、さりげなく先方に伝えられます。また、同様のメモは、意見書を作成する主治医にも渡しておきましょう。両者が、親に関する正しい情報を共有しておけば、認定調査票と主治医意見書の内容に大きな隔たりが出ることなく、適正な認定結果を得やすくなります」。

認知症 認定調査

介護保険の認定度によって何が違う?

要介護状態区分は、最も軽度の「要支援1」から、重度と見なされる「要介護5」まで7段階に分けられ、利用できるサービスの内容と量、1カ月当たりの支給限度基準額が異なる。「基準額の範囲内でサービスを利用した場合の自己負担額は、利用者世帯の所得に応じて、1割、2割、3割のいずれかになります。また、保険給付の上限を超えての利用や、介護保険の対象外サービスの利用は、全額自己負担になることも忘れずに」。

介護保険の認定度に応じた支給限度基準額

(2019年10月現在)

介護保険

ケアマネジャーの上手な選び方とは?

介護保険サービスを利用する際、ケアプランを作成するのが、居宅介護支援事業所などに所属しているケアマネジャー。「ケアマネジャーを選ぶ際は、年齢層や性別、経験数などの希望を、事前に事業所に伝えておくとスムーズ。また、ケアマネジャーは、看護師や介護福祉士など、所持している基礎資格が異なるので、親が一番困っているのは何かを考え、それを得意とする人に依頼するのもよいでしょう。事業所やケアマネジャーは変更可能なので、相性が悪い、信頼がおけないなどの問題があれば、我慢せず、変更するのも一案」。

 

⑤「在宅介護」か「施設介護」かを考える

自宅で家族がケアする「在宅介護」は、親の家に子が同居する場合もあれば、子の家に親を呼び寄せるケースも。在宅介護を始める前に知っておきたいメリット・デメリットや、気になる費用などをプロがお教え。

デイサービスなどプロの手を借りることを前提に

在宅介護には、親の家に子が同居する場合もあれば、子の家に親を呼び寄せるケースもある。

 

「いずれにしても、在宅介護を選ぶのは、親ファーストの考え方をする、優しく、まじめな人が多い気がします。だからこそ心配なのが、ひとりで責任を抱え込み、がんばりすぎてしまうこと。前述したとおり、家族だけで介護するのはむずかしいと思います。そう開き直って、デイサービスや訪問介護など、プロの手を借りてほしいですね。それに、デイサービスに出かけることは、親の社会性を保つ一助にもなるのですから」

 

時にはそこで、相性の悪い人と遭遇するかもしれない。けれど、在宅介護なら、「ここにいる間の一時的なもの」と、割り切ることもできる。

 

「また、家族のケアによって、認知症の症状改善が期待できるのも、在宅介護ならではだと思います」

《メリット》

●家族のケアで、認知症の症状が改善することも

●慣れた場所なので、親の気持ちが安らぐ

《デメリット》

●家に介護スタッフなど他人が出入りする場合も

●親の状態によっては、リフォームが必要に

デイサービス

「働きながら介護」なら小規模多機能型施設の検討を

「私がフルタイムで働きながら在宅介護を続けられたのは、小規模多機能型施設のおかげ。通常は、訪問介護、デイサービス、ショートステイなど、サービスごとにお世話になる事業所が変わりますが、小規模多機能型施設なら、それらが同じ施設で受けられます。窓口が一本化されているので、手続きなどがシンプルですし、どのサービスを利用しても、基本的には同じ職員がケアしてくれるため、親も安心していたようです。ちなみに、親が要介護3のときは、平日5日間は7時15分に迎え・19時20分送りで通いのサービスを、月に数日は泊まりを利用していました」。利用料金は、要介護度に応じた定額制。毎月の介護費用のめどが立ちやすい半面、利用が少ないと、もとがとれないケースも。

定額制サービスの例

デイサービス
金額は負担割合が1割の場合。事業所によっては、この金額に加えてサービス内容や人員体制に応じて加算をしている。小規模多機能型居宅介護を利用している場合であっても、訪問看護、訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導、福祉用具貸与、住宅改修の利用ができる。(川崎市『高齢者福祉のしおり』を参考に作成)

 

「施設介護」のメリット・デメリット、施設選びのポイントは? 

 

親を施設に入れる=介護放棄ではありません

「親が日常生活に必要なことができなくなる、慣れ親しんだ道で迷ったり、警察に保護されたりする、服薬の管理ができない、火災の危険があるなどしたら、施設入居を検討してもよいかもしれません」

ただし、施設では、「入浴は週2回」のような制約が多々ある。大部屋の場合、プライベートな空間をもつこともほぼ不可能に。

「ただ、入居当初は『早く出たい』と訴えていても、しばらくすると、施設になじみ、受け入れるかたも少なくないと聞きます。そのかたがたに共通するのは、家族の面会が定期的にあること。家族が会いにきてくれるうれしさが、入居者の心を落ち着かせるのでしょう。施設に入れることは、介護放棄ではありません。無理をして在宅介護を続けた末に、虐待などしてしまうなら、施設介護を選んだほうがずっといいと、私は思います」

《メリット》

●万が一の事故にあうリスクが減る

家族の負担が減り、親は他者との交流ができる

《デメリット》

●金銭的な負担が増える

集団生活が苦手な親にとってはストレスになることも

介護施設

施設選びはここをポイントに

高齢者施設の種類と入居の目安

公的施設

特別養護老人ホーム
《認知症におすすめ施設》
要介護度が高く、経済的、家庭環境などに問題がある人が優先的に入居できる場合が多い。待機者が多いため、入居に時間がかかる。 要介護3以上
介護老人保健施設 本来は、在宅復帰を目ざすために利用する。入居期間の目安は3カ月。 要介護1以上
介護療養型医療施設
介護医療院
長期療養が必要な人が医療ケアを受けられる。療養の必要がなくなると退院となる。 要介護1以上

民間施設

介護付き有料老人ホーム
《認知症におすすめ施設》
食事、入浴など生活上のサービスを提供する。介護サービスは施設職員が行う。終身利用ができる。 自立~
要介護5
住宅型有料老人ホーム 食事、入浴など生活上のサービスを提供する。介護サービスは外部のサービスを利用することも多い。 自立~
要介護5
認知症対応型共同生活介護
グループホーム
《認知症におすすめ施設》
認知症の高齢者が共同で生活をする施設。アットホームで人気があるが、地域によっては提供がない。 要支援2以上
ケアハウス
(軽費老人ホーム)
まとまった入居金もなく月々の利用料も安いが、自立が困難になった場合、退去することになる場合もある。 自立~
軽度の介護度
サービス付き高齢者向け住宅 安否確認と生活相談サービスが義務づけられている。医療と介護は外部のサービスも利用可能。 自立~
要介護3

上の表のとおり、要介護度によって入居できる施設は異なる。また、親が特別な医療的措置を必要とする場合、それを行っているか否かもカギに。こうした条件や費用のほか、渋澤さんが「重視すべき」というのが立地。「私は、介護者である子の家の近くをおすすめします。そのほうが面会に行きやすいですし、親の通院付き添いなどで頻繁に訪問しなくてはならない場合もあるからです。これらを踏まえたうえで、実際に施設に足を運び、施設長と話をし、できれば体験入居やショートステイを。それで、やっていけるかどうかを判断するのが、安心です」。

 

⑥介護にかかる費用の相場は?

エクラの読者アンケートでも、特に関心が高かったのが「介護にかかるお金」。親が要介護状態になった場合、大半は介護費用以外に医療費用も考えなければなりません。それらが高額になった場合に活用したい制度の詳細や大体の費用相場を、在宅介護エキスパートの渋澤さんがご紹介。

親が認知症になったら、いったい、いくらかかるの?

読者アンケートでも、特に関心が高かったのが「介護にかかるお金」。

「親が要介護状態になった場合、認知症にかぎらず、なんらかの病気を患っているケースが大半だと思います。つまり、『介護にかかるお金』は、介護費用以外に、医療費用も考えなければならないということ。要介護度や病状によって異なりますが、私の経験をもとに、認知症で要介護3、自己負担額1割で想定したのが下のケース。在宅介護だと、家賃や光熱費、食費なども必要になります」

介護費や医療費が高額になった場合、自己負担を軽減する制度の活用を。医療費は「高額療養費制度」、介護費は「高額介護サービス費」、どちらも高額になった場合、「高額医療・介護合算制度」が利用でき、申請すれば所得などの諸条件で決められた自己負担上限額を超えて支払った分が戻ってくる。

「親の介護は、親のお金で。親の資産と収入内で受けられる介護方法を選んで」

医療費用の想定額

◆通院費 … 6,000円/月(アルツハイマー型認知症で服薬、関節痛で湿布、マッサージ、診察など)

入院費 … 平均220,000円/回

(生命保険文化センター調べ)

入院雑費 … 50,000円/回(差額ベッドレンタル費、オムツ代など)

※年間で、通院費72,000円、年1回の入院で270,000円、合計で約350,000円が目安。

介護費用の想定額 (要介護3を想定)

在宅介護の場合

◆介護サービス費 … 30,000円/月

その他 … 30,000円/月

(福祉用具代、オムツ代など)※年間で720,000円が目安。

施設介護の場合

公的介護施設 … 平均150,000円/月介護サービス費、生活に必要な費用を含む

民間介護施設 … 平均220,000円/月

(同上)※年間で1,800,000~2,640,000円が目安。

1年間の介護にかかるお金の目安は……

在宅介護の場合は、110万円程度

施設介護の場合は、220~300万円程度

介護

親を介護する際に心がけるべきこと《From在宅介護エキスパート》

1.気持ち・時間・お金に優先度を

仕事が忙しくて介護できない(時間がない)なら、お金を使ってプロにゆだねる、親の介護は自分がしたい(気持ちを優先)なら、自分の時間が減ることを覚悟するなど、気持ち・時間・お金のどれを優先するか決めると、介護の方針が固まりやすくなる。

2.介護の情報にアンテナを張る

介護保険制度や介護施設の特徴、車いすの扱い方といった具体的な介護の方法のほか、認知症の症状や問題行動、家族がとるべき対策など、有益と思われる情報を収集。そこから、親の状態や自分たち家族の状況に合わせ、最適な手段を選択して。

3.「完璧」より「割り切り」が大切

親が薬を飲みたがらないなら、好きなプリンに混ぜてしまう。そんなふうに、「目的を達成するのは、正攻法でなくてもOK」と割り切ることも時には必要。たとえプロでも、完璧な介護はむずかしい。「7割できれば上等」くらいの心構えで臨むのが○。

 

⑦親の認知症、こんなときどうしたら?Q&A

エクラの読者アンケートで多かった親の認知症についての悩みや疑問をピックアップし、医療と介護のエキスパートがずばり回答! 参考にしながら、自分に合った対策を探ってみて。

Q1.いやがる親を、どうやって検査に連れていけばいい?

A.ムリに専門医を受診させるより、かかりつけ医に

 

認知症かどうかの検査を、親が拒否するケースは多々。

 

「認知症は、痛い・苦しいといった症状がないので、本人に自覚がありませんし、認知症を受け入れたくないという気持ちもあると思います。なので、いきなり『認知症外来』や『もの忘れ外来』に連れていこうとせず、かかりつけ医に相談を。親がいないところで症状を伝えたり、メモにして渡すのがよいでしょう。最近は、かかりつけ医の認知症相談への対応レベルが高くなっていますし、専門医も紹介してくれます。なお、専門医を受診する際も、認知症の話題は前面に出さず、親には健康診断の延長線上と説明するのが得策です」(奥村先生)

 

「素直なタイプの親なら、『私たち家族が心配』『いつまでも元気でいてほしいから』という言葉でその気になるかもしれませんし、プライドが高く、頑固な親なら、『予防のため』といって、脳ドックを受けさせるのも一案。断固拒否の場合、居住地の認知症初期集中支援チームを活用するのも手。認知症の知識をもつ専門職員が、訪問によるアドバイスを実施しています」(渋澤さん)

Q2.30分おきに同じ話を繰り返す親にうんざり……

A.その裏にある心理をくみとり、共感しつつ、話題をチェンジ

 

「アルツハイマー型認知症で、初期から見られるのが近時記憶障害。30分おきに同じことをいうのは、そのため。なので、『さっきもいった』と指摘しても意味がありません。また、同じ言葉を繰り返す裏には、本人の切実な思いがあるので、聞き流すのもNG。本人の心理に共感しつつ、気をそらすために別の話題をふってください。例えば、旅行で明後日まで帰宅しない孫について、『何時に帰ってくるんだ』と、親が繰り返すとしたら、それは、孫を心配しているから。その気持ちをくみとり、『いつも気にかけてくれて、ありがとう。明後日に帰ってくるよ』と答えつつ、『好きなテレビ番組やっているよ』と、別のことに気をそらす。こんなふうに、認知症を理解すれば、適切な対応がとりやすくなるはず」(奥村先生)

 

「ふさぎ込むよりよいのですから、親が楽しそうなら、何かしながらでもいいので聞いてあげては? また、いらつくのは、自分に余裕がないからかも。その場合、親のそばからさりげなく離れるのがおすすめ」(渋澤さん)

介護

Q3.「お財布を盗まれた!」と騒ぎ、時に家族を犯人扱いします

A.「症状のひとつが出た」と、まずは冷静に受け止めて

 

「“もの盗られ妄想”も、アルツハイマー型認知症の典型的な症状。お財布をきちんと管理しているつもりでも、記憶障害ゆえ、どこにしまったか覚えていない。本人には自覚がないので、見つからない焦燥感や、なくなってしまったらどうしようという不安感を抱き、それから逃れるための“つじつま合わせ”として、『盗られた』と思い込む。これが、もの盗られ妄想のメカニズム。ですから、家族はまず、『症状のひとつが出た』と冷静に受け止め、『それは大変』と、本人に同情し、『一緒に探そう』と、体験を共有するのがベター。また、しまった場所にアタリをつけておき、そこに誘導して、本人自身に見つけさせること。先に見つけると、『犯人だから場所を知っているんだ』と思われかねません」(奥村先生)

Q4.親の暴言に我慢しきれず、ついいい返して、自己嫌悪に

A.家族なのだから、時には口論してもよし!

 

「私も、母の言葉に腹が立ち、何度も口論になりました。でも、認知症かどうかにかかわらず、家族間のいざこざはよくあること。毎回我慢することはないのでは? 母は口論したこと自体忘れていますし、私も、いいたいことをいってスッキリします。家族だから、口論もあり。そう考え、自分を責めないで。ちなみに私は、終業後に1時間だけファミレスで友人とおしゃべりしたり、月1回の習い事に行くなど、介護ストレスの発散法をいくつかもっていました。そんなふうに、自分のことも大切にしてほしいですね」(渋澤さん)

Q5.在宅介護をするなら、事前にリフォームすべき?

A.リフォームは早まらず、親の状況に応じて行って

 

親が生活しやすく、また、家族が介護しやすいように、住まいを改善するのは大事なポイントのひとつ。「ただし、『在宅介護に備え、今のうちにリフォームを』と、早まるのは危険。数十万円かけてバスルームの入口を広げたり、段差を解消しても、親の状態によっては、介護サービスの訪問入浴やデイサービスなどの事業所に依頼したほうが安全ということもあります。なので、リフォームは、親の症状や状況に合わせて行うのが賢明。ただ、どんな状況でも、トイレや居室、浴室など、親が利用する個所のドアは引き戸にしておくのがおすすめ。車いすになっても出入りがしやすく、ケガの危険性が低くなります。また、浴室とトイレの手すりも、立ち上がりの介助や転倒防止になるので、つけておくと安心です」(渋澤さん)。

Q6.施設のスタッフの対応に不満が。ストレートに伝えて大丈夫?

A.クレームではなく、質問のかたちで聞くのが○

 

「不満があった場合は、遠慮せず声を上げてください。ただし、クレームではなく、質問のかたちがおすすめ。『こういうことがあったけれど、それは普通の介護方法ですか?』などと聞き、当人から納得いく回答がなければ、施設長など責任者に聞いてみてもよいと思います。なお、スタッフとは、日ごろからコミュニケーションをとっておくことも大切。『いつもありがとうございます』とあいさつし、面会はもちろん、施設のイベントにもなるべく参加してほしいですね。施設に寄り添い、親を大切にしていることが伝われば、スタッフの対応が変わることもあります」(渋澤さん)

介護

Q7.介護にあたり、きょうだい間で話し合っておくことはある?

A.各自の役割や費用について具体的に決めると安心

 

「ひとりっ子なら、介護は“自分事”として考えていると思いますが、きょうだいがいると、『誰かがやるだろう』と、各自が楽観的に考えている可能性もあります。いざとなったときにもめないよう、早いうちに親の介護に関する会議を開いておきたいところ」。

 

そこで話し合うべきは、介護の方針と各自の役割、費用をどうするかなど。

 

「介護サービス事業者や病院との契約・対応の窓口になるキーパーソンは誰で、親の身体的サポートを行う主たる介護者は誰かを確認し、それぞれ、どのくらい時間を割け、どんなかたち(経済的援助、身体的介助など)で協力できるのか、なるべく具体的に話し合ってほしいですね。きょうだい間でもめたり、押しつけ合ったりすることもあるので、親は同席しないほうがベター。また、内容は、きちんと記録しておきましょう」(渋澤さん)。

Q8.親がしっかりしているうちにしておくべきことは?

A.食べ物の好き嫌いなども聞いておくと役立ちます

 

貯蓄や投資、年金額、保険関連は、通帳や保険証のありかとともに確認し、介護や延命治療の希望、お墓やお葬式、いざというときの連絡先などもリサーチを。「エンディングノートは、必要項目があらかじめ記載されているものも多いので、それを活用するのも手。『一緒にやろう』くらいの気軽さで促しては? 親が拒むなら、せめて、お金関連だけは、郵便物を定期的にチェックするなどして把握しておきましょう。いずれ子供が入出金を管理する可能性があるので、親がしっかりしているうちに、キャッシュカードや代理人用キャッシュカードを作成してもらうのもおすすめ。また、食べ物の好き嫌いや趣味なども聞いておくと、食欲がないときや、気分転換に連れ出す際などに役立ちます」(渋澤さん)。

取材・原文/村上早苗 イラスト/紙野夏紀 ※エクラ2020年3月号掲載

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