琳派×奇想。鈴木其一の魅力に迫る展覧会へ。

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根津美術館の重要文化財指定記念特別展『鈴木其一・夏秋渓流図屏風』の内覧会へお邪魔しました。会期は12/19まで、日時指定予約制です。

鈴木其一(1796~1858)は、江戸琳派の祖・酒井抱一の高弟として着実に力をつけ、時には師の代筆もしていた人物。抱一以上に写生的描写を研ぎ澄ませて琳派の造形に新風を吹き込むとともに、奇矯な表現を盛り込んだ作品も残しました。後者の代表が、昨年重要文化財指定となった『夏秋渓流図屏風』です。この屏風のおかしな描写の中でも筆頭といえるのは、えげつないほど青い水流でしょう。

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他館での展示の際、「エヴァンゲリオンの基地で困ったときに流すやつみたい」「あ~、特殊ベークライト?」というカップルの会話を聞いたことがありますが、確かに樹脂めいていて粘っこい。そして、やたらと低めに単一視点を取り、ひとつながりのリアルな空間に異なる季節を描くという強引さがまたVRっぽくて刺激的。

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会場では、写生とデザインが入り乱れた本作のインスピレーションソースと目される円山応挙の『保津川図屏風』(重要文化財)、山本素軒の『花木渓流図屏風』とともに、抱一の『青楓朱楓図屏風』や『光琳百図』(写真2枚目)、狩野派などの先行作品も展示。「いったいなぜこんな屏風絵を…?」という謎解き気分で、お出かけください。

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最後に、『夏秋渓流図屏風』と対照的ながら、其一らしい作品をひとつ。『秋草・波に月図屏風』という風炉先屏風ふうの二曲屏風です。抱一譲りの秋草の描写が洒落ていますね。描き方はやや類型化していますが、花や穂などのディテールまで丁寧で抜かりありません。さて現物を前にすると、通常の絹本よりどことなく絵が柔らかく見えます。それもそのはず。この絵には裏打ちがされていないのです。反対側にも裏打ちなしの絹地に金泥で月と波の絵が描かれていて、よく見るとそれが表側からもほんのり透けている! 

秋草とクロスするような対角線構図で波を描いたのは、明らかに透ける効果を狙ってのことでしょう。表側から見れば秋草越しの「月と流水」という見え方になっていると感じます。透過性のある絹地とカラーとモノトーン、洗練された趣向がすばらしい。展覧会初公開だそうでこれは必見の優品! 12/7~19に展示される酒井抱一の『夏秋草図屏風』(重要文化財)との見比べもおすすめです。

なお、11/30以降のチケットは11/24から予約受付となりますので、今のうちに手帳にメモしておきましょう。


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