見逃せない!“映画スター俳優”が存在感をみせる韓ドラ話題作!【見ればキレイになる⁉韓流ドラマナビvol.32】

エクラの美容記事でもおなじみのライター・山崎敦子がお届けする韓流ドラマナビ。今回は、久しぶりのドラマ出演で話題の“映画スター”たちをご紹介!名優たちの存在は韓ドラ界をますます盛り上げる!  

“ながら観”するなんてもったいない!映画以上に映画クオリティのドラマ

 韓国でも、日本でも、世界でも、いつの時代も映画スターは特別な存在。だから、そんじょそこらの作品には軽々とは出演しません。吟味に吟味を重ねてクオリティ高き1作品を選ぶ。そんなイメージって、ありません? そのせいかどうかは定かではありませんが、お茶の間で“ながら観”できるドラマに映画スターが出演することは滅多にない……。

 と、思っていたのですが、最近は、その構図、崩れてきたみたいなのですよね。「映画の撮影は密度が高いけれど、2時間という制約があり物足りない気持ちも。余裕を持って伝えたいことを全部表現できるドラマという舞台が恋しかった」と、ドラマ「カジノ」の製作記者会見で語ったのは、26年ぶりのドラマ出演で話題となった、押しも押されもしない韓国のトップ映画スター、チェ・ミンシク。

 そうなんです。ここ数年にわたる韓国ドラマは、“ながら観”するなんて勿体なさすぎるクオリティ高き作品も多く(そもそも字幕読まなきゃならないから、“ながら観”できないですが……)、「イカゲーム」をはじめ、グローバル大ヒットを遂げる傑作も続々。映画に比べて、尺が遥かに長いドラマだから、そりゃ映画という尺では描ききれなかった、あーでもない、こーでもないことも、大胆かつ繊細にたくさん盛り込めるというのは確かにドラマならではの強み。これを世界の大スターたちが放っておくはずもありません。
 ということで、今回は、このチェ・ミンシクをはじめ、ファン・ジョンミン、ハ・ジョンウ、チョン・ドヨンなど、帰ってきた映画スターのドラマ3作品にフォーカス。演技も演出も脚本も映画以上に映画クオリティ。さすがの秀作は、やっぱりチェック必至ですよ!

【1】韓国映画界の大ベテランが軽やかに演じる破天荒な“カジノ王”/チェ・ミンシク主演「カジノ」

 現段階ではありますが、もし‘23年上半期の韓国ドラマアワードを選出するなら、私個人的には断然この作品。そう、26年ぶりに帰ってきたチェ・ミンシクのドラマ主演作。白髪まじりのオグシに、ゆるんだお腹がちょっぴりキュートではありますが、勝新ばりの強面オーラが半端ないこのお方。
「カジノ シーズン2」のチェ・ミンシク
「カジノ シーズン2」のチェ・ミンシク ©2023 Disney and its related entities
 映画「オールド・ボーイ」をはじめ、その凄まじき“悪”の表現力で韓国映画界を牽引している一人。とはいえ、私は残虐シーンがあまり得意でなく、なおかつ、ノワールに流れる悪のロマン的な特別感が、なんだか逆にくすぐったくて(個人的見解です)、その手の映画をパスしがちなので、どちらかというとなじみ少なめな俳優さん。なのに、なのにです。今は、かなりなテンションで彼に夢中。

 チェ・ミンシクが演じるのは東アジアでカジノ王へと昇りつめたチャ・ムシク(実在の人物がモデル)。舞台の中心となるのは、むせかえるような湿気と熱気に包まれるフィリピンなのですが、華やかなカジノの世界でありながら、取り仕切る人たちは当然ながら裏社会的立場のかたがたばかり。つまりは、“悪のロマン”の匂いがぷんぷんするわけなのですね。なのに、なんか違う。そう、苦手派の私がこれまで抱いていた雰囲気とは、ちょっとというかかなり違うのです。
「カジノ」のチェ・ミンシク
「カジノ」© 2023 Disney and its related entities
 突然ですが、「賢い医師生活」というドラマを覚えていますか? ソウル大医学部出身の5人の医師の日常を描いた大ヒット作で、私的にも生涯トップ5にきっと入るであろう激愛ドラマなのですが、肝臓移植や、脳神経外科手術などなど、通常のドラマだったら、かなりドラマティックなタッチで描かれがちな生死をかけた手術シーンも「顔を洗いに行ってくる」みたいな日常的テンションで描かれていて、その軽やかなノリがなんとも洗練されているというか。それゆえにかえって彼らの誠実な倫理観がリアルに際立って、素直にジーンと感動させられるというか。
「カジノ」のチェ・ミンシク
「カジノ」© 2023 Disney and its related entities
 で、この「カジノ」です。もちろん「賢い〜」とは、似ても似つかないクライムドラマで、カジノ王チャ・ムシクの破天荒なその人生を描いていくわけですが、ラテン調の明るい音楽をアクセントに展開されるストーリーは、すんごいことが次々と起こっているにも関わらず、テンションはなぜか飄々と軽やか。ご飯食べに行くついでに人殺してきました的な。そう、彼らにとって勝つか負けるか、成功するか転落するか、生きるか死ぬかは、ごくごく当たり前の日常とでも言いましょうか。特別感を消し去ったクライムの日常感が、なんだか「賢い〜」の裏社会版みたいだなあ〜なんて(もちろん、全然別物ですが)。だからなのか、ムシクの飄々とした生き様が、かえってどんどんドラマチックに響いてきます。
「カジノ」のチェ・ミンシク
「カジノ」のチェ・ミンシク(左)とイ・ドンフィ(右) © 2023 Disney and its related entities
 そして、このムシク。ドラマ前半はムシクの生い立ちエピソードが挿入されながらカジノ王として昇りつめていくまでのストーリーが描かれていくのですが、とにかく機転がきくというか、たくましいというか。賭博師のDV父は刑務所暮らしが多いため、ムシクは孤児院に預けられるのですね、少年時代に。そこでシュンとならないのがこのムシクのムシクたるチャーミングなところ。

 裏山に生息する蟻が漢方薬としてお金になると知れば、友だち誘って全身蟻に噛まれながらしっかりお金を稼ぎ、でもって、それでは欲しかったチキンが買えないとわかれば、そこにいた少年にじゃんけん勝負を持ちかけ、挙句にはすっからかん。でも、全然へこたれない。稼いだお金に瞳キラキラさせちゃう少年ムシクのなんと可愛らしいこと。で、腕っぷしも強く、校舎の屋上でタバコなんかふかしちゃうとんがり学生になっていくのだけれど、度胸はいいくせに淡泊で状況のなすがまま流されまくっちゃう青年時代のムシクがめちゃくちゃ愉快で魅力的。
「カジノ シーズン2」のチェ・ミンシク
「カジノ シーズン2」©2023 Disney and its related entities
 大人になったムシクは、とてつもない野望があるわけでもなく、貧しいからと卑屈になるわけでもなく、ただ、お金儲けになると俄然瞳輝かせちゃう、ある意味どこかにいそうな人物。ただ、人よりちょっと賢くて、友人に対しては情が厚く、そして少しばかりの腕っぷしの強さと度胸があったというか。それが、どう転がりに転がってカジノ王として君臨していくのかを軽妙に描いていく前半が痛快。そして、さらに魅せられるのが後半なのですが、ドラマのテーマは中国の諺“花に十日の紅なし”の意味するところ。
「カジノ」のソン・ソック
「カジノ」のソン・ソック © 2023 Disney and its related entities
 ということで、その後のムシクがどうなっていくかは見てのお楽しみというところですが、フィリピン舞台の韓国裏社会の人間模様を時にはコミカルに、時には軽やかに、時には緊迫感をリアルに描いていく洒脱な演出が絶品で、そして、もちろん、ステレオタイプではない人間味豊かなムシクを演じたチェ・ミンシクをはじめとした俳優陣が素晴らしい。

 ムシクを追う刑事スンフンを演じるのは、「私の解放日誌」ですっかりアラフィーのアイドルとなった俳優ソン・ソック。「私の〜」の汗みどろセクシー・ソックもいいですが、ナチュラルな正義感を飾り気ない熱さで演じたピュア・ソックにもかなり持っていかれます。さらに、情けないのに図太いカジノの客引き男ジョンパル役のイ・ドンフィといい、首筋のキスマークタトゥーについ目がいっちゃう男、サング役のホン・ギジュンといい、主軸キャストはもちろん、脇役からカメオ出演(メチャ豪華)の一人一人に至るまで全てが全て完璧。ゴールデンウィークの一気見にもおすすめです。

■「カジノ」「カジノ シーズン2」ディズニープラス スターで独占配信中

【2】名優2人の演技から目が離せない!実在した韓国人麻薬王のストーリー/ファン・ジョンミン、ハ・ジョンウ主演「ナルコの神」

「ナルコの神」のファン・ジョンミン
牧師ヨファン役のファン・ジョンミン Netflixシリーズ「ナルコの神」独占配信中
 チェ・ミンシク同様、長きに渡り韓国映画界に君臨している大スター、ファン・ジョンミンとハ・ジョンウ。このドラマが配信されたのは昨年の秋でしたが、この二人が初共演するということで、かなり話題となった作品です。「カジノ」同様、実話ベースのクライムサスペンスで、こちらはかなり過激なシーンも出てきたりして、アラフィー女性には結構刺激的ではありますが、この共演はやっぱり観てほしいなあ、なんせ、マジで痺れますから。

 舞台となるのは南米の小国スリナム共和国。エイを輸入して一儲けしようぜと親友に誘われ、ハ・ジョンウ扮するカン・イングがスリナムに単身赴任するところから始まります。順調に事業が進んでいたところに、中国マフィアの脅しが入り一大ピンチに。そんなイングを助けたのが、ファン・ジョンミン演じる牧師のヨファン。
「ナルコの神」のハ・ジョンウ
カン・イング役のハ・ジョンウ Netflixシリーズ「ナルコの神」独占配信中
 ところが、数日後エイをのせた船から麻薬が見つかりイングは逮捕。実は、ヨファン牧師、'09年にブラジルで逮捕された実在する韓国人麻薬王がモデル。つまりイングは嵌められたわけなのですが、無実を主張するイングの前に国家情報院の男チャンホ(パク・ヘス)が現れ、潜入捜査の協力を要請されるのです。素人相手にホンマなのかいと思わずツッコミを入れたくなりますが、実話です。で、イングは何ごともなかったように装って再びヨファンに接触していく……というかなりスリリングな展開。
 まるで映画な映像も、刺激的な展開もゾクゾクものでありますが、映画「国際市場で逢いましょう」でもまんまと泣かされてしまったファン・ジョンミンの、ヨンファが乗り移ったとしか思えない憑依型演技と、映画「神と共に」シリーズでも感動必至だった、ハ・ジョンウの内に熱い情熱を潜ませた自然体演技と。騙し通せるのかハ・ジョンウ、見破るのかファン・ジョンミンというジリジリした探り合いの応酬がもうたまらなく。
「ナルコの神」のファン・ジョンミンとハ・ジョンウ
ファン・ジョンミン(左)とハ・ジョンウ(右) Netflixシリーズ「ナルコの神」独占配信中
 もちろん、今やグローバル俳優となったチャンホ役のパク・ヘスも、チンピラ男性弁護士に扮したユ・ヨンソクも、ヨンファの信頼高き部下の男ピョン・ギテ役のチョ・ウジンも、このドラマで演じ合っているのが嬉しくて堪らないというようなワクワク感さえ伝わる名演技。全6話なので、一気見もあっという間です。

■Netflixシリーズ「ナルコの神」独占配信中

【3】アラフィー演技派女優の異色のラブコメ /チョン・ドヨン主演「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」

Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」チョン・ドヨン
惣菜屋の店主ナム・ヘンソン役のチョン・ドヨン Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」独占配信中
 Netflix配信の最新作映画「キル・ボクスン」での半端ない殺しっぷりもめちゃカッコよかったですが、私的には映画「男と女」(‘16年)で見せたタバコを深く燻らせるラストのショットが強く記憶に残っているといいましょうか。コン・ユとの美しすぎるベッドシーンも話題ではありましたが、ああ、男って、ああ、女って……、なんて感じの感慨の湖にどっぷり浸らせていただいたというか。大ヒット作「プラハの恋人」(ハ・ジョンウとも共演)とか、近々では「人間失格」とかドラマ出演もありますが、やっぱり活躍の中心は映画。大人ロマンスの職人とも称される、あのカンヌでも女優賞に輝いたアラフィー演技派映画女優チョン・ドヨンが選んだ2年ぶりのドラマは、なんとラブコメ。
Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」のチョン・ギョンホ
スター講師役チェ・チヨル役のチョン・ギョンホ Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」独占配信中
 チェ・チヨル(俳優チョン・ギョンホ)は芸能人ばりの人気を誇る予備校の数学講師(タイトルの“イルタ”は 一番のスターの略語で韓国では人気講師のことをイルタ カンサと呼ぶ)。わずか10分で1700万ウォン稼ぐと豪語するほどなのだけど、実は過去のトラウマがあって不眠や摂食障害に悩まされているというキャラクター。食べるもの食べるもの全て吐いちゃうチヨルですが、唯一吐かずに美味しく食べられる惣菜を売る店を発見。その店を営んでいるのが、そう、チョン・ドヨン扮するナム・ヘンソンというわけです。ヘンソンには、受験を控えた成績優秀な娘ヘイ(ノ・ユンソ)がいるのですが、最初は受験なんてと無関心だったヘンソンも、ヘイがチヨルの授業を受けたがっていたと知って、にわかに受験生親バトルに参戦、ということであーだこーだといろんな問題が立ち上がりつつ、チヨルとのラブコメが展開されるという塩梅。
Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」のチョン・ドヨン
Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」独占配信中
 最初は反発しながらも次第に、という流れは韓国ラブコメあるあるではありますが、私的には二人のラブの展開よりも女優チョン・ドヨンと俳優チョン・ギョンホというベテラン演技派同士の、永遠に続く小技の応酬ラリーに魅せられて目が離せなかったというか。さらに、ドラマを面白くするのがサスペンスまで絡めた受験にまつわるそれぞれの親と子のストーリー。ああ、親って、ああ、子供って……、なんて感じで、アラフィー女性ならジーンと身につまされる物語も多々あるので必見です。さらにさらに、ヘンソンの娘ヘイと、同級生ボーイズ二人が織りなす微笑ましい三角ラブも。ヘイ役のノ・ユンソは「私たちのブルース」でデビューしたばかりの多分今最も注目度の高い新人女優さん。「私たち〜」でもデビュー作とは思えない存在感でしたが、本作もかなりいい味出してますので、ぜひチェックを。
 いろんなドラマを盛り込んだ怒涛のラストは全てまとめに入ったな感がなきにしもあらずではありますが、それでもハッピー感は満載。ゴールデンウィーク、気持ちを軽やかにしたい人は、ぜひ、こちらを。

■Netflixシリーズ「イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~」独占配信中
山崎敦子

山崎敦子

旅行記事に人物インタビュー、ドラマ紹介、実用記事から、着物ライターとさまざまな分野を渡り歩き、今では美容の記事を書くことも多くなったさすらいのライター。襲いかかるエイジングと闘いながら、ウキウキすること、楽しいことを追い求め続ける日々を送る。
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