スター性抜群!今最も注目すべき韓国俳優キム・ヨングァン【見ればキレイになる⁉韓流ドラマナビvol.33】

エクラの美容記事でもおなじみのライター・山崎敦子がお届けする韓流ドラマナビ。今回は、ドラマ「愛だと言って」で多くのアラフィー女性たちを虜にしている俳優キム・ヨングァンに大注目。  

心情を細かく映し出す、切なく温かいラブロマンス『愛だと言って』

「愛だと言って」キム・ヨングァン
「愛だと言って」主演の俳優キム・ヨングァン。© 2023 Disney and its related entities

最近メキメキと頭角を現している、黄金世代の“モデル出身”俳優

 背が高い男子が韓国の俳優にはやたらと多い……と感じたりしませんか。その一因かどうかは定かではありませんが、堂々と主演を張る韓国ドラマのスター俳優には、モデル出身がめちゃくちゃ多いという事実。
 コン・ユにクォン・サンウ、カン・ドンウォン、チュ・ジフン、チョン・ウソン、チャ・スンウォン、チョ・インソン、ユ・ジテ……、韓流ドラマをそれほど観ない人でも、きっと一度は見たり聞いたりしたことあるに違いないこの錚々たる面々もみ〜んなモデル出身です。
 さらに黄金世代といわれる‘87〜’89生まれの中にも、イ・ジョンソク、キム・ウビン、イ・スヒョク、アン・ボヒョンなどなど人気スター揃いだし、さらにさらに、’90年代生まれの若手の中にも、ナム・ジュヒョク、チャン・ギヨン、キム・ヨンデ、ファン・イニョプ、チェ・ジョンヒョプ、ピョン・ウソクといった主演クラス俳優が目白押し。
 
 そこに佇むだけで絵になるのはもちろん、単なるビジュアル力だけでなく、長丁場のドラマをぐい〜っと引っ張り続けるスター性に優れる演技派としての実力も、一様に備えているところがさすがなのですが、そんなモデル出身俳優の中でも、最近メキメキと頭角を現しているのが、この方。’87年黄金世代生まれの36歳、キム・ヨングァンです。
「愛だと言って」キム・ヨングァン
「愛だと言って」の主人公ハン・ドンジン役を演じる、モデル出身の俳優キム・ヨングァン。© 2023 Disney and its related entities
 19歳の時にスカウトされ2006年のソウルコレクションにてモデルデビュー。2009年には、東洋人として初めてミラノコレクションのディオール・オムでランウェイに登場するなど超一流のモデル経歴。188cmの長身に、スーツや白シャツを映えさせまくる広い肩幅、誠実そうな面立ちが配された小さなオルグル(顔)。そりゃあ、ランウェイで引っ張りだこなはずです。
 とはいえ、2008年あたりから活動し始めた俳優業はといえば、その華やかな経歴とは反対に、小さな脇役時代も長く、2012年「ラブレイン」や2014年「ピノキオ」の、主人公の恋のライバル的役で俳優として認知され始めたという経緯も。
 
 私自身も、彼を最初に認識したのが「ピノキオ」。視聴した当時は主演のイ・ジョンソクに夢中だったこともあり、やたらガタイのいい人だな……くらいの認識だったのですが、どちらかというと優しく人のいい役柄が多かった彼の、初のサイコパス役となった昨年配信の「サムバディ」でガツンとアッパーカットをくらいダウン。なんとか立ち上がったものの、続くこの「愛だと言って」で徐々に深く深く効いてくるボディブロウを受けて、完璧にKOされてしまったという次第。
「愛だと言って」キム・ヨングァンとイ・ソンギョン
ヒロイン役の女優イ・ソンギョン(左)とキム・ヨングァン(右)。© 2023 Disney and its related entities
 で、ドラマです。そのタイトルからも連想される通り、ど真ん中のラブロマンス。仕事仲間の編集者(小学校時代からの韓流ドラマファンで、30代になった今では字幕なしでも観れちゃうツワモノ)が「でも、この邦題、違和感あるんですよね」と一言。

 そうなんです。「愛だと言って」という言葉には、何かにしがみつくような響きもどこかにあって、タイトルだけ聞くとなんだか安手のメロドラマ?みたいな印象もなきにしもあらずで……。実は私自身もそう思い込んでかなりスルーしていたのですが、そのツワモノにいわれて見進めると、韓国の原題は「사랑이라 말해요(サランイラ マレヨ)」。直訳すると「愛と言います」。ほら、受ける印象のニュアンスが全然変わってくると思いませんか。ドラマ中盤以降になるとその違和感が確信に変わってきたりするのですが、まずは、ドラマの内容です。
「愛だと言って」イ・ソンギョン
ヒロイン、シム・ウジュ役の女優イ・ソンギョン。© 2023 Disney and its related entities

“復讐”だけど、不穏なドロドロ恋愛ドラマとはまるで違う

 ヒロインとなるのは、シム・ウジュ(演じるのはヨングァン同様モデル出身のイ・ソンギョン)。庭のある一戸建ての家に姉ヘソン(キム・イェウォン)と弟のジグ(チャン・ソンボム)と3人で暮らしているのですが、17歳の時に父が不倫し家を飛び出したことから人生が一気に低迷、心に深い傷を負ったまま日々過ごしているという設定です。しかも、3人の母親はそのストレスから癌を患い、遠く離れた町で療養中。そのウジュの元に、父の訃報が届き、きょうだい3人は、今は父と婚姻関係にある愛人ヒジャ(ナム・ギエ)から家までも奪われることになってしまう……というのが、この愛の物語のそもそもの発端。
 愛人ヒジャが自分たちの家を売ったお金を息子の会社に投資したと聞いたウジュは、なんと“復讐”のためにその息子の会社にアルバイトとして入り込むのですが、その“息子”こそ、この愛の物語のもう一人の主人公キム・ヨングァン演じるハン・ドンジンというわけです。
「愛だと言って」キム・ヨングァンとイ・ソンギョン
© 2023 Disney and its related entities
 それにしても“復讐”というと、なにやら不穏なドロドロ恋愛ドラマが始まる感じですが、でも、全然違います。タイトルやそんな文字面から連想される思い込みをいい意味で裏切られるとでもいいましょうか。

 確かに展開されるのは切なすぎるロマンスです。だって、家族をボロボロにされた娘とボロボロにした愛人の息子なわけですから。なのに、見進めれば見進めるほど、なぜだか見ている自分の心まで柔らかくほぐされ癒されていくような、これまでにない感覚なのです。穏やかに綴られる良質な私小説の行間に描かれた余韻を、静かに味わいながら読み進める、そんな感じ。
 ポイントは、主人公二人の人となりとでも申しましょうか。例えば、ウジュ。かなりな無愛想で、理にそぐわない要求や出来事には相手の思惑関係なくズバズバと意見する一見強面女子なのですが、実は自分のことはさておき、何よりも人を思いやる優しさに満ちているというか。大切なものを奪われた傷を持つゆえに、大切な人を守りたいという気持ちが深く、つまりというか彼女の辞書にはもともと“復讐”という文字は存在しない……そんな人物なわけです。
「愛だと言って」キム・ヨングァンとイ・ソンギョン
© 2023 Disney and its related entities
 一方、ドンジンはといえば、会社社長で高級マンション住まいという一見恵まれた暮らしを送っているように見えるのですが、4回も結婚を繰り返したナップン(悪い)母の信じがたい行動に少年の頃から何度も傷ついてきたうえに、長年つき合った恋人ミニョン(アン・ヒヨン)にも、信頼する仕事先にも、裏切られてきた人。なのに、何ひとつ言い返すことなく、彼は静かに耐え続けているのですが、それも「自分の言葉で相手の傷つく表情を見るほうが余計に辛いから」という優しさから。ウジュはそんなドンジンを密かに観察し続け復讐を試みるのですが、彼の誠実さと計り知れない孤独を知り、自分でも知らないうちにドンジンを守ろうとする行動に出てしまうのですね。それを、愛と言う、とは気づかないまま。
 心に染み渡るような優しいOST(サントラ)の調べにのせて、ドラマはさまざまなことが起きていく2人の日常を丁寧に追いながら、その置かれる立場と心情をきめ細かに映し出していきます。多くを語らずに移りゆく心のうちを、繊細かつ豊かに表現する主演2人の眼差しが切なく、そして温かく。その行間と余韻を心ゆくまで味わいながら、どうか2人の愛の行方を見守ってほしい、とつくづく。号泣というよりも、何度も思わずじわっとあふれ出てきてしまう涙に要注意です。
「愛だと言って」キム・ヨングァンとイ・ソンギョン
ウジュの親友、ジュン役の俳優ソン・ジュン。© 2023 Disney and its related entities
 ウジュの姉ヘソンと、ウジュの高校時代からの親友で同居人の男性ジュン(ソンジュン=彼もモデル出身!)、ウジュの弟ジグなどなど、2人の周囲の人々も素晴らしく魅力的で、それぞれの優しさと愛らしいストーリーにも癒されます。

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「サムバディ」

「サムバディ」のキム・ヨングァン
Netflixシリーズ「サムバディ」独占配信中
 アラフィー女性にはちょっと刺激的すぎるかもしれません。なんせ、ドラマの軸に流れるのがマッチングアプリを介して起こる猟奇的な連続殺人事件なのだから。そんな常軌逸するサスペンスを舞台として、そのアプリを開発した女性ソム(カン・ヘリム)と連続殺人犯、そして、ソムの2人の友人たちが織りなす危うい愛の物語とでもいいましょうか。

 ヨングァンが演じるのは、もちろんこの連続殺人犯。ユノという名前の好感度高い建築デザイナーなのですが、ソムが開発したアプリを利用し始めたことから、自分の中に眠っていた猟奇が目覚め、アプリで出会った女性たちと密会し次々と殺害していくわけです。

 一方、アプリを開発したソムはアスペルガー症候群を持つ天才で、誰の気持ちも理解できないし、自分の感情を表す術も知らない、ある意味孤独の中で生きている人物。
「サムバティ」のキム・ヨングァン
Netflixシリーズ「サムバディ」独占配信中
 で、殺人犯を自ら探そうとアプリを通してマッチングしたユノに直感を覚え、一人接近していくのですが、このソムとユノの互いを探り合う最初の出会いのシーンがかなりスリリングで、世間的な共感とは違う、ある種の共通点を感じ取り、そして惹かれあっていく二人の描写は、あからさまなベッドシーンよりもむしろエロティック。

 さらに、ソムの友人も、車椅子のサイバー捜査班刑事とレスビアンの巫女という、いわゆるマイノリティーなのですが、彼ら4人の渇望にも似た誰か(サムバディ)を求めるエキセントリックな心が痛々しいほどに胸に迫ります。全裸で挑んだ激しいセックス描写、おぞましいほどの殺害シーン。そして、ソムに向けられるゆがんだ愛の形。優しく人のいい殻を思いっきり脱ぎ捨てた、それでも惹かれてしまうヨングァンをお見逃しなく。

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「ウチに住む男」

「ウチに住む男」のキム・ヨングァン
Licensed by KBS Media Ltd.© 2016 KBS. All rights reserved
 2016年に放送されたラブコメです。今、見るとかなり古臭い印象ですが、「ピノキオ」で新人賞を獲得し、俳優としての基盤を築いたヨングァンが、韓国では「涙の女王」とも称される視聴率女優スエの10年ぶりというラブコメ主演の相手役に大抜擢されたのがこの作品。

 ヨングァンが演じるのは年下で義父というちょっと複雑なキャラ設定というところがミソ。スエが扮するのは客室乗務員として働くナリ。9年付き合った恋人からプロポーズされるものの、その最中に母が事故死したとの知らせ。さらに、恋人は自分の後輩と浮気、傷心したナリが実家に戻ると、キム・ヨングァン扮する母と再婚したという自分より年下のオトコ、ナンギルが住んでいたという展開。実はナンギルにとって、ナリは忘れられない初恋の人なのですが、そのナンギルがなぜ、母と再婚し義父になったのか。
「ウチに住む男」のスエ
主演女優のスエ。Licensed by KBS Media Ltd.© 2016 KBS. All rights reserved
 もちろん、それには大きな理由があるのですが、それは見てのお楽しみ。初恋、年下男子、孤児育ち、暴力団絡みの陰謀などなど、韓国王道ロマンスの典型的ピースがてんこ盛り。ヨングァンのハマり役とも評されたナンギル役は、強くて頼もしく、しかもとことん優しく、そしてちょっぴりミステリアスというファン必見のキャラクター。頑張り屋のナリを何かと気遣うのはもちろん、お姫様だっこしたり、優しくバッグハグしたり、そして甘〜いキスシーンを見せたりと、王道キュンキュンカットももれなくたっぷりと。

 ちなみに、ナリと三角関係のライバルとなる隣に住むオトコに扮するのは、同じくモデル出身のイ・スヒョク。二人のイケメンから思いを寄せられる年上女子ナリに自分を投影して観るのも一興。

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山崎敦子

山崎敦子

旅行記事に人物インタビュー、ドラマ紹介、実用記事から、着物ライターとさまざまな分野を渡り歩き、今では美容の記事を書くことも多くなったさすらいのライター。襲いかかるエイジングと闘いながら、ウキウキすること、楽しいことを追い求め続ける日々を送る。
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