【大草直子×ジェーン・スー スペシャル対談】令和の50代。あらためて“マイスタイル”を考える

世の悩める女性たちに愛の言葉を送り続ける、大草直子さんとジェーン・スーさん。リアルなエクラ世代で仲よしのふたりが、等身大の“マイスタイル”について、ゆるやかに、深く向き合った。

自分にとって30点の服をわざわざ克服しなくていい

大草さん&スーさん1

スーさん(以下、敬称略) 大草さんって、ブランドのロゴがドーンってついていても「はい、ブランドのもの買いました」ってならないの。「蚤の市で買った」っていわれたらそう見える。“主”が大草さんで、服やバッグは“客”。ブランドのものって主客が逆になりがちなのに、それが本当にかっこいい。

大草さん(以下、敬称略) 本当? うれしい!

スー 今の格好は、ヴァンテーヌ編集部にいたときとはやっぱり違うわけじゃない?

大草 それはそう。私の場合は、小学校は制服、高校生でアメリカに留学してアメカジ。大学では体育会系で、Tシャツにキャップが日常だった。で、ヴァンテーヌに入ったら、おしゃれは知性です、ってね。

スー それから南米でサルサを?

大草 そう。違う世界観がまたバーンって広がったの。色があふれ、何歳になってもセクシーでいいって。それが全部、今の私にはミックスされているってこと。今をつくっているのって、人生の縮図だから。

スー そこだよ、そこ! これまでの人生を単純にミックスしたら、普通はまずいジュースになっちゃうの。めっちゃ栄養はあるんだろうけど、まずいジュースだよー。なんでそれが飲めるジュースになってるのかって、そこが知りたいの。

大草 じゃあ、ジュースの味を一回言語化したらいいんじゃない? 好きなジュースのテイストとして、私はセクシーさが絶対あるわけ。トラッドな感じもあるし、海外では現地の言葉で話しかけられるくらいのインターナショナル感も欲しい。ラグジュアリーさも必要。それら全部を自分の中で具体的なルールに落とし込んでる。

スー そうか、マイルールだ。

大草 例えば今日の足もとも、ヒョウ柄のポインテッドトゥ、7.5㎝ヒール。ここは私はスニーカーにはしないの。

スー 細かいルールの積み重ねなんだね。

大草 あくまでもマイルールよ。人によってそこは違うから。

スー 確かに、セクシーさとか、カジュアルさはいらないという人もいるだろうね。

スーさん1
“主”がちゃんと大草さんで、“客”が服になってる。それがかっこいい(ジェーン・スー)

大草 おしゃれってビジュアルと思われがちなんだけれど、実は言語化することがとっても大事。面倒だけど、やらない人はいつまでたってもブレちゃう。

スー 画一的な基準のようなものに引っぱられるんだろうな。

大草 だからずっとスタイルを探しちゃうの。スタイルは探すものじゃなくて、自分にあるものなのに。やっぱり、言語化だね。心の中は本人にしかわからないから。

スー 言語化していないから私はブレるんだね。

大草 いやいや、スーさん、言語化していると思うよ。

スー 私は、服が入るかどうかも前提にあって、でも入るようにやせるかというと、いや、これでいいや、みたいなわけ。でも、おもしろいことに、インスタを始めたら、「どこの服ですか? とても素敵!」って聞かれたりするんですよ。そのほとんどがZARAなんですよね。

大草 スーさんのテイストもインターナショナルよ。ラテンの服が似合うもの。

スー 人から聞かれるってことは、それが似合っているということなんだなって、それは思いましたね。インターナショナルなブランドの服は、サイズもそうだけど、どこか自分の好きな生き方とも合ってるから、私はそれでいいんだな、って。

大草 インスタやっている人がどんどんおしゃれになるのは、客観的に自分をちゃんと見るから。よくいってるんだけど、ばかばかしいと思わず写真を撮って、それを選別していけばいいんだよね。これは30点、これは70点だなって。その結果、70点の服を着ればいいわけで、30点の服をわざわざ70点に寄せなくても全然いいわけ。

スー 似合うものの精度を上げていくことのほうがたぶんおしゃれに近づけるのに、似合わないものがあるとそれを克服すればおしゃれになれると思っちゃう。克服したいんだよ、でも、克服しなくていいんだよね。

大草 そう! 試験勉強じゃないから。

スー 苦手科目をがんばって克服するんじゃなくて、その科目を受けないで入れる学校を受験すればいいんだよ、ってことだね。

大草 あはは、まさにそれ。

スー 着てがっかりしちゃう服は、着なくていいんだよね。私ね、いつも自分に×を出してたんですよ。似合わない自分がダメって。だけど、服の選び方がダメなんだなー。すごくうっかりしてました(笑)。

大草さん1
おしゃれって、実は言語化することがとっても大事(大草直子)
大草直子

大草直子

おおくさ なおこ●スタイリングディレクター。’72年生まれ、東京都出身。大学卒業後、現・ハースト婦人画報社へ入社し『ヴァンテーヌ』を担当。その後、フリーランスのエディター、スタイリストに転身し、執筆のほかブランドとのコラボ商品の開発やイベント出演なども積極的に行う。’19年に会員制のオウンドメディア『AMARC』を立ち上げ、季刊誌『AMARC magazine』も出版。
ジェーン・スー

ジェーン・スー

じぇーん すー●コラムニスト、ラジオのパーソナリティ。’73年、東京都文京区で生まれ育った生粋の日本人。『ジェーン・スー 生活は踊る』(毎週月~木曜11:00〜14:00、TBSラジオ)や、ポッドキャスト『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』は年代を超え、絶大なる人気を誇る。近著は『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』(文藝春秋)。

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