魂を揺さぶる “医療ドラマ”の新境地!大人が見るべき医療ドラマはこれ!【見ればキレイになる⁉韓流ドラマナビvol.48】

エクラの美容記事でもおなじみのライター・山崎敦子がお届けする韓流ドラマナビ。今回は、韓国ドラマのお得意ジャンル、医療ドラマの最旬をご紹介!

救急医療の現場をリアルに描いたヒューマンドラマ「トラウマコード」

「トラウマコード」のチュ・ジフン
Netflixシリーズ「トラウマコード」独占配信中

韓国ドラマの十八番 “医療ドラマ”にもストライキの影響が

 医療系のドラマはお好きですか。命を扱う現場はそれだけでもドラマチックだし、ヒューマン、ロマンス、サスペンスなどとの相性もよろしく、日本でも韓国でも当然ながら人気ジャンルの一つではありますよね。古くは時代劇の「馬医」とか、アメリカや日本でもリメイクされた「グッド・ドクター」とか、最近では珍しくシーズン3まで作られたハン・ソッキュ主演の「浪漫ドクターキム・サブ」とか、心に響く名作も多々。なかでもソウル大医学部卒業の5人の医師たちの日常をコミカル&ハートフルに描いた「賢い医師生活」は、私的には不動のNo.1でありまして、そのスピンオフ作品「いつかは賢くなる専攻医生活」を心待ちにしていたのですが、いつまでたっても放送開始のニュースが聞こえてこない。なぜ?と思っていたら、そうなんです、ストライキ。
「トラウマコード」のチュ・ジフンとチュ・ヨンウ
Netflixシリーズ「トラウマコード」独占配信中
 ご存知の方も多いのではないかと思いますが、ことの発端は2024年の2月。韓国政府が医師不足の対策として医学部の定員増計画を発表したことに始まります。この政府の発表に対し、全国の研修医の90%が一斉に退職届を提出。医師の増加による競争激化と収入減(韓国の医師の平均年収は平均的な韓国の労働者の約7倍だそうですが…)を恐れての抗議というわけですが、これを皮切りに現役の医師や医大生をも巻き込んで泥沼化し、治療の現場に空白を生む深刻な医療ストライキへと発展したものです。実は韓国の医療界は複雑な問題を抱えていて、医師の数は人口1000人あたりわずか2.6人とOECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも日本同様ワーストレベルなのだそう。つまり、医師不足は相当深刻で、加えて命に関わる医療行為の報酬が低いらしく(反面、訴訟リスクは高い)、人気の皮膚科や美容外科に対して、救急医療や神経外科、胸部心臓外科、産科、小児科、プラス地方医療の現場においては慢性的な医師不足が続いているようなのです。
「トラウマコード」のチュ・ジフン
「トラウマコード」の天才医師役チュ・ジフン。Netflixシリーズ「トラウマコード」独占配信中
 韓国の医療ドラマは、そんな医療界の現状を背景に描かれたものも多く、それを踏まえて視聴すると、よりドラマが現実味を帯びて響いてくるのですが、ストライキに関していうと自己の利よりも医師としての使命感をもっと追求してほしいなあと思うものの、かといってお金のあるところに才能は集まるというのも真理で、命を扱う職業ゆえに有能な人材確保は必須。となれば、収入減は無視できない案件でもあり、なかなかシンプルには解決しえない問題なんだなと改めて。
「トラウマコード」のチュ・ジフン
Netflixシリーズ「トラウマコード」独占配信中
 というわけで、心待ちにしていた前出のドラマ「いつかは賢くなる〜」は、奇しくも研修医が主人公。現実とのセンシティブな重なりもあったりで放送延期を余儀なくされたようなのですが、ようやく今年は放送予定の模様なのです。とはいえ、視聴者たちの医療界への反発も少なくなく、昨年はこのスピンオフ以外にも多くの医療ドラマが製作や放送を見送っていたわけですが、そんな中、どこよりも先駆けてNetflixで配信された医療ドラマがこの「トラウマコード」。しかも、舞台となるのは最も医師不足に喘いでいる救急医療の現場…となれば、もう、観ない手はないというか。

天才医師役チュ・ジフンの演技力と存在感も光る、痛快なストーリー!

 タイトルのトラウマコードとは医療の現場において重傷を負った外傷患者の搬送に際して迅速な対応を行うシステムのこと。つまりは韓国で最も深刻な人手不足が懸念される緊急性の高い医療現場最前線というわけですが、ドラマは、名門韓国大学病院に設けられたそんなトラウマコードを担う重症外傷チームに一人の医師が赴任するところから始まります。
魂を揺さぶる “医療ドラマ”の新境地!大人が見るべき医療ドラマはこれ!【見ればキレイになる⁉韓流ドラマナビvol.48】 _1_5
主人公の天才医師ガンヒョク役のチュ・ジフン。Netflixシリーズ「トラウマコード」独占配信中
 この人物、実は政府の保健福祉省大臣(キム・ソニョン)が、緊急医療改善のため送り込んだペク・ガンヒョク教授(チュ・ジフン)なのですが、そのキャラクターがなんとも型破り。通常のエリート医師とは違う叩き上げとでもいうのでしょうか。紛争地帯で自ら銃を背負いつつ、銃弾飛び交う中、あちこちに倒れる重症兵士の治療に駆け巡っていたという強者で、そんな過酷な現場を渡り歩いて培ったスキルと判断力は右に出るものなし。常識ではあり得ない治療方法を迷いなく選択するわ、難しい手術も通常の半分ぐらいの時間でスイスイと終わらせちゃうわ、そりゃあもう「現実にいる?こんな医師?」的天才ぶりなのであります。幼い頃に、重傷を負った父を救急車でたらい回しにされた挙句、手遅れとなり亡くしてしまったという辛い過去を持ち、そこから医師を目指したガンヒョク。ということで、彼を突き動かしているのは使命感のみなのですね。
「トラウマコード」のチュ・ジフンとチュ・ヨンウ
Netflixシリーズ「トラウマコード」独占配信中
 一方、彼を受け入れる韓国大学の首脳陣といえば、患者を受け入れるほど赤字となってしまう重傷外傷センターを有名無実化しようと企んでいる…という具合。つまりは天才=使命感VS大病院=経営優先という医療もの“あるある”のファンタジー活劇なのでありますが、これがなかなかリアルに迫ってくる部分も少なくなく。というのも原作のウェブ小説「重傷外傷センター:ゴールデンアワー」は現役医師の手によるものだし、韓国実在の著名な重傷外傷外科医イ・グクジョン教授が関わる事例をモチーフにドラマのエピソードが描かれているなど、現実部分もかなり反映されているというか。
「トラウマコード」のチュ・ヨンウ
Netflixシリーズ「トラウマコード」独占配信中
 実在のイ・グクジョン教授は現実の壁に阻まれてすでに重傷外傷センターから身を引いているようなのですが、そこはドラマ。ガンヒョク教授は自分の理想の重傷外傷センターを目指して、病院側の思惑も画策もなんのその、次々と患者を受け入れてはガンガンと治療していくわけで、1ミリの迷いなく突き進んでいくその姿はまさに痛快そのもの。演じているチュ・ジフンのコミカルとリアルを緩急自在に操る持ち前の演技力と存在感で、そんな劇画チックなキャラクターの真実味をスマートかつハートフルに映し出しているところも心憎い。
「トラウマコード」のチュ・ヨンウとハヨン
ヤン・ジェウォン役のチュ・ヨンウ(左)と看護師ジャンミ役のハヨン(右)。Netflixシリーズ「トラウマコード」独占配信中
 そして、もう一つ。ドラマへの吸引力を俄然高めているのが、ガンヒョク教授の一番弟子ヤン・ジェウォン(チュ・ヨンウ)の存在。医学部を主席で卒業するほどのエリートなのに現実に流されてか、ただ楽そうだからと肛門科を選んだという脇の甘々なフェローなのですが、これがめちゃくちゃ振り回されるわけなのですよ、ガンヒョク教授に。その愛あるスパルタ指導の元、あたふたしながらも次第に医師としての使命感に目覚めていく過程が面白おかしく、かつジーンと胸熱で、師弟ブロマンスとしてもめちゃ楽しめます。演じているチュ・ヨンウは、デビューして5年目の新人で、少し前に配信された時代劇「オク氏夫人伝-偽りの身分 真実の人生-」でヒロインの相手役を務めて人気が急浮上した今年1番の注目株。俳優のロールモデルがチュ・ジフンだそうで、そんな憧れの人との共演に最初は役柄のジェウォン同様、かなり緊張してあたふたしたとかしないとか。チュ・ジフンからのアドバイスも多々あったようで、ジュウォンが医師として成長したのと同様に俳優としてもこのドラマで一皮剥けたというチュ・ヨンウは今後もチェック必須な若手なのは確かかと思われます。
「トラウマコード」のユン・ギョンホ 
ジェウォンの元上司役ユン・ギョンホ。Netflixシリーズ「トラウマコード」独占配信中
 他にもガンヒョク教授を支えるジャンミ看護師(ハヨン)とか、ジェウォンの元上司の肛門外科教授(ユン・ギョンホ)、病院長(キム・ウィソン)や企画調整室長(キム・ウォネ)などなど、味方も敵も魅力あふれる脇役陣が縦横無尽に生き生きとキャラクターを演じていてドラマを盛り上げてくれています。だから、全8話あっという間。なかなか問題山積みな医療の世界ではありますが、現実もドラマのようになってほしいと願いつつ、スカッと爽快にファンタジー活劇を楽しんでみてはいかがでしょう。
■Netflixシリーズ「トラウマコード」独占配信中

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「今日もあなたに太陽を ~精神科ナースのダイアリー~」

「今日もあなたに太陽を ~精神科ナースのダイアリー~」のパク・ボヨン
主人公チョン・ダウン役のパク・ボヨン。Netflixシリーズ「今日もあなたに太陽を ~精神科ナースのダイアリー~」独占配信中
 総合病院の精神科を舞台に看護師たちが遭遇する日常を映し出す作品です。主人公のチョン・ダウンは、優しすぎるために仕事が滞るからという理由で内科から精神科に異動になった3年目を迎える看護師で、演じているのは「力の強い女ト・ボンスン」などのラブコメから「照明店の客人たち」などのヒューマンまで自在にこなすキュートな演技派パク・ボヨン。ドラマがコミカルを交えつつちょっと軽めのタッチで綴られていくので、医師たちの日常を描いている「賢い医師生活」のナース版か?ダウンが看護師として患者と向き合いながら成長していく物語か?と軽~く思ってしまうのですが、観進めていくほどにずっしり重めのテーマが胸にズンズン入り込んできて釘付けにされてしまう、とでもいいましょうか。というのも、フォーカスしているのが精神科の看護師の職業やキャラクターなどではなく、精神疾患そのものなのですね。双極性障害のリナ、強度の不眠症のソンシク、パニック障害になったユチャン。そんな患者たちのストーリーを横軸にしながら、彼ら彼女らが、病んでいく過程と原因を一つひとつ丁寧に映し出していきます。
「今日もあなたに太陽を ~精神科ナースのダイアリー~」
Netflixシリーズ「今日もあなたに太陽を ~精神科ナースのダイアリー~」独占配信中
 そして、見えてくるのは母親からの強迫や上司のガスライティングなど、意外にも身近にある無意識に積もっていくストレスが原因であることがほとんどという現実。その証というわけではないけれど、看護する立場のダウンにもうつ病という魔の手が…。そう、精神疾患は特別なものではなく、誰がいつなってもおかしくない病。なのに、世間の偏見とレッテルは根強く。ありそうでなかったそんな心の病という医療問題に深く深く斬り込んでいるのがこの作品。ちょっと重いと思ったあなた、ドラマはそんな精神疾患の現実を真摯に見据えながら、最初から最後まで温かな視点で軽やかに綴られているため、どんどん優しく豊かな気持ちに包まれていくので躊躇せずに観てほしい。縦軸には心温まるほのかなロマンスも織り込まれており、特にダウンに恋する肛門科医師を演じるヨン・ウジンのおかしみと優しさが格別で、癒されることしきりです。患者たちの病の心象風景を実際に映像化して見せている演出も素晴らしい。
■Netflixシリーズ「今日もあなたに太陽を ~精神科ナースのダイアリー~」独占配信中

「FACE ME」

「FACE ME」のイ・ミンギ
主人公の美容整形外科医役のイ・ミンギ。© 2024 Westworld Story. All rights reserved.
 医療問題というよりはミステリーによりフォーカスした美容整形外科が舞台のメディカルサスペンス。主演は「私の解放日誌」や「クラッシュ 交通犯罪捜査チーム」などクセのあるキャラクターもするりと自然体で魅力的に表現する実力派のイ・ミンギで、このドラマで扮しているのはどんな手術も完璧にこなす人気の美容整形外科医チャ・ジョンウ。腕は最高峰だけど、他人や患者に対する興味が全くない冷徹キャラクターなのですが、実は彼、もともとは救急医療の現場で働く凄腕の整形外科医だったのですね。その頃は患者の立場になって治療にあたる誠実かつ優秀な医師だったのですが、最愛の婚約者を殺人事件で亡くしたことから心を閉ざし、美容整形外科に転身したという経緯があるわけです。その過去のせいかどうかはわかりませんが、ジョンウは再建手術に対して強い拒否感を示していて、ミステリーのことの発端も顔の半分に広がる火傷を負った少女の再建手術をジョンウが断ったことにあるのです。その患者の父親が治療を拒否したことを非難する遺書を残して転落死してしまうという。父親は本当に自殺だったのか、それとも…。
「FACE ME」のイ・ミンギとイ・ミニョン
イ・ミンギ(左)とイ・ミニョン(右)。© 2024 Westworld Story. All rights reserved.
 事件の捜査を担当する熱血刑事イ・ミニョン(ハン・ジヒョン=「ペントハウス」「損するのは嫌だから」)に協力することになったジョンウ。2人で事件の真相を追うことになるのですが、面白いのはミニョンの兄がジョンウの婚約者を殺した犯人として服役していたということ。その兄が無実を主張するのですね。一見無関係のようにも思える患者の父の転落死と婚約者殺人事件。そこに何かつながりがあるのか。当時、ジョンウは事件現場に居合わせていたことがわかってくるのだけれど、記憶がすっぽりと抜けてしまっている。ということは、ひょっとしてジョンウが犯人なのか…。そんなミステリーを追いながら、実は見た目だけでなく心のトラウマをも癒す力を持った美容整形の最前線にもフォーカスしているところがメディカルサスペンスならでは。ちなみに「私の夫と結婚して」のクズ夫で大注目されたイ・イギョンもジョンウの親友の同僚として出演。こちらもお見逃しなく。
■Leminoで独占配信中
山崎敦子

山崎敦子

旅行記事に人物インタビュー、ドラマ紹介、実用記事から、着物ライターとさまざまな分野を渡り歩き、今では美容の記事を書くことも多くなったさすらいのライター。襲いかかるエイジングと闘いながら、ウキウキすること、楽しいことを追い求め続ける日々を送る。今年に入って、インスタ(@harurikuumi)も始動。ドラマシーンのイラスト&勝手な解説を挙げてます。
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