【吉沢亮インタビュー】芝居が好きです。役づくりが大変なほど逆に燃えるんです

女形という難役を、見事に演じきった。話題の映画『国宝』で吉沢亮さんが演じるのは、極道の一門に生まれながら、ゆえあって歌舞伎の世界に飛び込み、女形役者として波乱の生涯を生きぬく男・喜久雄だ。
吉沢 亮

準備期間は1年半。“完全に歌舞伎役者として舞台の上で成立する”ことを目標に、歌舞伎の基礎から体にたたき込み、女形のエッセンスを吸収した。

「小さいころから稽古を重ねて舞台に立っている歌舞伎役者の姿を、1年ちょっとの稽古で演じられるはずもなくて。基礎を積み上げた先にしか、お客さまにお見せできないものがある。僕としては必死にやりましたけれど、やればやるほど、自分に足りないものに気づく。先が見えなくて、絶望の繰り返しでした」

まずは歩き方と、踊りから。肩を落とした美しい姿勢、たおやかで繊細な所作など、覚えるべきことは、山ほどあった。励みになったのは、共演の横浜流星さんの存在。喜久雄が引き取られた歌舞伎の名家、丹波屋の御曹司・俊介を演じた。

「流星は全身から、歌舞伎役者になってやる、というとてつもない気を放っていました。そんな彼の存在が、かなり大きなモチベーションになっていたので、流星がいなかったら、僕はここまでがんばれなかったと思います」

『道成寺』『藤娘』『鷺娘』など、大曲と呼ばれる舞踊は、まさに必見。

「撮影中、観客席のエキストラの中に、『鷺娘』を見て泣いているかたがいらしたんです。うれしかったです。でも美しくあるということは、こんなにも痛くて汗をかいてしんどいものなのか、と(笑)」

そしてもちろん本作のメインテーマは、壮絶な喜久雄の人生。血筋が重んじられる歌舞伎の世界をどう生きぬくのか、どんな試練が芸を磨くのか。

「クランクインして1週間くらいは、何をやっても李監督には『なんか違う』といわれて。そのとき自分の中からわき出る感情に任せて、“Don’t think, feel!”で演じることにしたんです。すると監督もなんとなく、うれしそうだったので(笑)」

デビュー以来十数年。大河ドラマの主演など、そのキャリアは順風満帆に見えるけれど……。

「20代前半は現場に行って芝居をするだけで精一杯だったような気がします。最近になって、ひとつひとつの役のハードルが高くなって、準備に時間を要するようになった。そういう大変さが、嫌いじゃない。逆に燃えるんですよね。お芝居しているときが一番楽しいんです」

演じることへの執念と渇望は、喜久雄とどこか、似ているのかもしれない。本作はきっと彼の、代表作となる。

『国宝』

『 国宝 』
Ⓒ吉田修一/朝日新聞出版 Ⓒ2025 映画「国宝」製作委員会

吉田修一が歌舞伎界を舞台に書き上げた小説『国宝』を李相日監督が映画化。任侠の世界に生まれた喜久雄(吉沢亮)は、歌舞伎役者・花井半二郎(渡辺謙)に引き取られ、跡取り息子・俊介(横浜流星)とともに芸を磨く。やがてふたりの運命は……。6月6日より全国公開。

吉沢 亮

吉沢 亮

よしざわ りょう●’94年、東京都生まれ。’19年、映画『キングダム』で秦王・嬴政と漂の一人2役の演技が評価され、ブルーリボン賞助演男優賞、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞などを受賞。’21年の大河ドラマ『青天を衝け』の主演・渋沢栄一役をはじめ、映画『東京リベンジャーズ』シリーズ、『ぼくが生きてる、ふたつの世界』など数多くの作品に出演。7月には主演映画『ババンババンバンバンパイア』が公開予定。
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