原作は石田衣良氏が2001年に発表した同題の小説。発表直後から話題を呼び、何度も映画化しようという試みはあったものの、なかなか実現しなかった。理由はシンプル。主人公リョウを演じることのできる俳優が、いなかったからだ。
まずは、美しくなければならない。セックスシーンを演じきる役者魂も必要だ。リョウの微妙な変化を演じる演技力は不可欠。さらに、どんなに強烈な性描写をしてもなお観客に愛される清潔感と包容力、人としての魅力がなければならない。
10数年を経て、『娼年』はようやく、松坂桃李という主演俳優と出会うことができた。2016年に松坂桃李主演で舞台化され、2年後の今年、映画化されたのだ。
「今この時点でこの作品と出会うことができて、僕はすごくラッキーだと思います。最初にこのお話をいただいた時点から、僕は躊躇しませんでした。20代半ばから僕は、いろんな役に挑戦しようと決めていたんです。30代、40代、その先も、しっかりと演じることのできる俳優でありたいし、そのためには今、いろんな方向性で仕事をしていくべきだと思っていましたから。2年前に舞台が終わった時点で映画化のお話をいただいたんですが、舞台では表現しきれなかった、より繊細な部分を表現できるだろうと、楽しみにしていたんです」