年齢とともに増える老化のサインに、焦りを感じ、やみくもに抗(あらが)おうとするスキンケアはもうおしまいにしよう。今、大人がすべきは、手のひらで感じる“質感のいい肌”へと育んでいくスキンケア。「質感のいい肌」の定義を、美容ジャーナリスト・松本千登世さんに語っていただきました。
“質感のいい肌=豊かな表情を誘う肌。未来永劫、進化しつづける大人の美しさはこんな肌から生まれると思うのです”
こんなことが起ころうとは予想だにしなかった昨年12月。仕事でパリを訪れました。ノエルに向けて華やぎに包まれたあるメゾンブティックで、美しくディスプレイされた小物の横に、小さなプレート。そこにはこう綴られていました。「Touch by your eyes」。「触れないで」ではなく「目で触れてね」。目には想像力という「触覚」がある……。表現の豊かさに、心が温かく柔らかくなるのを感じました。ふと思ったのです。手にも想像力という「視覚」があるんじゃないか。手のひらで感じる美しさは、目で見る以上に奥行きを感じさせる美しさなんじゃないか……。
「質感のいい肌」を創れば、自ずと見た目の美しさはついてくる、あえて、そう断言したいのです。むしろ、見た目の美しさだけを追うよりも、ずっと「愛すべき肌」になれる、と。たとえば、あまり眠れなかった朝の肌。たとえば、疲れて帰ってきた夜の肌。ランチ後もディナー前も。年齢を重ねるほどに、鏡の中の自分に溜息をつく機会が増えたと感じているのは、きっと私だけではないと思います。目の下のたるみ、フェイスラインのもたつき、目尻やほうれい線の深いしわ…、なかったはずの「サイン」が記録され、記憶されていく焦りや恐れから、スキンケアに余計な力が入る。本来のスキンケアの意味や価値を忘れ、必要以上のスピードやドラマを求めていることに気づかされるのです。あれっ、そんな自分って、美しかったっけ?
スキンケアは、質感のいい肌を育てるためにあると捉え方を変えてみませんか? 質感のいい肌とは、滑らかで柔らかくてハリや弾力がある肌。豊かな表情を受け止め、跳ね返し、さらに豊かな表情を誘う肌です。それこそが、未来永劫育ち続ける美しさと信じて。
ーーー文・松本千登世