イタリア、そして世界のファッションを50年以上にわたり牽引し、惜しくも'25年秋に亡くなったジョルジオ・アルマーニ。モデル・俳優として活躍する冨永愛さんが、彼とのエピソードと、アルマーニの洋服の魅力について語ってくれた。
「“エレガントであること”の意味を教えてくれた宇宙の中でも唯一無二の存在でした」――モデル・冨永 愛
その鋭い視線が導いてくれた自信と誇りをもって生きる道
08/09秋冬オートクチュールコレクションより photo:Abaca/アフロ
私とアルマーニ氏との最初のかかわりは、’02年の春夏コレクション。その後ランウェイにも何度か立たせていただき、ディナーやパーティでお会いしたことも。
なかでも、最も印象深いのは、’19年に東京で開催された’20年クルーズコレクションです。クルーズコレクションをショーとして発表するのはブランド初でしたし、その舞台が東京というのも非常にエキサイティングで、それまで感じたことのない高揚感を覚えました。
アルマーニ氏はストイックな完璧主義者で、ショーのすべての過程を自分が納得するまであきらめず、いっさい手を抜かない人。そんな彼が非常に厳しい目で見ているのですから、モデルもスタッフもヒリヒリするような緊張感に包まれていたことを今でも鮮明に思い出します。
彼からは「エレガントにゆっくりと歩いてくれ」とよくいわれました。「エレガントで女性らしく、でもセクシーすぎずに」というのも彼の口ぐせ。この“エレガント”こそ、彼の美意識を表す最適な言葉だと思います。
08/09秋冬オートクチュールコレクションより photo:Abaca/アフロ
彼がいうエレガントとはなんだろうと考えると、決して媚びず上品であること、心地よさを感じさせることなのではと思います。私がイメージするのは、“ 凪いでいる日本海”。東京でのあのショーで、初めて日本を背負っていることを感じた私は、自分にとってのエレガントとは何かを考えるきっかけを教えてもらった気がします。
プリヴェのショーを見にいった際の2ショット(写真は冨永さん提供)。東京でのクルーズコレクションでは、フィナーレに冨永さんが登場したことも
プライベートでも、私にとってアルマーニの洋服は、とても頼れる存在です。
愛用しているのは素材の違う2着の黒のパンツスーツ。その魅力は、まずはラインがとても美しく、シンプルだけど華やかにも装えるところ。次に、ずっと古びることがないタイムレスなところ。そして、安心感があるところ。
アルマーニなら、授業参観から結婚式までどこでも行ける。「アルマーニを着ていれば私は大丈夫」という自信をもらえます。
ジョルジオ・アルマーニ氏との出会いは、私の仕事観、人生観にも大きな影響を与えてくれました。世界で、宇宙で、まさに唯一無二の存在。彼に出会えたこと、その作品にかかわれたことは、私の誇りです。
とみなが あい●ファッションモデル、俳優。17歳でニューヨークコレクションにてランウェイデビュー。以後、世界的トップモデルとして活躍する一方、映画やテレビでは俳優としても存在感ある演技を披露。
取材・原文/大野智子 ※エクラ2026年2・3月合併号掲載