女優としての輝きを増す井川遥さん。キャリアを重ねる一方で、二児の母であり、ブランドディレクターでもある。忙しく過ごした30代を経て、洋服に求めることが変化していったそう。40代代半ばの今、何が彼女をさらに輝かせているのだろう。
自分の肌感覚を頼りにハサミと針で格闘する
現場では、一点一点大切に。良質なものづくりを心がけている。
「フィッティングも自分自身でします。シーチングという帆布で試作するのが一般的ですが、私たちは選んだ生地を初めから縫製します。それは、生地の組成や加工によって張るもの、落ちるもの、表情がまるで違うので、つくりたいものに適しているのか、生地のクセを知るため。そこで分量のあんばい、切り替えやタックの必要性など、細かい修整にとりかかります。動作によるツリやたるみが出ないか、スタッフとチェックします。分量が足りなければハサミを入れて広げ、布を足したり、多ければピンを打ったり。大幅に修整することも。袖を通して初めて洋服が動きはじめるんです」
職人や素材との出会いも大切にする。
「メーカーさんや革の問屋さんに現場を見せていただき、つくりたいものを伝えます。職人さんってあったかくて、革をその場で鞣していくつものパターンを見せてくれたり。気持ちが伝われば全面的に協力してくれるんですね。そして、ロワンでは色にもこだわりたいから、海外の工場にオリジナル配色のスカーフのプリントを依頼したり、糸を一から染めてもらったりもしています」
服づくりについて、専門の教育を受けたことはないけれど。
「何も学んでいないからこそ、とにかくやってみる、自分の肌で感じることができる。まっさらなところから始めたむずかしさはあるけれど、固定観念がないからこそ、もあると思います。何もないところから生み出すのは本当に大変ですけど」
現在、ジュエリーやバッグ、香水と、手がけるジャンルは広がっている。そこにはものづくりの喜びと、もうひとつ、確かな思いがある。
「社会の中に自分の立ち位置ができた、そんな感覚です。チームとして働く喜びも実感していますし、専門的なことに触れて社会経験を積めることは、私の人生においてとても貴重なことだと思うんです。これから時間をかけて自分の可能性を広げていきたいです」
そして、これから。井川さん自身の成長に合わせて服もまた、新たな展開を迎えるかもしれない。
「5年がたち、自分たちの方向性を今一度見つめ直して、気を引き締めています。無難な服になってしまったら、それは違うと思うから。私自身、エッジのあるものが好きだったことを思い出して、次に進もうと思います」
“まっさらなところから始めたからこそ、そのむずかしさが強みになるはず”