大人の健康のカギは腸が握っている、と言われる昨今。アラフィーの多くが実践する「腸活」は、なぜ今、重要視されているのか? その理由を知るため、まずは腸のスゴい働きを再確認!
お話をうかがったかた
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所副所長。ヘルス・メディカル微生物研究センターセンター長。大阪大学薬学部卒業。東京大学医科学研究所客員教授、神戸大学医学研究科客員教授などを兼任。主な著書に『9000人を調べて分かった腸のすごい世界 強い体と菌をめぐる知的冒険』(日経BP)などがある。
体の半分以上の免疫細胞が腸に集中。腸は生命の根幹なんです
消化・免疫からエイジング、メンタルまでをつかさどる
腸活によって健康や美容への効果を感じている人も多く、アラフィーにとって腸活は、体調管理の常識となっているようだ。腸はなぜそれほどまでに重要なのか、その働きについて、改めて薬学博士の國澤純先生にうかがった。
「腸の一番基本になる働きが、食べたものの消化・吸収と不要物の排出です。口から入った食べ物は消化管を通って腸に届き、栄養が体に取り込まれ、不要なものや有害物質は便として排出されます。このとき腸はポンプのように動き、これをぜん動運動といいます。女性は便秘に悩むかたが多いですが、このぜん動運動がしっかり働かないと、消化も吸収も排便もスムーズにいきません」
そしてもうひとつ、近年特に注目されている腸の働きが“免疫”だ。
「腸には人体の半分以上の免疫細胞が集まっていることから、人体最大の免疫器官といわれます。口から入ってくるものには飲食物だけでなく、ウイルスや病原菌などの異物も含まれます。これらの侵入をブロックするのが腸の免疫細胞の役割。免疫細胞は腸だけではなく、ときには体内をめぐって異物が侵入していないかをパトロールし、見つけると攻撃・排除します。有害なものは排除し、有益なものは排除せず利用する、その見極めも腸の重要な働きです」
さらにアラフィーにとって気になる“体型”も腸と関係があるという。
「最新の研究では、やせている人の腸内には“やせ菌”とも呼ばれる腸内細菌が多いことがわかってきました。日本人の腸内細菌と肥満や糖尿病との関連を調べた研究では、これらのリスクが低い人ほどブラウティア菌という菌が多いという報告があります。この菌は近年、“やせ菌”として注目されています」
また、腸は肌とも深い関係がある。
「紫外線ダメージで傷ついた細胞を取り除くのも免疫細胞の役割。免疫細胞が正常に働いていれば肌の調子は整いますが、その働きは低すぎても高すぎてもよくありません。過剰に働くと正常な細胞まで攻撃し、コラーゲンが壊れてハリの低下やシワの原因に。細胞のダメージが蓄積すると老化もすすみます。腸内環境を整えて免疫細胞を正しく働かせることが老化予防にもつながります」
そして近年、研究が進んでいるのが、腸と脳やメンタルとのつながり。
「腸と脳は『脳腸相関』と呼ばれる密接な関係にあり、腸内細菌の状態が気分や思考に影響するといわれています。実際、心身の安定にかかわる神経伝達物質『セロトニン』の一部は腸内で作られますし、最近、腸内細菌は認知症やうつ病の発症とかかわっていることもわかってきています」
このように、腸は全身のコンディションを支える重要な器官。
「腸内環境が整っていればこれらの機能は正しく働くので健康や若々しさは保たれますが、逆に腸内環境が乱れると、心身の不調を招いたり、老化がすすむ原因になります。ですから腸活は、アラフィーにこそ意識してほしい習慣なのです」
腸と腸内細菌の役割とは?
1. 食べ物の消化や吸収
食べたものを消化して栄養を体に取り込み、不要なものを便として排出。全身の栄養状態を支える重要な基本機能。
2. 免疫のコントロール
人体の半分以上の免疫細胞が集まる。有害な異物の侵入を防ぎつつ、有益なものは受け入れ、感染症や病気を防ぐ。
3. 体型の決定
やせている人には「やせ菌」と呼ばれる菌が多い傾向があり、腸内細菌が体型に影響することが明らかになりつつある。
4. 老化防止
ダメージを受けた細胞が蓄積すると老化が進む原因に。腸の免疫細胞はこれらを排除し、エイジングの進行を防ぐ。
5. メンタル・脳との連携
腸と脳は「脳腸相関」と呼ばれる密接な関係にあり、腸内細菌が気分や思考、認知機能にも影響することがわかってきた。
取材・原文/和田美穂 イラスト/わじまやさほ ※エクラ2026年5月号掲載