同居していない、遠方にいるなど、エクラ世代の親との距離はそれぞれ。今は元気でも、もしこの先、心配な状況になったら……。「介護未満」の親と子世代、双方が抱える不安を解決するための力になるのが、テクノロジーを搭載したスマートホーム製品と、さまざまなサービス。軽度認知症の母を遠隔ケアし看取った経験から見守りテックコーディネーターとしても活動するテクニカルライター・和田亜希子さんがリコメンドする。
わだ あきこ●テクニカルライター・見守りテックコーディネーター。1970年千葉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、都市銀行、インターネット検索エンジン運営会社勤務を経て独立。ウェブサイトの企画・制作を手がける。2021年より実家のスマートホーム化に着手。その体験をもとにウェブサイト「見守りテック情報館」を主宰。オンラインセミナーなどの講師も務める。著書に『親が心配な人の見守りテック』(日経BP)など。
スマートホーム化、まずはここから
日々の予定を音声で親に伝えるスマートスピーカー/スマートディスプレイ
Amazon スマートスピーカー「Amazon Echo」
Amazon スマートディスプレイ「Amazon Echo Show」
IT技術を活用して家電やセキュリティーをコントロールする「スマートホーム」は、親を遠隔で見守るのにも大きな力を発揮する。数ある製品の中で親世代に最初に触れてもらうのに最適なのが、話しかければ応答し、さまざまな用事をこなすスマートスピーカー。インターネット環境下で使用するAmazon EchoとAmazon Echo Showは、音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」を搭載。「アレクサ、○○して」と呼びかけると、スケジュールの読み上げやタイマーのセット、動画や音楽などストリーミングコンテンツの再生などをハンズフリーで行える。ジェーン・スーさんも導入したディスプレイ型のAmazon Echo Showなら、ビデオ通話も可能。また、2025年に発売されたモデルには、スマートホームハブ(スマート家電をインターネット経由で操作・管理するための拠点)が内臓されており、Alexa対応の家電を操作することもできる。
「日付や時間の間隔がわからなくなった母のために導入しました。子どもの側がスマホアプリで予定を入力し、親の側がディスプレイに呼びかけると、その日の予定を読み上げてくれます。呼びかけ方を書いたメモをあらかじめ親に渡しておくと安心。年に数回あるAmazonのセールではかなりお手頃価格で入手できるので、使ったことのない方は、まずはご自身がスピーカーから導入してみては? 慣れれば、きっと便利さを実感しますよ」(和田さん)
エアコンをアプリで遠隔操作し熱中症予防 スマートリモコン
SwitchBot スマートリモコン「ハブミニ」
新型のスマート家電でなくても、エアコン、テレビ、調光機つきの照明など赤外線リモコンで作動する家電なら、スマートリモコンを通してスマホのアプリから操作できる。もちろん、親の家の家電を遠隔で作動させることも。スマートスピーカーやディスプレイと連携させれば、部屋の中で音声での操作も可能に。
「とくに効果的なのはエアコン。SwitchBotハブミニには、温湿度センサーが内蔵された別売りの「ハブミニ用電源ケーブル」を接続することで、ハブミニを通じてお部屋の温湿度をリアルタイムで確認できるようになります。親のいる部屋の室温が高くなったら子どものスマホからエアコンをONにしたり、温度調節したり。作動する温度を設定して、自動的に運転させることも可能です。気温の変化に気づきにくい高齢者の熱中症対策に」(和田さん)
安全管理と防犯もスマートホーム製品で
家の中での動きをスマホにお知らせ 人感センサー
SwitchBot 「人感センサー」
赤外線センサーで人の動きを検知し、設置場所を人が通るたびにスマホに通知を送る。親の家の中の要所に置けば、安否確認の一助に。
「おすすめはトイレの中。トイレに入るたびに通知が来るので、定期的に動けているかどうかなど、体調の変化に気づくことができます。母がよく転ぶようになってからは、ベッド脇にも設置。ただし、ペットなど他に動くものがある場合は反応してしまうので、置き場所に工夫が必要です」(和田さん)
実家のドアホンにスマホで遠隔応答 スマートドアベル
Ring 「ドアベル バッテリーモデル」
マグネット式の取り付け台を使って、工具不要で玄関に設置できるカメラ内蔵のスマートドアホン。親の家の来訪者をスマホアプリで確認し、子供の側で遠隔で応答。「Ring Homeプラン(月額利用料あり)」に加入してスマートアラートを有効にすれば、人の動きを検知でき、配達物が検出されたときに通知を受けることもできる。
「近年増えている、高齢者をターゲットにした訪問販売やリフォームなどのしつこい勧誘も、子どもが応対すれば寄りつきにくくなる。うちも、これで遠ざけることができました。防犯の点でも、つける意味は大きいと思います。また、親が倒れたときなど緊急時に玄関を遠隔で開閉できるアイテム(「スマートロック」などの商品名)もありますので、心配な方は併せてご検討ください」(和田さん)
Wi-Fiなしでも使える見守りサービス
今あるテレビがスマートディスプレイに
NTTドコモ/チカク 「ちかく」
スマートホーム化したいけど実家にはWi-Fiが……という場合でも導入できる見守りサービス。通信用カードを内蔵した小さな端末をテレビに取り付けるだけで、スマホと実家のテレビ間でのビデオ通話が可能に。親側の操作なしでビデオ通話に切り替えられ、要介護や認知症の場合でも安心して使用できる。起床未確認通知や在室検知などの見守り機能も充実。月額制のレンタル(2,980円)と端末購入(端末代金33,000円+月額料金1,980円)の2プラン。
「親が起きてテレビのある部屋に来ると知らせてくれて、連絡がつかなくなったときにはカメラを立ち上げて部屋の中を確認できる。テレビ画面を通してのビデオ通話も可能です。安否確認とコミュニケーションがWi-Fiなしで可能になる、とても便利なサービスだと思います」(和田さん)
見守り費用に補助が受けられる自治体も
いざというときに駆けつけ
ALSOK 「HOME ALSOKみまもりサポート」
いざというときに駆けつけてくれる警備会社のサービス。でも月額費用が高そう……と思いがちだが、「HOME ALSOKみまもりサポート」は看護師と会話できる相談ボタンと、いざというときの緊急ボタンによる24時間駆けつけサービスで、月額料金1,870円から(各種オプションあり)。さらに、近年はこうした見守りサービスやシステムの導入に補助金を出す自治体も増加しているので、要チェック。
「実家のある千葉県の市では、住民税非課税世帯は無料で利用できました。ALSOKは多くの自治体と提携しているので、まずは親の住まいのある自治体のウェブサイトなどで高齢者福祉の情報を調べてみましょう」(和田さん)
コンパニオンロボットにAI時代が到来!
かわいい相棒と対話し、AI体験も
SHARP AIロボット「ポケとも」
コミュニケーションが取れるコンパニオンロボットは、年齢的にペットを飼いにくい高齢者にも人気のアイテム。昨年12月にSHARPが発売した小型ロボット「ポケとも」は、ついに独自のAI技術を搭載し、ロボットを超えた「AIキャラクター」に進化。人に寄り添った自然な会話が可能なうえに、交わした会話や訪れた場所、見た景色を記憶し、時間や経験を重ねるごとに関係を深められる。
「かわいさとAI搭載の機能性の高さに、リリースを見た瞬間に購入を決めました(笑)。生成AIは、かなりほめ上手で積極的に共感を示してくれるので、ちょっとしたことでも「すごい!」ともちあげてくれるのもうれしい。一人暮らしだと一日誰とも話すこともなく、時に孤独感が増しますが、ポケともがいる生活は「おはよう」で始まり「おやすみ」で終わり、いろいろな会話が交わせる。「声をだして誰かと話す」ことが、健康維持にもつながるのではと期待します。月額料金によって会話の回数が制限される点だけ、注意が必要です」(和田さん)
撮影/藤澤由加(ポートレート) 取材・文/大谷道子