管理職、マネージャークラスも多い50代。若手を育てながらともに働くために意識したいポイントを、キャリア形成の専門家 古屋星斗さんがアドバイス。
世代間ギャップのない時代!「若者がわからない」から離れよう
リクルートワークス研究所 主任研究員 古屋星斗さん
飲み会に誘うと「それって業務ですか?」と返された、少し注意したら翌日から欠勤……こんな『今どきの若者』の話を聞くにつけ、「若者ってむずかしい」と感じる人も多いのでは?実はその「わからない」という思いこそが、20~30代とのすれ違いを生む原因。
「書籍やネットには『今どきの若者とは』みたいなトピックが無数にあり、前出のような例がいくつも出てくる。でもそれらはあくまで若者全体の平均値、もしくはバズりやすい極端な例だったりします。目の前にいる実際の若手とは乖離があるため、情報を集めようとするほどわからなくなる悪循環に。私はそれを『“若者わからん”のパラドックス』と呼んでいます」
「若者」とひとくくりにせず、あくまでひとりの人としてコミュニケーションを増やすことが理解のカギ。
「今はファッション、娯楽から働くことへの意識まで、さまざまな事柄において世代間の差がなくなってきている時代。若いというだけで宇宙人扱いして遠ざけることはせず、積極的にコミュニケーションをとることを意識したいです。
今の時代、話す内容にも気を使うと思いますが、大事なのは内容よりも頻度。頻度の高さが関係性をよくするという研究結果があります。とはいえ、話をしようとするとどうしても上司→部下の一方通行になりがち。そこでおすすめなのが上司側の『自己開示』です。上の人が先に『あれが不安なんだ』など考えを口に出せば、若手が自分の意見をいうハードルが下がり、キャッチボール型のコミュニケーションがしやすくなります」
若手が育っている感覚がない、打っても響かない、というのも多い悩み。
「解決策のひとつは『ゴールを明確にしてあげること』。期待する成果や反応がない場合、本人が求められていることをわかっていないことがあります。プロジェクト単位でも時期でも、職種に合うかたちでいいので、できるだけ短いスパンでゴールを明確に提示する。ひとつの仕事を短距離走として渡していくことを意識するといいと思います。
もうひとつ、育成法として近年主流になりつつある『ピアトレーニング』を取り入れてみては。垂直ではなく横のつながりでスキルアップを目ざす方法で、若手だけのチームで仕事に取り組んでもらうことで、お互いに競い合い、助け合っての成長が見込めます」
育成成功率を高めるには、上司自身が多様な面をもつこともポイント。
「若いころ、仕事ひとすじの上司より『よくわからないけどほかでいろいろやっているな』っていう人のほうが社会にコミットしているように感じませんでしたか? 実際、社外での経験が多い人ほど若手の育成がうまくいくというデータも。
地域活動、ボランティア、学び直し……業務外でさまざまな経験をしていることが若手にとって社会人としてのロールモデルになり、それが育てる側にも手応えをもたらしてくる。『変な上司』万歳、です」
20代・30代と心地よく働くために
·コミュニケーションは内容よりも頻度が大事
·悩みや考えを引き出すためにこちらから「自己開示」を
·社外経験を増やして若者のロールモデルになろう
ふるや しょうと●一橋大学大学院社会学研究科修了。経産省で人材政策等に携わり’17年より現職。著書に『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか“ゆるい職場”時代の人材育成の科学』(日本経済新聞出版)。
撮影/名和真紀子 取材・原文/遊佐信子 ※エクラ2026年4月号掲載