誰もが知るグローバル企業から、新たなステージへ。会社経営者 中井陽子さんが、27年間のマイクロソフト勤務の中で働き方を考えたターニングポイントとは? エクラ世代の生き方と輝く未来がここにある。
やりたいことと社会への恩返し、両方をかなえられるのは50代の今
会社経営者 中井陽子さん
マイクロソフト日本法人で営業・マーケティングなどを経て、30代でアメリカ本社勤務を経験した中井さん。帰国後は複数のリーダー職を歴任し、執行役員に就任。その間には自身の出産・育児もあった。
「27年間のマイクロソフト勤務の中で働き方を考えるターニングポイントが2つありました。ひとつは本社での3年間。渡米は’08年で世界金融危機の真っただ中、多くの人が解雇されているような状況で、英語も堪能でなく技術職でもない私ができる仕事を見つけるのはとても大変でした。
自分にできることを洗い出し、さらにそれを人に伝えられなければ仕事は得られない。それ以降、新たな仕事につく際には『自分に何ができるのか』を明確にするという姿勢が備わりました。
もうひとつは、本社から帰国して管理職についたとき。自分個人のではなく、チームの力を上げるため『他者を生かす環境』を考えるように。チームの中で学び合いたたえ合う場を設けたり、情報をオープンに流通させる会議を新たにつくったり、さまざまなトライを積み重ねていきました。他者の力をうまく活用して適材適所のチームづくりができると、より早く期待以上の成果が出ることを経験できました」
’24年にアドビの代表取締役に就任するも家庭の都合で翌年にやむなく退任。でも中井さんは「いいタイミングかもしれない」と惜しむ気持ちからすぐシフトチェンジ。
「私も含めてエクラ世代って、さまざまな経験を積み、自分が何に喜びを感じるかはもうわかっている。若いころより思慮も深まり忍耐力もついて、いわば『熟成』が始まった段階。一方で夢に向かう気力もまだ十分ある。社長業は会社や従業員のことが優先で自分のことを考える時間はありませんでしたが、80歳になったときも幸せでいるための土台をつくりはじめるなら、今かもしれないと。その幸せも自分の楽しみを追求するだけでなく、社会に恩返しになることがいい」
とはいえ、50歳を過ぎると体力筋力の低下は不可避。ハードワークで「体が資本」を実感している中井さんは、すでに対策もしっかり。
「40代に入ってから、週1回1時間プライベートでトレーニングを受け、乗馬も始めました。姿勢をまっすぐ保てたり階段の上り下りがラクになるなど、基礎的な筋力体力がついたら、仕事のパフォーマンスも上がりました」
中井さんはここからを「次のフェーズ」ととらえている。「ここまでの30年は、前の人たちが残してくれたものの中で成長してきたとするなら、この先の30年は次の世代に残せるものをつくっていく時間にしたい」
今後はこれまでの経験を生かす仕事も続けながら、ワイナリーをつくるべく始動中という中井さん。いきいきと輝く姿は、私たちに大きな希望を与えてくれる。
これからも「いい仕事」をするために
·自分にできることを明確にして、まわりに伝えられるように
·他者を生かす環境をつくって、よりよい成果につなげる
·自分が楽しみつつ社会に還元することを常に考える
なかい ようこ●’74年生まれ。早稲田大学教育学部卒業。’97年マイクロソフト日本法人に入社。多様な業務や管理職を経て’18年に執行役員に。その後アドビの代表取締役を経て現職。幼いころからの動物好きで、趣味は乗馬。
撮影/名和真紀子 取材・原文/遊佐信子 ※エクラ2026年4月号掲載