働くことは生きること。人生100年とするならば、エクラ世代はちょうど折り返し地点であり、この先どう働いてどう生きるかを考えるべきタイミング。さまざまな人の経験や知見から、そのヒントを見つけていこう。
エクラ読者の「働き方白書」
50代は、仕事についてどう考えてる?有職率から仕事の不安、この先の働き方への意識まで。同世代が今感じていることを参考に、自分の立ち位置を確認してみて。
※チームJマダム®、エクラメルマガ会員計144人が回答
Q1.今、仕事をしていますか?
Q2. 60歳以降も働き続けたいですか?
60歳以降も働き続けたい人は8割強。「キャリアや人生経験を積んできたからこそできることで社会貢献したい」(あいさん)、「自分の力量で可能なら働きたい」(Jマダム yakoさん)。
Q3. (60歳以降も働きたいかたに)何歳まで働きたいですか?
なんと約5割が「働けるかぎり働きたい」と回答! その理由には「人とのかかわり」をあげている人が多数。「いわゆる『仕事』ではなくても、なんらかの価値を提供できる人であり続けたい」(Jマダム ゆーさん)など「社会とのつながり」を重視する声が目立った。
Q4.今感じている(または近い将来、出てきそうな) 仕事にまつわる悩みは?
(5つまで回答可)
体力・気力が落ちてきた …69人
親の介護との両立ができるか …47人
世の中の変化についていけない …33人
昇進や昇給の展望が見えない … 26人
会社など組織内の人間関係 …26人
資格をとるなどスキルを上げないと行き詰まる … 23人
今の仕事が先細り …21人
やりがいを感じられない …17人
職場の方向性に不満 …13人
取引先など組織外の人間関係 …8人
その他 …18人
体力・気力の低下、親の介護、世の中の変化への対応力などエクラ世代ならではのお悩みが上位に。「若者の退職」(さつきさん)など、人を育てる立場にもいるからこその悩みも。
Q5.これからの働き方で重視したいことは?
(3つまで回答可)
やりがい …61人
収入 …57人
社会とのつながり …50人
時間など融通がきき、柔軟に働ける …48人
体力的に無理がない …47人
職場の人間関係 …33人
プライベートの時間がとれる …28人
自分の意思で決められる …26人
社会貢献できる …24人
安定して仕事がある …14人
その他 …6人
やりがいと同程度に収入も重視している人が多数。「所有する資格を生かせること」(Jマダム トモミさん)、「職場は自宅から30分以内」(ちゃんさん)など条件が明確な人も。
Q6.これから目ざしたい働き方、挑戦したい仕事は?
会社員をしながら、今年、起業しました。「好き」や「得意」をかたちにして、新しいことにどんどん挑戦していきたい。
現在は組織の一員としての顔も大切にしながら、副業というかたちで軌道に乗っていますが、自分の心が動くほうへ、働き方をしなやかにアップデートしていきたいと思っています。(Jマダム AkeMiさん)
自分がガツガツがんばって会社を変えていくというより、会社を変えていきたいと思う後輩の後押しができる存在になりたい。(shigeさん)
収入はそこそこでも、人のためになる仕事(スクールサポートスタッフ)をしつづけたいです。(椿バジルさん)
起業などの経験から、チャンスは思いがけないところから訪れるもの
だと感じています。だからこそ未来を焦らず、まずは「今」を大切に。目の前の仕事にていねいに向き合い、成果を積み重ねたい。稼ぐ力と好奇心を持ち続けたいなと思っています。(Tomoさん)
「大学卒業後、一度も転職せず今の会社で働いています。60歳になったら、まったく別の業種で働いてみたくて、今はそのための勉強中」(マサコさん)、「以前テレビで見たスターバックスの高齢のスタッフ。とても味があってかっこよくて『自分もいつか……』と思っています」(miyaさん)、「今よりも余裕ができたら、小さなお総菜屋さんを開いてみたい」(ねね子さん)など、人生後半戦に入るこれからもかなえたい夢をもっている人も多く、資格取得や勉強を始めたという人も。今現在仕事をしている人もしていない人も、総じて今後も働くことに対してポジティブな意識をもっていることがわかった。
仕事に、自分に真剣に向き合ってきたあの人にインタビュー
女性起業家とフリーアナウンサー。幾多の波を乗り越えつつ働き続けてきたからこそたどりついたふたりが考える、心地よい働き方とは。
実業家/リントス株式会社代表取締役 川崎貴子さん
「好き」にコミットすることで仕事は自分でつくり出せます
川崎さんの「働き方」ヒストリー
21歳 人材派遣会社パソナに営業職として入社
能力のある女性が派遣スタッフとして働かざるをえない状況を知り、働く女性を応援する仕事をしたいという思いを抱く。
25歳 働く女性のための人材コンサルティング会社ジョヤンテを設立
当時は男性市場だった人材紹介業だったが、ベンチャー企業を中心に女性に特化した人材紹介業を展開。
32歳 長女を出産
育児はほぼシッターさんにお願いして、仕事にまい進。
33歳 離婚
起業家同士の結婚だったため、仕事に支障をきたすと判断し、円満離婚。
35歳 再婚
家事は夫メイン。多様な生き方があることを示したいという思いから、夫に自分の籍に入ってもらう。
39歳 次女を出産
長女のときに育児を十分にできなかったという思いから、「女性の幸せ」について考えるように。
40歳 会社の運営を取締役に託し、社外へ
女性の幸せを追求したいという思いから、それまでの仕事をいったん離れ、さまざまな企業の社外取締役をボランティアでやるなどして知見を広げる。出版事業の一環でブログを書くことになり、恋愛コラムを担当。
42歳 著書を出版、婚活予備校「魔女のサバト」をスタート
ブログの恋愛コラムが好評で書籍化。同時期に、働く女性のための婚活予備校を始める。
44歳 乳がんに罹患
それまではやりたいことを全部やる、というスタイルだったが、優先順位を考えるように。家族との時間が一番大事ということを改めて実感。
53歳 働く女性のための結婚相談所をスタート
「魔女のサバト」で培った知見をもとに、結婚相談事業を立ち上げ。これからの時代、キャリアはアドバンテージになることを働く女性にもっと自覚してもらいたいという思いから。
女性に羽ばたいてほしい。その思いで起業を決意
転職市場が男性のものだった’90年代に、女性に特化した人材紹介業を立ち上げ、以降一貫して働く女性の成長・成功を支援しつづける川崎さん。この道を自分の仕事と決めたのは、最初の会社で、能力があるのに働き方に行き詰まっている多くの女性を目にしたからだった。
「私が短大を卒業したのは、就職氷河期に突入して2年目くらい。学生時代から営業職をやりたいと思っていて、人材派遣会社『パソナ』が唯一、女性営業を募集していた企業だったので、就職を希望しました。そこで女性の人材紹介業務を担当し、自分と同じ年くらいの女性が、次の仕事がなかなか決まらない現実を見たんですね。まじめでやる気も能力もある女性が活躍できないのが残念で、もっと女性が生き生きとキャリアを築くための仕事をしたいと思うようになりました」
パソナで経験を積んだ後、仲間とふたりで女性に特化した人材コンサルティング会社を設立。働く女性の成功、成長に少しでもかかわることはすべてやる。逆にそれ以外はやらないと明確に線引きし、さまざまな業務に取り組んだ。
「企業にコンサルに入って女性が結婚・出産しても働ける環境づくりをしたり、女性の離職を予防するための男性管理職向けセミナーを行ったり。さらには知見を広めるために会社を離れ、他社の取締役を兼任したこともありました。そんな中で働く女性の結婚についてコラムを書く機会を得て、それがきっかけで婚活予備校を主催することになり、それは10年続いています」
先行きが不透明な今の時代。こう生きたいという理念をもつことを意識して
エクラ世代が社会人になった当初より今は選択肢も増え、格段に働きやすい時代になった。だからこそ、どう働くべきか迷う人が増えているのもまた事実。
「自由はある一方で、不況はいつくるかわからず、AIの普及で将来仕事があるのかも不透明。体力や健康に陰りも出てくるエクラ世代は『この先自分にできる仕事って?』と不安を感じる人もいるかもしれません。
でも不安なのは、どう生きたいかという理念があいまいだから。『自分はこういう人間でこれがやりたい』をまずはハッキリさせてみましょう。起業家でもないのにそんなものない、と思うかもしれませんが、例えば『日本の農業を変える!』とか大きなことでなくても全然OK。
ささやかな『これが好き』『これが得意』を見つけて、それを周囲にアナウンスする。情報ってアナウンスしている人のところに集まってくるので、その中から自分が興味があるものにコミットしてみる。そこから自分ができることが見つかって、もしかしたら仕事につながるかもしれない。
それから、仕事のすべてをそこに賭ける必要もありません。今は個人でいくつも仕事をもつのはあたりまえだし、昔はなかった仕事がどんどん生まれてもいる。自分で仕事をつくり出せる時代なんです。
投資でいうリスク分散みたいに、小さな仕事をいろいろやってみる。そんな働き方も今ならできます。それはフリーランスも会社員も同じ。与えられた仕事をこなすだけではなく、自分が“小さな起業家”のつもりで『何ができるかな、何が楽しそうかな』とアンテナを常に張っておくことで、選択肢は無限に広がるはずです」
仕事の仕方や内容に加え、親の介護問題も、エクラ世代の働き方の不安要素のひとつ。
「これは感情と事実を分けて考えるといいと思います。親を見てあげたい気持ちはある、でも仕事をしながら全部を自分で引き受けるのはむずかしい。そこは切り分けて『この段階になったらどうする』というのをある程度計画的に進めていくことが、介護離職や介護疲れの予防に。その際に大事なことは、家族の中だけの『密室』で決めず、ケアマネージャーなどプロの人に入ってもらうことです」
今の仕事や立ち位置にこだわらない軽やかさが「いい働き方」に
フットワーク軽く多くの仕事に挑戦してきた川崎さん。エクラ世代が意識すべきは「軽やかさ」という。
「若いころは『何がほしいか』『何をしたいか』で仕事を考えていた人も多いかもしれません。でも男性に比べて完璧主義な傾向のある女性がそれをやると、リストにあがる項目が多くなりすぎて、本当に大事なことが見えなくなりがちなんです。
『何がいらないか』という引き算で働き方を見つめると、自分にとって望ましい働き方がスッキリ見えてくるかもしれません。そういう意味では『プレイヤーにこだわらない』というのも選択肢としてあり。
自分が前面に出るのではなく、人を育てるマネージャー側に回ってみる。私たちが若いころに受けた指導や教育には、今は通用しないものも多く、なら令和で通用するやり方とはなんなのか?それを考えること自体を楽しめるというのもまた、十分な大人であるエクラ世代だからこそできること。
こだわりや思い込みから自由になる軽やかさをもてた人こそが、この先も充実した職業人生を送っていけるのではないでしょうか」
50歳から目ざしたいのは
·「これが好き」を見つけてまわりにもアナウンス
·「何がいらないか」という視点で仕事を見直す
·人を育てることに喜びを見出すのもあり
かわさき たかこ●’72年生まれ。法人・個人向けに女性活躍を支援するコンサルティング業務などを行うかたわら、働く女性のための結婚相談所「ナチュ婚相談所」、婚活予備校「魔女のサバト」主宰、執筆活動や講演など幅広く活躍。2人の娘の母。
フリーアナウンサー・文筆家 住吉美紀さん
デコボコは「偏り」という名の能力! 誰かのために生かせる働き方を
住吉さんの「働き方」ヒストリー
22歳 NHKに入局
アナウンサーとして『プロフェッショナル 仕事の流儀』など数々の番組、海外中継、インタビュー等を担当。やりがいを感じつつも、アナウンサーとしての適性に悩むことも。
35歳 文筆活動をスタート
それまで続けてきたアナウンサーの仕事を通じて、改めて書くことも好きと気づく。編集者との出会いから、私生活についてつづった初のエッセー集『自分へのごほうび』(幻冬舎)を上梓。
37歳 フリーランスに
自分の可能性を広げたい、生き方を再構築したいという思いからNHKを退職。さまざまな番組に出演するも、求めに応えられていないのではと悩む日々。
38歳 TOKYO FM『Blue Ocean』のパーソナリティに
多くのリスナーの声に触れ、リスナーと一緒に番組をつくり上げる楽しさを実感。
47歳 新型コロナウイルス感染症に罹患
中等症で入院。体力が戻るまで8カ月もの時間を要したことで、残された時間をどう生きるかを考えるように。
48歳 個人事務所を立ち上げ
仕事の選択などもっと自分で責任をもちたいという思いから独立。
52歳 最新著書『50歳の棚卸し』上梓
「書く」ことが、自分の人生を見つめ直し、居場所を確認する、自分にとって欠かせない場になっていると感じる。
自分の足で立ってこそ! 40歳を前にフリーランスに
平日の午前中、毎日ラジオから流れてくる快活なトークからは想像しにくいが、住吉さんもまた人生の中で悩み、もがきながら働き方を模索してきたエクラ世代の“同志”だ。
「NHKには15年間勤め、海外ロケや生中継、インタビューなどたくさんの経験をさせてもらいました。小学校はアメリカ、高校はカナダだったので英語が話せたため、入局前からもっていた『海外と日本を結ぶ懸け橋になる仕事がしたい』という思いをかなえられている実感がありました。
そんな中、立ち上げからかかわったドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』が、自分の働き方を考えるひとつのきっかけに。4年強で計143人の超一流の仕事人にインタビューし、私自身も感動や気づきを得るうちに『じゃあ私はどう働いて、どう生きていきたいんだろう』という問いも生まれて……。
組織の中ではなく『自分』として社会に立ち向かっていかないと、本当の意味で生きているとはいえないんじゃないかとまで考えるようになって。同時に、アナウンサーとしての適性に疑問がわいたり、忙しさで自分の時間を自分で設計できないストレスを抱えたりもしていて、『再スタートを切るなら40歳目前の今だ』とフリーランスでやっていくことを決めました」
新型コロナ感染をきっかけに優先順位を整理し直した
心機一転踏み出した道は、まったくといっていいほど想像と違った。
「バラエティで気のきいたひと言がパッと出なかったり、情報番組では『根拠もないのにいえない』とコメントをためらってしまったり。『女子アナ大集合』みたいな番組で“女子アナあるある”エピソードを求められたのですが、私にはほかの出演者のかたが語るようないわゆる女子アナ的な経験がほとんどなく、存在感を示せずに『場違いなところに来てしまった』と落ち込んだことも。
そんなことが続いて、相談できる上司や同期もおらず、孤独感が募り、できない自分に失望してしまって……。でも、そのときすでに担当していたラジオ番組『Blue Ocean』で徐々にリスナーさんと時間を共有することの楽しさややりがいを感じられるようになったことに救われました。今も続くこの番組は私の核となる仕事ですが、とりわけ当時は大きな心の支えでした」
仕事が軌道に乗ってきた’20年に、新型コロナウイルスに感染したことが、またひとつ転機になった。
「中等症まですすんで命の危険を感じ、肉体的にも精神的にも本当につらかった。2週間入院しましたが、完全に体力が戻るまでに8カ月もかかりました。それが大きなきっかけとなり、『私が命を懸けてまでしたいことってなんだろう』『何を大事にしたいんだろう』ってすごく考えたんですね。
そうしたら、不器用でいいからもっと自分流に、仕事の内容も時間の使い方も自分に引き寄せようって答えが出ました。それまでの事務所を卒業して個人事務所を設立し、今度こそ本当の意味でフリーになったのが48歳のときでした」
棚卸しで自分への理解を深めれば「いい働き方」が 見えてくる
すべてを自分で選べるようになった今、住吉さんが働き方を決めるうえで基準にしているのは「時間」「人生における意味・やりがい」「人とのご縁」「社会貢献」「お金」の5つ。
「この5つは、エクラ世代が自分が幸せな状態で働けているかの物差しになるのでは、と思います。でも基準にしているとはいえ、現実には時間の使い方はまだ上手にいかないし、やりたいと思えばお金は度外視のこともあるんですけどね。
5つの要素をバランスよく満たしてくれるのは、なんといってもラジオの仕事。私が始めてから今までの14年間で社会の状況も大きく変わり、私自身のライフステージも変化してきました。
番組ではリスナーさんから寄せられたメッセージを紹介するのですが、ここ数年は『私も同じことがありました』『私の場合はこうでした』と自分のことを語る機会を徐々に増やしてきました。
それは『リスナーさんが個人的な経験や思いを寄せてくれるのに、自分のことを話さないわけにいかない』という思いから。お互いに語り合うことで『ひとりじゃない』『自分にもできるかも』と気持ちが明るくなるかたがいるかもしれない。私なりの社会貢献だと思っています。
同時にそれは自分の来し方を振り返る作業でもあり、昨年一冊のエッセーにまとめることができました。内面と対話しながら書いていく
ことを通して自分を重層的に理解し、俯瞰して見られるようにもなって、この先どう働きたいかも見えた気がします。エクラ世代でまだ『自分の棚卸し』をしたことがない人は、ぜひやってみてください。
私は得意不得意の差が激しくて、デコボコだらけ。それで苦しんだり
悩んだりした時期もありましたが、今では父と母から与えてもらった人間性であり、『偏り』という名の能力だと思えます。
もし自分の足りない部分ばかりに目がいきそうな人がいたら、それを自分だけの能力に置き換えてみてほしい。誰かの・何かの役に立つかもしれない──そんなふうに考えられたら、この先もずっと幸せに働けるんじゃないかな」
50歳から目ざしたいのは
·「時間」「社会貢献」など仕事を選ぶ基準を決める
·「自分の棚卸し」をして自分に対する理解を深める
·自分の偏りも愛して能力に変えていく
すみよし みき●’96年にNHK入局。海外取材やインタビューなど多岐にわたり活躍。’11年からフリー、翌年よりTOKYO FM『Blue Ocean』パーソナリティを務める。最新著書は『50歳の棚卸し』(講談社)。
もし職場にあなたを憂うつにさせる人がいたら…?
悩みの根底にあるのは、上司や同僚ではなく自分自身かも? 自分を見つめ心を整えるスキルを身につければ、職場はもっと快適に。
心理学者・公認心理師・ 精神保健福祉士 舟木彩乃さん
相手の心を読みすぎない。自分の内面にフォーカスを
残業が多い、業務内容が合わないなど、仕事で発生するさまざまな悩みは、「掘り下げていくと人間関係であることがほとんどです」と舟木さん。
「人間関係をむずかしくしているのは、実は多くの場合相手の心を読もうとしすぎていることに起因します。でも他人の心などわからないし、コントロールもできない。だからこそ悩むのですが、相手に過剰適応し、疲弊してしまう人がとても多いんですね。目を向けるべきは、相手ではなく自分自身。まず自分にとって何がストレスなのか、憂うつにさせる人間関係とはどのようなものかを把握しましょう。
その憂うつさの裏には『Aさんがこんなことをするのは○○だからに違いない』など、自分自身の思い込みや価値基準が横たわっている=バイアスがかかっている可能性があることを自覚しておくといいですね。
そのうえで何がつらいのかを書き出します。例えば『Bさんの言い方に傷ついた』などネガティブな感情は、疲れや体調、ホルモンバランスが影響している場合も。
特に更年期であるエクラ世代はホルモンバランスが乱れやすい時期なので要注意です。信頼できる人に相談するのもOK。その際、Cさんにはこれ、Dさんにはこれと相談先を複数に分けるのがベターです。
相手に負荷をかけすぎないためもありますが、特定の人に全部話してしまうと、例えば部署移動や感情のすれ違いなどで相談相手に適さなくなったときのリスクも大きくなります。悩みを解決に導くのは他人ではなく自分。相手には、自己理解のための“壁打ちの壁になってもらう”程度がいいですね」
職場の人間関係に憂うつさを感じたら
•自分にとって「憂うつな人間関係」とは、を把握する
価値観や思考の「枠組み」が狭い人は不安を感じやすいので、自分がどのような考え方をもっているかを見つめ直す。例:返信が遅い人→単に忙しくて、すぐ返信ができないからかもしれないのに「責任感のない人に違いない」or「自分を軽んじている」ととらえる。
•他者の心を読みすぎているようなクセはないか確認(自問自答)
他者の心理を想像する際には、自分の価値基準やバイアスがかなり入っていることを自覚する。
•何がつらいのか書き出す(人・場面・時期や時間帯・身体反応)→ 自分の「限界ライン」を把握する→ 休息・睡眠をとり、生活リズムを整える
身体的な疲弊やホルモンバランスの乱れがネガティブな感情を生み出していることが、想像以上に多い。睡眠を確保するなど休息をしっかりとり、場合によっては医療機関を受診する。
•信頼できる人に軽く相談してみる
全部を相談するのはNG。相手にとって重くなるし、人間関係は変わっていくため。話しながら、ストレスを感じる相手の意図を“悪意前提”で解釈していないかを点検する。
それでも日々のストレスをゼロにするのはむずかしい。そこでおすすめしたいのが「首尾一貫感覚」(下図参照)を意識すること。「『首尾一貫感覚』の3つの感覚を通して悩みを見つめると、問題解決に何が必要か、どうすればいいかの見通しを立てやすくなります。その結果、心が整ってストレスが緩和されやすくもなる。首尾一貫感覚は後天的にも高められるスキル。3つの感覚を意識してストレスに対処していくことが、首尾一貫感覚を高めることにつながります」
「首尾一貫感覚」を知っているとストレスにうまく対処できる
出典:『あなたの職場を憂鬱にする人たち』(集英社インターナショナル)
だいたいわかった:把握可能感
自分の置かれている状況や今後の展開をある程度、把握できていると思うこと。「想定の範囲内」と思える感覚のこと。
なんとかなる:処理可能感
自分に振りかかるストレスに対処できると思える感覚。対処できる根拠は、それを解決できる資源をタイムリーに引き出せるから。
どんなことにも意味がある:有意味感
問題の解決に向けた努力や苦労のしがいも含め、やりがいや生きる意味を感じられる。人生に起こることには意味があると思えること。
3つの感覚はお互いに補完し合うようにつながっている。把握可能感が高いと「なんとかなるだろう」と処理可能感が高まり、有意味感が高まると「どうにかなる」と思える。なかでも有意味感を高めることは、抱えている悩みや課題に意味をもたせることにつながり、乗り越える原動力として生かせる。
ふなき あやの●株式会社メンタルシンクタンク副社長。カウンセラーとして中央官庁や地方自治体のメンタルヘルス対策に従事。著書に『あなたの職場を憂鬱にする人たち』(インターナショナル新書)。
リクルートワークス研究所 主任研究員 古屋星斗さん
世代間ギャップのない時代!「若者がわからない」から離れよう
飲み会に誘うと「それって業務ですか?」と返された、少し注意したら翌日から欠勤……こんな『今どきの若者』の話を聞くにつけ、「若者ってむずかしい」と感じる人も多いのでは?実はその「わからない」という思いこそが、20~30代とのすれ違いを生む原因。
「書籍やネットには『今どきの若者とは』みたいなトピックが無数にあり、前出のような例がいくつも出てくる。でもそれらはあくまで若者全体の平均値、もしくはバズりやすい極端な例だったりします。目の前にいる実際の若手とは乖離があるため、情報を集めようとするほどわからなくなる悪循環に。私はそれを『“若者わからん”のパラドックス』と呼んでいます」
「若者」とひとくくりにせず、あくまでひとりの人としてコミュニケーションを増やすことが理解のカギ。
「今はファッション、娯楽から働くことへの意識まで、さまざまな事柄において世代間の差がなくなってきている時代。若いというだけで宇宙人扱いして遠ざけることはせず、積極的にコミュニケーションをとることを意識したいです。
今の時代、話す内容にも気を使うと思いますが、大事なのは内容よりも頻度。頻度の高さが関係性をよくするという研究結果があります。とはいえ、話をしようとするとどうしても上司→部下の一方通行になりがち。そこでおすすめなのが上司側の『自己開示』です。上の人が先に『あれが不安なんだ』など考えを口に出せば、若手が自分の意見をいうハードルが下がり、キャッチボール型のコミュニケーションがしやすくなります」
若手が育っている感覚がない、打っても響かない、というのも多い悩み。
「解決策のひとつは『ゴールを明確にしてあげること』。期待する成果や反応がない場合、本人が求められていることをわかっていないことがあります。プロジェクト単位でも時期でも、職種に合うかたちでいいので、できるだけ短いスパンでゴールを明確に提示する。ひとつの仕事を短距離走として渡していくことを意識するといいと思います。
もうひとつ、育成法として近年主流になりつつある『ピアトレーニング』を取り入れてみては。垂直ではなく横のつながりでスキルアップを目ざす方法で、若手だけのチームで仕事に取り組んでもらうことで、お互いに競い合い、助け合っての成長が見込めます」
育成成功率を高めるには、上司自身が多様な面をもつこともポイント。
「若いころ、仕事ひとすじの上司より『よくわからないけどほかでいろいろやっているな』っていう人のほうが社会にコミットしているように感じませんでしたか? 実際、社外での経験が多い人ほど若手の育成がうまくいくというデータも。
地域活動、ボランティア、学び直し……業務外でさまざまな経験をしていることが若手にとって社会人としてのロールモデルになり、それが育てる側にも手応えをもたらしてくる。『変な上司』万歳、です」
20代・30代と心地よく働くために
·コミュニケーションは内容よりも頻度が大事
·悩みや考えを引き出すためにこちらから「自己開示」を
·社外経験を増やして若者のロールモデルになろう
ふるや しょうと●一橋大学大学院社会学研究科修了。経産省で人材政策等に携わり’17年より現職。著書に『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか“ゆるい職場”時代の人材育成の科学』(日本経済新聞出版)。
輝いているエクラ世代の「これまでの30年と、これからの30年」
常に第一線を走り続けてきた同世代のビジネスパーソンの足跡と展望。エクラ世代の生き方、輝く未来がここにある。
会社経営者 中井陽子さん
やりたいことと社会への恩返し、両方をかなえられるのは50代の今
マイクロソフト日本法人で営業・マーケティングなどを経て、30代でアメリカ本社勤務を経験した中井さん。帰国後は複数のリーダー職を歴任し、執行役員に就任。その間には自身の出産・育児もあった。
「27年間のマイクロソフト勤務の中で働き方を考えるターニングポイントが2つありました。ひとつは本社での3年間。渡米は’08年で世界金融危機の真っただ中、多くの人が解雇されているような状況で、英語も堪能でなく技術職でもない私ができる仕事を見つけるのはとても大変でした。
自分にできることを洗い出し、さらにそれを人に伝えられなければ仕事は得られない。それ以降、新たな仕事につく際には『自分に何ができるのか』を明確にするという姿勢が備わりました。
もうひとつは、本社から帰国して管理職についたとき。自分個人のではなく、チームの力を上げるため『他者を生かす環境』を考えるように。チームの中で学び合いたたえ合う場を設けたり、情報をオープンに流通させる会議を新たにつくったり、さまざまなトライを積み重ねていきました。他者の力をうまく活用して適材適所のチームづくりができると、より早く期待以上の成果が出ることを経験できました」
’24年にアドビの代表取締役に就任するも家庭の都合で翌年にやむなく退任。でも中井さんは「いいタイミングかもしれない」と惜しむ気持ちからすぐシフトチェンジ。
「私も含めてエクラ世代って、さまざまな経験を積み、自分が何に喜びを感じるかはもうわかっている。若いころより思慮も深まり忍耐力もついて、いわば『熟成』が始まった段階。一方で夢に向かう気力もまだ十分ある。社長業は会社や従業員のことが優先で自分のことを考える時間はありませんでしたが、80歳になったときも幸せでいるための土台をつくりはじめるなら、今かもしれないと。その幸せも自分の楽しみを追求するだけでなく、社会に恩返しになることがいい」
とはいえ、50歳を過ぎると体力筋力の低下は不可避。ハードワークで「体が資本」を実感している中井さんは、すでに対策もしっかり。
「40代に入ってから、週1回1時間プライベートでトレーニングを受け、乗馬も始めました。姿勢をまっすぐ保てたり階段の上り下りがラクになるなど、基礎的な筋力体力がついたら、仕事のパフォーマンスも上がりました」
中井さんはここからを「次のフェーズ」ととらえている。「ここまでの30年は、前の人たちが残してくれたものの中で成長してきたとするなら、この先の30年は次の世代に残せるものをつくっていく時間にしたい」
今後はこれまでの経験を生かす仕事も続けながら、ワイナリーをつくるべく始動中という中井さん。いきいきと輝く姿は、私たちに大きな希望を与えてくれる。
これからも「いい仕事」をするために
·自分にできることを明確にして、まわりに伝えられるように
·他者を生かす環境をつくって、よりよい成果につなげる
·自分が楽しみつつ社会に還元することを常に考える
なかい ようこ●’74年生まれ。早稲田大学教育学部卒業。’97年マイクロソフト日本法人に入社。多様な業務や管理職を経て’18年に執行役員に。その後アドビの代表取締役を経て現職。幼いころからの動物好きで、趣味は乗馬。
50歳からの「いい働き方」Q&A
働くことは生きること。人生100年とするならば、エクラ世代はちょうど折り返し地点であり、この先どう働いてどう生きるかを考えるべきタイミング。さまざまな人の経験や知見から、そのヒントを見つけていこう。実業家、フリーランス、キャリア支援、心理学と、属性・専門分野の異なる4人がお悩み解決のヒントを提示。
答えてくれたのはこちらの4人
かわさき たかこ●’72年生まれ。法人・個人向けに女性活躍を支援するコンサルティング業務などを行うかたわら、働く女性のための結婚相談所「ナチュ婚相談所」、婚活予備校「魔女のサバト」主宰、執筆活動や講演など幅広く活躍。2人の娘の母。
すみよし みき●’96年にNHK入局。海外取材やインタビューなど多岐にわたり活躍。’11年からフリー、翌年よりTOKYO FM『Blue Ocean』パーソナリティを務める。最新著書は『50歳の棚卸し』(講談社)。
ふなき あやの●株式会社メンタルシンクタンク副社長。カウンセラーとして中央官庁や地方自治体のメンタルヘルス対策に従事。著書に『あなたの職場を憂鬱にする人たち』(インターナショナル新書)。
ふるや しょうと●一橋大学大学院社会学研究科修了。経産省で人材政策等に携わり’17年より現職。著書に『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか“ゆるい職場”時代の人材育成の科学』(日本経済新聞出版)。
Q.働くことが義務や我慢にならないための コツを知りたいです
Jマダム ゆきみさん フリーランス
フリーアナウンサー・文筆家 住吉美紀さん
「やりたい」という気持ちは仕事の原動力。主体的に働けているか、それを自分に問いかける習慣をつけるといいと思います。私はレギュラーのラジオ番組について、年度をまたぐタイミングで毎年「まだやりたいよね?」と自分に再確認するように。今は「やりたい!」という声が返ってきているので、いつもフレッシュな気持ちで取り組めています。
心理学者・公認心理師・ 精神保健福祉士 舟木彩乃さん
私もそうですが、特にフリーランスのかたはオンオフの切り替えがむずかしいですよね。オンばかりになってしまうとやりたいことがわからなくなり、仕事を続けること自体が目的化してしまう場合も。自分の人生を輝かせる目的を探すことも必要です。例えば呼吸法やマインドフルネスで、仕事のことを考えず、自分と向き合う時間をつくることも有効ですよ。
リクルートワークス研究所 主任研究員 古屋星斗さん
仕事の内容や肩書などとは関係のない、仕事外の場所や人間関係=サードプレイスをもつことがおすすめ。しがらみのない人たちとのかかわりが、新たな気づきを与えてくれ、めぐりめぐって仕事に対するモチベーションを高めてくれます。私もパパ友と遊びにいったり一般社団法人で仕事と別の活動をしたりするのが、いいリフレッシュになっています。
Q.若い世代にチャレンジする楽しさをどう伝えるのがよいでしょうか。ハラスメントにならないように……。
Tomoさん 正社員(管理職)
フリーアナウンサー・文筆家 住吉美紀さん
私が言葉で教えることが得意でないこともありますが、あれこれいうより背中で見せるのがいいんじゃないでしょうか。ラジオに「この現場が一番楽しい」といってくれる20代のスタッフがいるのですが、私自身の楽しく仕事に取り組んでいる姿やものをいいやすい空気づくりなどで、少しは伝えられているのかもと思います。
リクルートワークス研究所 主任研究員 古屋星斗さん
視野を広げることの価値を実際に体験させてあげたいですね。でも若いうちは自ら行動を起こすのはむずかしいもの。こっちから「こういう勉強会に行ってみない?」などと誘っちゃいましょう。「上に誘われたから行くしかない」と言い訳をつくってあげるんです。それが若手にとってチャンスとなることもあるので、おせっかいでいいのです。
Q.上司が仕事をしないタイプで、管理職業務まで自分に丸投げされるため、心身が疲れてしまいます。
miyaさん 正社員
心理学者・公認心理師・ 精神保健福祉士 舟木彩乃さん
人間関係を気にして過剰適応してしまっている可能性大。それは本来あなたがやるべき仕事ではないので、線引きして「できません」と断ってOKです。それでも変わらなければそのまた上司に相談しましょう。対人関係の交渉能力ってドラクエと同じで、戦って成功体験を積み、戦力を上げていくことでしか養えないのです。
Q.現在の仕事はやりがいがあって、自分に合っていると思うものの、年齢的に会社からは期待されていないのではと思うことも。役職がない立場で、この先、どう仕事をしていけばよいのか悩みます。
Jマダム ゆーさん 正社員
実業家/リントス株式会社代表取締役 川崎貴子さん
やりがいがあってがんばっているなら、きっと能力も高いはず。女性管理職を増やしたい企業も増えていますし、興味のある仕事には自分から手を上げることが大事です。上司だって「やりたい」と思う人にやってもらいたいはず。副職が許される会社であれば、社内にとらわれず社外でもやりたいと思える仕事があれば、積極的にトライしましょう。
Q.リモートワークに慣れている若手が、出社して席でおしゃべりしながら仕事をするよさに気づいておらず、なかなか出社してくれません。
shigeさん 正社員
心理学者・公認心理師・ 精神保健福祉士 舟木彩乃さん
リアルなおしゃべりがいいという考えには、相談者のかたのバイアスがかかっているかもしれません。先輩のおしゃべりは「反応しないといけない」など、プレッシャーを与えるかもという視点は必要です。リアルで仕事を進めると効率がよい、ミスが少ないなど明確なメリットがあるなら、組織のルールにしてもらうべく、会社に働きかけましょう。
リクルートワークス研究所 主任研究員 古屋星斗さん
コミュニケーションは頻度が高いことが大事。今はいろいろなツールがあるので、リアルにこだわらず、まずは頻度を上げることを目ざして、少しまめにチャットやメールなどでコミュニケーションをとってみてはいかがでしょうか。それで距離が縮まってきたら、若手が「リアルで話したいな」となる可能性も。
Q.判断力、理解力、言語化に難が出てきたら引退しよう、そうなるまでは続けたいと思っています。そのような判断は誰に、どのようにしてもらえばよいのでしょうか?
Jマダム ぶんかさん パート・アルバイト
実業家/リントス株式会社代表取締役 川崎貴子さん
年齢的なもので無理が出たり苦手になったりすることは誰にでもありますが、人の能力って0-100じゃなくグラデーションがあるのが自然。だからすっぱりとラインを決めなくてもいいんじゃないでしょうか。年齢とともにできないことばかりが増えていくイメージですが、逆に年を重ねるからこそできることもあるはずです。
フリーアナウンサー・文筆家 住吉美紀さん
誰もが初めて老いるのだから、自分の引きぎわなんてわからないものですよね。まして個人差もあるから、一律なラインなんて存在しない。筋力を鍛えたり歯を大切にしたり自分でできることは続けつつ、依頼してくれるかたがいるうちは懸命にがんばっていけばいいのでは、と思います。その時々での「自分のベスト」をつくすのが大事かと。
撮影/名和真紀子 ヘア&メイク/園部タミ子 スタイリスト/阪本幸恵 取材・原文/遊佐信子 イラスト/佐藤紀子 ※エクラ2026年4月号掲載