家族関係の変化を痛感せざるを得ないアラフィー世代。悩みは人それぞれでも、“考えさせられながら読む”小説にはそのヒントが! 夫婦や親子、一族に秘められた事実は、影響が大きいほど闇の中へ。まるでミステリーのような展開に目が離せない小説をピックアップ。
家族はミステリーの宝庫?「家族の秘密」にせまる小説7
粋なおばあちゃんは名探偵
『いつもが消えた日』
西條奈加 創元推理文庫 ¥800
中3の望は元芸者の祖母・お蔦さんと神楽坂でふたり暮らし。ある日、望の友人・有斗が帰宅すると、血だまりを残して家族が消えていた。残された彼を預かったお蔦さんは、警察の捜査とは別に一家失踪の理由を推理していく。お蔦さんのきっぷのよさと人情味が人気のシリーズ第2弾。つらい思いを経て成長していく少年たちと、それを見守る大人たちの姿がさわやかに心に残る。
湊かなえが描く姉妹の苦い真実
『豆の上で眠る』
湊かなえ 新潮文庫 ¥590
結衣子が小1のとき、2歳上の姉・万佑子が失踪。不審な車や変質者の噂がある中、必死の捜索が続くが、行方不明のまま2年。万佑子と名乗る少女が突然帰ってきて、家族は大喜びするが、結衣子には別人としか思えなかった。その違和感は大学生になってからも続いたが……。家族の中でなぜ妹だけが姉ではないと感じたのか。真相がわかるラストはあまりにも意外で、がく然としそう。
無言電話の向こうに亡き夫が?
『とめどなく囁く』
桐野夏生 幻冬舎 ¥1,800
夫の庸介を海難事故で亡くしたフリーライターの早樹は、仕事で知り合った31歳上の資産家と数年後に再婚。彼も妻を亡くしており、相模湾を望む瀟洒(しょうしゃ)な邸宅で穏やかに暮らしていた。そんなある日、亡夫の母・菊美から「庸介を見かけた」との知らせが。老いがすすんだ菊美の妄想なのか、それとも!? 庸介の過去がスリリングに明かされると同時に“人を許すこと”について考えさせられる。
少年犯罪の底なき闇と向き合う
『木曜日の子ども』
重松 清 KADOKAWA ¥1,700
42歳の「私」は14歳の息子・晴彦がいる香奈恵との結婚を機に旭ヶ丘に転居。そこは7年前に中2の少年によるクラスメイト無差別毒殺事件が起きた場所だったが、希望条件に合う家があったのだ。しかしすぐに晴彦の面影が犯人と似ている、犯人が近々社会復帰するらしいなど、不穏な噂が流れはじめ…。思春期の少年少女の絶望感が息苦しいほど伝わってくるが、最後にはひとすじの光が。
グリコ・森永事件を思い出す
『罪の声』
塩田武士 講談社 ¥1,650
京都で亡父から引き継いだテーラーを営む俊也は、遺品の中からカセットテープと黒革のノートを発見。テープを再生すると自分の声で録音がされており、ノートには【ギンガ】【萬堂】の文字が。毒入り菓子がばらまかれた「ギン萬事件」と父親に何か関係があるのか? 迷宮入りした大事件の真相を知りたい、でも父親が犯人とは思いたくない。そんな主人公の葛藤がせつなすぎる。
実力派6年ぶりの長編は感動作
『ノースライト』
横山秀夫 新潮社 ¥1,800
一級建築士の青瀬は、施主・吉野のたっての願いで信濃追分に家を設計。しかし完成から4カ月後、誰も住んでいないと知らされて訪れてみると、2階に古ぼけた一脚の椅子があるだけだった。椅子を手がかりに吉野一家の行方を探す青瀬だったが、それは自分だけでなく父親の人生とも向き合うことにつながっていく。普通の人々の思いがけないルーツ、ドラマのような歴史に感涙!
犯人は私だったかもしれない
『坂の途中の家』
角田光代 朝日文庫 ¥720
夫と幼い娘と暮らす専業主婦の里沙子は、乳幼児虐待死事件の補充裁判員に。夫の実家に娘を預けて10日間裁判所に通うが、しだいに被告女性と自分との境界線があいまいになっていく。「私も虐待をし、それを周囲から疑われているのかも」と。事件について考えることで、夫や義母との微妙な力関係に気づく里沙子。簡単に解決できない彼女の苦しみを、他人事と思えない人は多いはず。