第6回文芸エクラ大賞から、注目の5冊をピックアップ。エッセイ、ノンフィクション、外国文学……。本のプロが選ぶ、この1年間に出版された本で、“一番読んでほしい作品”は?
エッセイ賞
スーさんが「あなたがよくやったことを私は知っている」といってくれているよう
――有隣堂 アトレ恵比寿店 酒井ふゆきさん
『おつかれ、今日の私。』
ジェーン・スー マガジンハウス ¥1,540
“自分との約束”を果たせない自分にがっかりしたり、がんばっても報われないことに気落ちしたり。著者が自分の長所や短所を見つめながら読者に語りかけるエッセイには“ねぎらうこと”の大切さが。
注目の作家賞
職場、特に人間関係の描き方がクール。“いかにも!”で思わず笑いが
――書評ライター 山本圭子
『ケチる貴方』
石田夏穂 講談社 ¥1,650
熱を生産しにくい自分の体を“ケチ”と感じている冷え性の主人公。ところが職場であることをすると熱を生産するとわかり……。“女性の体”にまつわる発想が独特な2編を収録した作品集。
外国文学賞
戦争がすぐ隣にある国の日常には悲惨さも笑いも涙もあると教えてくれた
――書評ライター 細貝さやか
『わたしのペンは鳥の翼』
アフガニスタンの女性作家たち 古屋美登里/訳 小学館 ¥2,310
米軍が撤退し、タリバンが再び国を支配するアフガニスタンで女性作家たちが書いた短編から伝わるのは、過酷な現状や女性たちへの厳しい制約など。この国の過去・現在・未来について考えたくなる。
ノンフィクション賞
「普通の家族」は幻。「こうあるべき」に苦しんでいる人にぜひ読んでほしい
――ブックファーストアトレ吉祥寺店 利重絵理子さん
『父ではありませんが第三者として考える』
武田砂鉄 集英社 ¥1,760
「子どものいないあなたにはわからない」。そんな世間の雰囲気を感じているライターが親というものや家族について考えた本。誰もが自分の立場で先入観を抱きがちだが、フラットな目線は大事だと実感。
斎藤美奈子賞
秋田の鉱山跡をディテールまで再現。坑夫の人形がからむシュールな妄想にも説得力が
――文芸評論家 斎藤美奈子
『家庭用安心坑夫』
小砂川チト 講談社 ¥1,540
小波は“廃坑の坑夫マネキンがあなたの父親”と母にいわれて育つ。ところがやがて東京で父の姿をあちこちで見るように。現実と狂気のあいまいな境目に引き込まれそうになる’22年の芥川賞候補作。
文芸評論家 斎藤美奈子
本の執筆だけでなく、新聞や雑誌などにも切れ味鋭い文芸評を寄せ、幅広く支持されている。
書評ライター 山本圭子
出版社勤務を経てライターに。女性誌ほかで、新刊書評や著者インタビュー、対談などを手がける。
書評ライター 細貝さやか
本誌書評欄をはじめ、文芸誌の著者インタビューなどを執筆。海外文学やノンフィクションに精通。
書評担当編集 K野
女性誌で書評欄&著者インタビュー担当歴20年以上。女性誌ならではの本の企画を常に思案中。