6月の歌舞伎座「六月大歌舞伎」で襲名披露を行う中村梅枝さん。襲名披露の演目のほか、休みの日の過ごし方についても教えてくれた。
若女方(わかおやま)らしい甘酸っぱさの香る「梅枝」から、咲き誇る大輪の花のような立女方(たておやま)の名跡「時蔵」へ。
「梅枝でなくなるのはやはり寂しいですね。梅枝と名乗っていれば、皆さんが“まあまだ若いからね”って優しく見てくださる気がしておりましたので(笑)」と語るのは、六代目中村時蔵襲名のお披露目を目前に控えた中村梅枝さんだ。
現在36歳。父である当代の時蔵さんから受け継いだ美貌と、この若さにしてコクのある古風さ、そしてびくともしない本寸法の実力。さぞや時蔵さんから厳しい稽古を受けてきたのだろうと思いきや、「父はほんっとに僕には教えてくれないんですよ。特に役の性根とか大事なポイントをまるで教えてくれない。なのに後輩たちにはものすごくていねいに教えるんです。おかしくないですか?」と苦笑する。
一方で、女方(おんながた)としての肉体面での基本は10代のころから徹底的にたたき込まれた。
「お姫さまなら歩き方はこう、歩幅はこれくらい、世話女房ならこう、座ったときの手の位置はここ、と。歌舞伎の場合、肉体面で基本の形ができれば最低限の表現はできる。そこからその役の肚(はら)、精神面をどう深めていくか。父からすれば、そこは自分でやれということなのでしょうね。おかげで自分で考える作業はずいぶん慣れました」
そのころの梅枝さんは「三度の飯より歌舞伎が好き!というのがカッコいい、そうでなきゃいけないんだ」と自分に思い込ませていたという。しかし今は「逆に歌舞伎のことをまったく考えない時間も大事だなと思うようになりました」
今の息抜きはもっぱらゲーム。「休みの日にはもう一日中やっていますから。でも当分は帰宅したら寝るだけで精一杯の日々でしょうね。やるならとことん腰を据えてやりたいので、新作を買うのをずっと我慢してるんです」
襲名披露の演目は『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』。惚れた男を追って蘇我入鹿の屋敷に迷い込む田舎娘・杉酒屋娘お三輪を初役で勤める。
「嫉妬心や執着心をむき出しにする役ですが、そんなの他に類を見ないんです。可憐であるのが娘役の基本ですから。代々の女方が大切にしてきた役だと聞きます。何か強烈に惹きつけられるものがあるのでしょうね。楽しみです」
自身について突き放すようなクールな物言いをしながらも時折のぞくパッション。そんな梅枝さんがお三輪のように執着する物とは。
「僕、そもそも欲があまりないんですよ。でもやはり僕が継ぐことで時蔵の名前が落ちることのないように、そこは護りぬきたいですね。あとはそうだなあ、“誰にも負けないぞ”とか? いや今のはおかしいな、全然思ってないし、そんなこと(笑)」
『六月大歌舞伎』
中村時蔵改め初代中村萬壽、中村梅枝改め六代目中村時蔵、梅枝の長男小川大晴が五代目中村梅枝を名乗り初舞台を踏む。萬屋三代そろっての襲名披露となる。六代目時蔵襲名披露演目は『妹背山婦女庭訓』。
6/1~24、歌舞伎座(問)☎0570・000・489(チケットホン松竹)
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