長く愛される作品を数多く生み出し、幅広い層から支持されている絵本作家・五味太郎さん。エクラ読者と同世代で、恋愛や家族などを多彩に描いてきた小説家・江國香織さん。旧知の仲のおふたりの会話から、互いの“仕事観”が見えてきた。
絵本も小説も最後がわかってかくのはつまらない
五味 おれは小説を読むとき「どういう構造なのかな」と考えるのが大好き。構造がヤワだなとかシュールだなとか。読後感も気になるけど。
江國 怖い読者ですね。小説を書くときに組み立て方を意識している作家と意識していない作家がいると思いますが、私は意識していないんです。最初は思いつきですが、小説はその要請に従って書きたいと思っているので、形になるかどうかはその小説しだい。
五味 本当にそうだよね。話をスタートしてみて、それが内包していたものがどうなるかがだんだんわかってくる。
江國 いつもそうです。観察しながら書いている感じ。『彼女たちの場合は』という小説のときは、17歳と14歳の女の子に親のクレジットカードを持たせてアメリカに放ったら何が起こるかを知りたくて、観察していた。一緒に旅をしているようでした。
五味 やってみないとわからないという意味では、絵本を作ったり小説を書いたりすることはアスリートやライブでパフォーマンスをする人の仕事に似ているよね。
江國 確かに! 書き直しができるし、書いてから本になるまでタイムラグがあるから音楽みたいにライブで届けられるわけじゃないけれど、書いているときはライブです。
五味 ライブ感覚で絵本を作っていたいといつも思うよ。ミュージシャンも口パクだったら安定するかもしれないけど、歌っていてつまらないんじゃないかな。
江國 そうだと思います。私はプロットをたてないんですけど、最後はこうなるとわかって書いていたらつまらない。
五味 これは初めていうんだけど、その昔おれはダンサーになりたかったんだよ。
江國 えーっ!
五味 膝を痛めて挫折したんだけど。だからもともと肉体的なもの、ライブのような感覚がどうしようもなく好きなんだと思う。手慣れてしまうとライブじゃなくなって、イヤになっちゃう。おれは色を塗っている間ずっとときめいているけど、そうじゃないと魅力は出せないんだよ。そもそも生きていること自体ライブでしょう?
江國 今、腑に落ちました。私も手慣れられないから、いつもライブで小説を書いているんですね。久しぶりに“脳内五味さん”ではなく“リアル五味さん”にお会いしましたが、いろいろな気づきがあってとても楽しかったです。またぜひ!
五味 こちらこそまたぜひ。