俳優の杏さんにインタビュー。6月7日公開の映画「かくしごと」の見どころや自身の子育て観についてお話しいただいた。
「毋となって数年がたつ中で、この作品、今だったらできるかもしれない。そんな思いでお受けしました」
まっすぐな目で、そう語る杏さん。6月公開の映画『かくしごと』に主演。ある確執から、絶縁状態になっていた父親が認知症と診断され、山間の実家に帰郷することになった絵本作家の女性。あるとき、事故で記憶を失った少年と出会ったことで、物語は動きだす。少年の体には虐待のあとがあった……。「守られるべき小さな存在を、千紗子(役名)は放っておけず、法を犯すことだと知りながら育てる決意をするんです。単に強い正義感からということではなくて……。どんな人もそれぞれの事情を抱えて、少しでもいい方向にいくようにと迷いながら生きている。もがいた末の行為だったんです。私自身、38年間生きてきたひとりの人間として、母親として、思うところがたくさんある作品でした」
親子関係、介護、DV、虐待……、さまざまな問題を内包する物語で、千紗子も傷を抱いて生きてきた。カメラは日本の美しいひと夏、人々の心の陰影をていねいに映し出していく。そこには、これまで見せたことのない杏さんの表情があった。「父親役の奥田瑛二さんは、老いていく老人になりきっていて、終始、気軽にはお話ができませんでした。もともと疎遠だった父と娘ですから、カメラの外でも距離をとる。役に入るとはどういうことかを、学ばせていただきました」
心揺さぶる、ラストシーンは圧巻である。
「父と少年と過ごしたおとぎ話のような時間があったからこそ、それぞれが残りの人生を過ごしていけるのではないか、そう思うんです」
一昨年(’22年)、日本とパリの二拠点生活を開始。3人の子供と暮らす日々を送る。「昔から旅が好きで、実はパリだけでなくあちこちに住んでみたいんですが(笑)。もともと好奇心が旺盛なんです。大陸ですからニュースだけでも広い世界情勢を知ることができるし、子供たちにもよい影響になるのではと」
子育てについては、「子供というより、自立したひとりの存在と思って育てています」という。
「小学生になって、『お母さんはね』ではなく、『私は』という言い方に変えました。『私はこう思うけど、絶対ということではない』と、考えには柔軟性があっていいと伝えながら。置きメモにも“杏より”と書いています」
15歳でモデルとなり、自身の道を切り開いてきた人の、強さとしなやかさだろうか。これからをたずねると、瞳をきらめかせた。
「いつかフランス語で、仏映画に出たいと思っています」
この人はきっとかなえてしまうだろう、そう思わせる。
Ⓒ2024「かくしごと」製作委員会
『かくしごと』
父親の認知症がすすみ、故郷の田舎町に帰ってきた千紗子(杏)は、葛藤しつつも面倒を見る。ある夜、事故で記憶を失った少年を助け、一緒に生活を始めるが……。
出演:杏、中須翔真、奥田瑛二ほか。
監督:関根光才、原作:北國浩二『噓』(PHP文芸文庫)。
6月7日より全国公開。
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