夏の読書ガイドとして恒例となり、今年で7回目を迎えた文芸エクラ大賞。文芸評論家とライター、担当編集者がこの1年間に出版された本で最もおすすめしたい本を、忖度なしで厳選! 今回は「共感度MAX!賞」受賞作4冊をご紹介。
『娘が巣立つ朝』
娘の婚約者家族にとまどう夫婦の危機
伊吹有喜 文藝春秋 ¥1,980
「娘・父親・母親それぞれの気持ちがわかり感情移入。彼らとともに解決策を考えてしまう」(K野)。高梨家のひとり娘の婚約者は“セレブ”。結婚話が進むうち両家の違いが明らかになるが、高梨夫婦の問題も浮上してくる。
『シェニール織とか黄肉(きにく)のメロンとか』
女3人、楽しく食べれば昔に戻る!
江國香織 角川春樹事務所 ¥1,870
作家の民子、退職してイギリスから帰国した理枝、主婦の早希。親友3人が再会し、食べて語らうが、個々の日常には悩ましいことも。「気遣いを素直に受け止めない高齢の母にモヤる民子の気持ち、よくわかる!」(山本)。
『方舟(はこぶね)を燃やす』
口コミ、SNSの情報……どこまで信じる?
角田光代 新潮社 ¥1,980
「何かを信じたり伝えたりすることのむずかしさを痛感」(山本)。’67年生まれの飛馬と’50年ごろ生まれた不三子。終末論やカルト宗教がそばにあった時代のふたりの歩みを描きつつ、人を翻弄しがちな噂や情報について鋭く問う長編。
『墓じまいラプソディ』
墓への意見の違いが家族の火種になる!?
垣谷美雨 朝日新聞出版 ¥1,760
61歳の五月は義母の死を機に夫の兄姉と先祖代々の墓について話し合うが、無頓着な発言で周囲を凍りつかせる。「夫婦別姓カップルの場合など、今どきの墓問題も。笑いながら自分のこととして読んでしまう」(細貝)。
文芸エクラ大賞とは?
私たちは人生のさまざまなことを本から学び、読書離れが叫ばれて久しいとはいえ、本への信頼度が高いという実感がある世代。エクラではそんな皆さんにふさわしい本を選んで、改めて読書の喜びと力を感じていただきたいという思いから、’18年にこの賞を創設。
選考基準は、’23年6月~’24年5月の1年間に刊行された文芸作品であり、エクラ読者に切実に響き、ぜひ今読んでほしいと本音でおすすめできる本。エクラ書評班が厳選した、絶対に読んでほしい「大賞」をはじめ、ほかにも注目したいエクラ世代の必読書や、書店員がおすすめのイチ押し本を選定。きっと、あなたの明日のヒントになる本が見つかるはず!
文芸評論家 斎藤美奈子
書評ライター 山本圭子
出版社勤務を経てライターに。女性誌ほかで、新刊書評や著者インタビュー、対談などを手がける。
書評ライター 細貝さやか
本誌書評欄をはじめ、文芸誌の著者インタビューなどを執筆。特に海外文学やノンフィクションに精通。
書評担当編集 K野
女性誌で書評&作家インタビュー担当歴20年以上。女性誌ならではの本の企画を常に思案中。