今、韓国文学の日本語訳本の刊行数が増加し、ハン・ガンのノーベル文学賞受賞を機に勢いを増している。初めての人もきっと興味をそそられるハン・ガン作品の魅力を探る。
Ⓒ백다흠
亡き姉の記憶から想像が広がる散文
『すべての、白いものたちの』
ハン・ガン 斎藤真理子/訳
河出文庫 ¥935
白いものたちとは、おくるみ、うぶ着、寿衣(死者に着せる白い衣)など。本書の中心にあるのは出生直後に亡くなった実姉への思いだ。“自分が生きていること”を根源から見つめた作品集。繊細な文章の力も味わいたい。
ハン・ガンの名を一躍広めた鮮烈な小説
『菜食主義者』
ハン・ガン きむ ふな/訳 クオン
¥2,420
突然肉食を拒みはじめたヨンヘを見つめるのは彼女を理解できない夫、ヨンへに複雑な欲望を抱く義兄、ヨンへの保護者的な存在の姉。3人を通して描かれるヨンへの姿は、生きるために殺すことについて鋭く問うているよう。
音楽好きな素顔が見えてくるエッセー集
『そっと 静かに』
ハン・ガン 古川綾子/訳 クオン
¥2,420
幼い息子と音楽に合わせて踊ったことなど、音楽をテーマに思いをつづったエッセー集。「紙のピアノ」にはかつての母とのすれ違いが描かれ、せつない。巻末のQRコードにアクセスすれば著者の自作の朗読を聞くことも。
女性ふたりの対話で描かれた“あの悲劇”
『別れを告げない』
ハン・ガン 斎藤真理子/訳
白水社 ¥2,750
作業中に指を切断した友人・インソンに頼まれ、作家のキョンハは済州島のインソンの家に向かうが、大雪の中たどりついて体験したこととは。済州島4・3事件で深い傷を負った人々の悲痛な思いが響き渡る力作長編。
過酷な経験とその後を描いた鎮魂の書
『少年が来る』
ハン・ガン 井手俊作/訳 クオン
¥2,750
’80年の光州事件を題材にした小説。軍部の弾圧で絶命した少年やその遺族、後遺症で苦しむ女性などを語り手に、事件の実相をあぶり出していく。痛めつけられた心と体、終わらない苦しみについて考えさせられる。