ふつうに暮らす、堂々と過ごす。とにかく元気で、笑って生きる
「壁にぶち当たったときこそ、人は輝くべきだって、私は思います」
のっけから、亜希さんはずばり、言いきった。今まで、いくつもの壁を乗りこえて来た。その経験から出た答えには、深みがある。
「輝くと言っても、特別なことではないんです。壁を前にすると、それだけのパワーが自分の内側から出てくる。こんなことで負けていられない、その気持ちが自分を奮い立たせると思うんです」
具体的には、どうするか。
「朝起きて、ご飯を食べて、仕事にでかける。日常の生活を、いつも通り続ける。だってそれが基本ですから。毎日同じリズムで生きていると、あるときふっと楽になる。自分が普通に戻っているって、実感できるんです」
壁にもいろいろある、けれど。自分だけの力ではどうしようもない状況になったとき、まずは自分をいつも通りに保つことが、何よりも大切なこと。
「私、人にかわいそうと思われるのが嫌いなんです。何があっても『私はかわいそうなんかじゃない!』って思うようにしてました(笑)。本当に大変だったときこそ、妙にハッピーな顔をしてたかもしれません。でもこれはひとつの方法であって、『落ち込んだときこそ、いつも通り!』って、自分で自分に言い聞かせていました。『とにかく元気で、笑っておけば家族は回る、それでいいんだ』って。みんな、堂々と生きてこそです」
下を向いて、うつむき加減に生きるなんて性に合わない。とはいえ、亜希さんにだって、落ち込んでしまう時はある。
「ありますよ! ありますあります。人に会いたくない、家を出たくないってことも。気分が落ちるとお風呂に入るのも面倒になって、風呂キャン界隈(笑)。でもね、キッチンだけはキャンセルしない。落ち込んでもご飯は作る。今までは子どもたちがいたから、子どもには落ち込んでいる自分を見せたくないから、いっつも上機嫌で料理してました。元気がないと大量に作るのもしんどいし、油なんて触るのも嫌になっちゃうんだけど(笑)。でも、野菜を刻んで下ごしらえして、手を動かしているうちに、なんだ、やればできるじゃんっていつのまにか元気になっていたり」
頑張って家から出てみる。と、そこには通りすがりの人たちがいて。
「スーパーのレジの人がちょっと優しい言葉をかけてくれたり。タクシーの運転手さんがていねいな言葉で話してくれたり。見ず知らずの人たちの優しさに触れるとほっとして、なんだかエネルギーをもらえる。そのうちに、私ったらこんなささいなことでグジグジ思い悩んだりして、何やってるんだろう? って、いつのまにか闇から抜け出している。やっぱり人と接するって、大切なことなんですね」
だから今大切にしているのは、落ち込んだ時こそ人と積極的に接して、話して、笑うこと。
「しゃべっていないと、声まで小さくなるでしょ? 年齢を重ねていくと、身長が縮んだり声が小さくなったり目が見えにくくなったり耳が遠くなったりって、そんなの嫌じゃない?」
壁を乗り越えてきた今、56歳の自分が好きだって思える
つい最近も、ひとつの壁を乗り越えたばかり。3年前から、情報番組『DayDay.』(日本テレビ)の隔週レギュラーとして出演中。さまざまな事柄にコメントしたり、料理コーナーを担当したり、新たな分野に挑戦している。
「最初は戸惑うばかり。モデル時代の習慣で、自分の映りばかり気にしていました。この角度のほうがキレイに見えるとか、ノウハウを知っていますからね(笑)。だから何かコメントを口にしても、上の空だったかもしれません。どうしたらいいのか、わからなかった」
50歳を過ぎて、TV業界の新入生。そう簡単には、乗り越えられない。
「一緒の番組に出ているお笑いの方たちを見ていて、すごいなって思ったんです。臨機応変なコメントを、誰が聞いても笑えるように、傷つかないように口にしている。カメラに映っていないときも、楽しく場を盛り上げてくれる。そうやって現場の空気の温度が1度でも2度でも上がると、番組自体が温かくなって、盛り上がるんです。私もこのままじゃいけないって、気がつきました」
大事なのは、自分らしく、自分の想いを口にすること。TVの画面にどう映るかよりも、自分の軸をしっかり持って、泣いたり笑ったり怒ったりしながらそこにいることが、何より大事。
「今は、どんな顔で映ろうがかまわないと思ってます (笑)。それよりなにより、とにかくその場の話題にちゃんと向き合って、自分の言葉で自分の気持ちをそのまま伝えれば、それでいい。だってそれこそが、私が求められていることだから。50歳を過ぎて、老化も他人事じゃないけど(笑)。若いときのほうがかわいかったと思いますよ、確実に。でも私は、56歳になった今の自分のほうが、もっと好き」
壁をまたひとつ乗り越えて、輝きが増した。壁は自分を磨いてくれる、ちょっとハードな経験値、なのかもしれない。
そして人生でぶち当たる壁のベテラン・クライマーとして、最後にひと言。
「目の前に壁があるな、と感じたら、目を閉じて、その壁を乗り越えた瞬間をイメージするの。その壁がなくなった時の達成感とか解放感を、想像してみる。今までにもこんなことがあった。いろんなことがあったけど、それを乗り越えてきたんだという自信があるから、今回も大丈夫。そう思えたらもう、その壁はこーんなに低くなっているから(笑)」
亜希さんの連載が始まります!
エクラ5月号(4/1)から、亜希さんの連載がスタート。亜希さんが日々の暮らしや仕事、家族との時間を通して感じたことを、毎号お届けする予定です。ぜひお楽しみに!
撮影/嶌原佑矢(UM) ヘア&メイク/野田智子 スタイリスト/沢田結衣(UM) 取材・文/岡本麻佑
ジャケット¥94,600/リトルリーグ インク(エブール) デニム¥50,600/ショールーム ロイト(ハイクル) ネックレス(チェーン)¥22,000・(モチーフつき)¥34,100・リング¥35,200/ジャック・オブ・オール・トレーズ プレスルーム(テンプル オブ ザ サン)