漫画家・よしながふみ Specialインタビュー―大好きな漫画を描き続けて50代のいま考える、才能とは? 人生の成功とは?―

『きのう何食べた?』『大奥』などで知られる漫画家・よしながふみさんの、最新作が発売になる。『Talent―タレント―』は、2000年の芸能界を舞台に、男女4人の新人俳優たちを登場させ、“才能とは何か”を描き出す意欲作。作品が生まれたきっかけ、そしてエクラ読者と同世代でもあるよしながさんが、日々感じていることをスペシャルインタビューでお届け!

子供のころからのドラマ好きが高じて、芸能界を描くことに!

──時代劇から現代ものまで、多様な作品を描いてきたよしながさん。今回の作品で芸能界を舞台にしたのはなぜだろうか?

「私は子供のころからドラマを見るのが大好きなんです。特にテレビの2時間サスペンスが大好きで……。今でも市原悦子さん主演の『家政婦は見た!』の初回(1983年放送)を、最後のシーンまで思い出せるくらい。のちのコメディ交じりな話になる前の、松本清張原作のもので。今でいう“イヤミス”的な展開でした。それから宮藤官九郎さん脚本の『池袋ウエストゲートパーク(I.W.G.P.)』(2000年放送)もよく覚えています。私の中でのテレビドラマ史は、I.W.G.P.以前と以降に分かれています。I.W.G.P.以前が近代で、以降が現代なんです(笑)。エクラ世代のかたならわかっていただけると思うんですが、ドラマって長い間見続けていると、子役だったかたが「うわーもうお母さんの役やるようになったんだ!」とか、それまで地道にがんばってきたかたが当たり役を得て、急に花開く才能を目撃する瞬間もありますよね。その『すごい!』『人の才能って何だろう』と感じた気持ちを、漫画に落とし込みたいと思いました」

漫画家・よしながふみ Specialインの画像_1

©よしながふみ/集英社

──最新作『Talent―タレントー』の話を動かしていくのは、男性俳優の麻生涼平、柘植一慧、そして女性俳優のミコトと高屋敷華蓮の4人。男女の群像劇にした理由とは?

「最初は男の子2人だけの物語を考えていたんですが、前作『環と周』で、担当編集のかたから『明治時代の女学生2人のお話を書いてください』とご依頼があって。描いてみたらすごく楽しかったんですね。また『大奥』では男・女・男・女……と話を進めていきましたが、ラストの女性同士の絆や交流に描き応えがあった経験ももとになっています」

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麻生涼平 モデル出身の整った容姿でブレイク ©よしながふみ/集英社

若者たちが成熟していくまでを追いかけたい!

──話のスタートを2000年に設定し、そこから時代を進めていくのは、よしながさんにとって「自分へのご褒美」みたいなものなのだとか。

「ずっと、年齢を重ねた人間に惹かれ続けてきました。子供のころに2時間枠サスペンスに食いついていたのも、ベテランの俳優さんが主演だったから。『Talent―タレント―』に登場する4人も、今の段階では若者ですが、だんだんと年齢を重ねていきますよ。ピュアな涼平もずっと純粋な若手じゃいられないでしょうし、演技派と評価されている一慧も、世界で一番演技がうまいわけではないですから。女性誌の人気モデルを経て俳優の世界に入ったミコトは、二世俳優で才能も豊かな華蓮から『お芝居はやめないでね』と励ましの言葉をもらいますが、それはこの先、ミコトにとって“呪い”となる可能性もありますよね。紆余曲折を経て、みんながおじさん、おばさんになっていくのを描けたらなと考えています」

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柘植一慧 学生演劇出身。なんでも器用にこなす演技派。  ©よしながふみ/集英社

──ガラケーや旧式のMacが登場したりと、若い4人が登場する世界は、エクラの読者にとっては、自らの青春期と重なる部分も多い。よしながさんは描きながら、当時を思い返すことはあったのだろうか?

「私は1990年代にデビューしてからずっと漫画を描き続けているので、意外と世の中の移り変わりを覚えていなかったですね。今、アシスタントさんたちにはデジタルで作画してもらっているけれども、そうか、あのころはみんな手描きだったな、とか。本当に身近な思い出しかなくて(笑)。芸能界のことは昔も今も、もちろん何も知らないので、芸能事務所のかたにお話を伺いました。2000年代前半のマネージャーさんたちは紙の資料をいっぱい持ち歩いていたから、大きなリュックは必須だったそう。メールも発達しておらず、俳優さんたちのスケジュールを管理するのは大変だったらしいです。……というお話を聞くと、改めて『そんな時代だったか』と。作品に反映させた部分もたくさんあります」

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ミコト モデル出身の華やかな容姿  ©よしながふみ/集英社

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高屋敷華蓮 二世タレントだが、注目の実力派  ©よしながふみ/集英社

「体のメンテナンス」に割く時間が増えてきました

──そして50代の今、よしながさんはどんなことを感じているのだろうか?

「ずっと『締め切りを守ること』と『病気をしないこと』を最優先に生きてきたので、いきなり何かが変わったということはないものの、健康を維持するために割く時間は若いころよりも増えてきました。20代のころは『お金を払ってジムで体を動かすって何なのだろう?』と、割と本気で思っていたんですよ。それが年齢を重ねるとともに、ヨガを習おうと思うようになって。通うヨガのペースが週1回から2回になり。仕事中のすき間時間にはスクワットをし……と、体を整えるための“儀式”が、どんどん増えていっています(笑)」

──エクラ世代なら共感必須のこんな恐怖(!)体験も。

「ブラシを使って髪をとかしていたらブチン! とちぎれたような感覚を覚えたことがありました。いやだ私、ブラシを壊しちゃった、と思ったら、ブラシではなくて手の靭帯が切れた音だったんです! もの凄い速さで動かしていたわけでもないのに、ですよ。自分の体がポンコツになっているのに直面するのが50代かぁ~と。うちの現場はアシスタントさんもみんな同世代なので、中年期の体や健康のあるある話で盛り上がっています」

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4人のうち、最後まで残るのはだれ……!?  ©よしながふみ/集英社

50代はまだ、ピークにも達していない時期!

──とはいえ、「年齢を重ねるのに後ろ向きな思いはまるでない」ないと言い切る。

「ほら、もともとがおじさん&おばさんと、その先のおじいさん&おばあさん好きですから(笑)。それこそ芸能界でいったら、市原悦子さんの演技が円熟味を増していったのは50代以降だと思いますし。80代後半まで現役俳優でご活躍された笠智衆さんなんて、50代や60代なんてまだピークがきていませんから。自分の体がポンコツになるのはイヤですけれど、人としては『これから脂が乗っていくだろう』という気持ちでいます」

 

──そして「今の時代に、大人でありがたい」と思っている部分も。

「日々の息抜きにはやっぱり漫画を読んでしまうのですが、漫画こそ、この何十年かで娯楽としての立ち位置が上がりましたよね。私が子供のころは、あまり推奨される趣味じゃなかったですから。仕事としての漫画は大変だし、毎回必ず新しい話を考えていかねばならない。この年齢になっても、毎回就職の試験を受けているみたい、とも思います。でも趣味で読んだり描いたりするのは、大手を振ってできる時代になってうれしいなと。この先も、目を大事にしていけば、もっといっぱい漫画が読めるぞ~!と楽しみにしていて。すみません、本当に漫画中心の人生なんですよ(笑)。と同時に、やっぱりドラマも好きなので。テレビはもちろん、配信などの選択肢が増えているのもいいですよね。1日24時間の中で一生懸命エンタメを追う、みたいな50代の毎日を過ごしています」

よしながふみ タレント 表紙

『Talent―タレント― 1巻』2026年2月20日発売
【作品あらすじ】2000年6月。麻生涼平、柘植一慧(つげ・いっけい)、ミコト、高屋敷華蓮(たかやしき・かれん)の4人の新人俳優が、あるドラマを撮影するシーンから物語はスタート。輝かしい未来を信じて疑わない4人の若者に、共演の先輩女優、監督、プロデューサーが思うことは……? 激動の芸能界を舞台に“才能とは何か”を描く、よしながふみ最新作!

Talent-タレント- | よしながふみ | 作品紹介

●よしなが ふみ
東京都出身。1971年生まれ。1996年に『月とサンダル』で商業誌デビュー。男女逆転の設定で描いた『大奥』は手塚治虫文化賞マンガ大賞をはじめ、数々の賞を受賞。弁護士の史朗と美容師の賢二の暮らしを描く『きのう何食べた?』は第43回講談社漫画賞一般部門を受賞。『環と周』は『このマンガがすごい!2025』(宝島社)オンナ編第1位を受賞。『Talent―タレント―』は『ココハナ』(集英社刊)で連載中。

取材・文/石井絵里

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