50代はまだ十分、"もう1ゲーム”楽しめる――。年齢と経験を重ねたのち、新たに事業を起こした起業家たちが歩んだ道のりに、挑戦のヒントが。始めたい、変わりたいと思った瞬間こそ、動き出すとき!
年齢と経験を重ねたのち、新たに事業を起こした起業家たちが歩んだ道のりに、挑戦のヒントが。株式会社 BEAT BRAND DESIGN 代表取締役・渡邉和子さんが企業したきっかけとは。
株式会社 BEAT BRAND DESIGN 代表取締役 渡邉和子さん(56歳)
人生はいつからでも変えられる。 夢を追う勇気を応援したい
Profile
'91 化粧品会社ポーラに入社。20年以上、ブランディング・マーケティング業務や化粧品開発に従事。広告宣伝部長、商品企画部長、マーケティング執行役員などを務める。
’21 劇症型心筋炎を発症。休職した後、復職。
’23 親友を亡くす。
'25 ポーラを退職。4月、BEAT BRAND DESIGNを設立。
命のはかなさを痛感して人生の焦点が変わった
着実にキャリアを築いてきたエクラ世代の大半は、安定した環境に身を置いている。それゆえに、新しい挑戦をするためには思いがけないきっかけが必要なのかもしれない。
’25年の春、長年勤めた化粧品会社のポーラを退職して56歳で起業した渡邉和子さんの場合も、そう。複数のブランド開発やマーケティング事業を牽引し、「大きなやりがいを感じていた」という前職を手放した背景には、2つのできごとがあった。
「ポーラ時代、めったに体調をくずすこともなく仕事に没頭していた私は“鉄の女”と呼ばれるほどの猛烈社員でした。ところが52歳のとき、劇症型心筋炎を発症し、一時は心停止状態に。1週間ほど生死の境をさまよった末に意識を取り戻し、病院の天井を見つめながら最初に浮かんだことは、『あんなにがんばってきたのは、いったい何のためだったのだろう』という思いでした」
死を間近にして、自分の働き方に疑問を抱かずにいられなくなった渡邉さん。それでも休職を経て、復帰。会社に迷惑をかけてしまったぶんを取り戻さなければと仕事に向きあっていたとき、今度は、最愛の親友をがんで失った。
「その3年前、念願の起業を果たしていた彼女は『夢をかなえたから悔いはない』と笑って人生を終えました。私は生きながらえ、彼女は逝ってしまった。命拾いしたありがたさと大事な人を亡くしたやりきれなさ、そして夢を追う意味がない交ぜになりながら、今までと同じ生き方でいいわけがない、別の人生を歩んでみたいと強く思ったのです」
組織に期待される役割を全うするあり方から、いかに自分らしく生きるか。人生の焦点は大きく変わった。しかし実際は、会社をやめる踏ん切りがなかなかつかなかったという。
「結局数年かかってしまいましたね。仕事自体は本当に楽しかったし、気心の知れた仲間に囲まれ、手放すには惜しい収入もありました。今日、明日のことだけを考えれば、現状維持を選びたくなってしまう。でもある日、毎年恒例の会議中にふと、来年も再来年も、同じ場にいることを想像したとき、きっと自分は満足できないと直感したんです。その瞬間、ようやく決心がつきました」
会社をやめる決断をしたものの、次の道はすんなりとは決まらなかった。“やりたいこと探し”に行き詰まった渡邉さんは、同じように会社員を卒業して起業した先輩を訪ねた。
「何をしたらいいのか決められない、ということも含めて、現状を細かく説明しました。近い道をたどった経験者のアドバイスに耳を傾け、自分の思いを言葉にするうちに、やりたいことの解像度が少しずつ上がり、できたらいいなと考えていた事業が『これじゃない』と気づいて。結局、自分が自信をもって取り組めるのは、長く携わったマーケティングとブランディングだったんですよね。50代まで積み重ねてきた経験を、あえてリセットする必要はない。むしろ、その蓄積の中にこそ、次のステージにつながるヒントがあるのだと感じました」
立ち上げた「BEAT BRAND DESIGN」は、企業や個人事業者向けにブランド戦略やマーケティング支援などを行っている。恵まれた環境から転身してひとりで立つ現在地に、「めちゃくちゃ満足しています」と渡邉さんは笑う。
自分のペースで仕事を進められ、成果がよくも悪くもすべて自分に返ってくる。そのシンプルさを、生きやすいと感じているからだ。
「病気を経験して、体力的に無理なく働きたいという思いも独立を選んだ理由のひとつでした。組織にいれば、スケジュールひとつにしても周囲に合わせなければならないし、評価はやっぱり気になるもの。自覚はなかったけれど、どこか窮屈さを抱えていたのかもしれません。起業してからは『今日は仕事したくないな』と思う日が一度もないんです。これだけでも一歩踏み出してよかったな、と」
やらなかった後悔は一生残る。修正しながら進めばいい
同世代のキャリア女性の起業支援にも力を注ぐ。クライアントの「やりたい」「こうなりたい」という思いに伴走し、それがかたちになる瞬間が「最高に楽しい」という。決まりきったノウハウを押し付けるのではなく、これまでの歩みや考え方といった“根っこ”をていねいにヒアリングすることを信条にしている。
「『夢を追う勇気を応援する』。これがわが社のミッションです。別の生き方をしてみたい、もっとこういう仕事がしたい、それもその人の立派な夢。すでにキャリアも経験もある大人の女性が夢を追うのは、まわりが思う以上の勇気が必要です。成功の保証はなく、投資が必要な場面もあるでしょう。それでも、入口に立った人、立とうとしている人を、私は全力で応援したい」
人生の後半戦。現状維持を選ぶのもひとつの道。でも、このままでは満足できないと思うなら……。やりたいことの解像度を上げて動き出して、と渡邉さん。
「私自身そうでしたが、まじめに仕事をしてきた人ほど、『準備が整ってから』『資格をとってから』と考えがちです。でもそれは、踏み出す怖さをごまかす理由にすぎません。準備が完全に整う日は永遠にこないといってもいい。足りないまま始め、修正しながら進めばいいのです。たとえうまくいかなくても、それは後々必ず役に立ちます。一方で、やらなかった後悔は一生残ってしまう。『あのときやっておけばよかった』と思い続けて生きていくのは、とてもつらいことではないでしょうか」
人生後半をしなやかに生きる“不死鳥”を増やしたい
「親友のように、笑って死ねる人を増やしたい」と語る渡邉さんが、事業計画を練っていたころから温めているプロジェクトがある。その名も「100羽の不死鳥プロジェクト」……!
「前職で病気から復帰したとき、“不死鳥”と呼ばれるようになりまして(笑)。不死鳥は寿命を悟ると自ら火に飛び込み、灰の中から生まれ変わる架空の存在ですが、まさに私たちアラフィー女性が目ざすべきしなやかな生き方ではないかと。会社員なら定年が見え、フリーランスや主婦でも、なだらかな下り坂を進む世代です。そもそも人生はいつ幕を閉じるかわからない。その中で、新しい姿で羽ばたく不死鳥を一緒に伴走しながら増やしたい。それが今の私の夢でもあるのです」
一歩を踏み出すための、3カ条
1. やりたいことの“解像度”を上げる
2. 今日と明日だけを見ず、数年先を想像して
3. すべてが整う日はこない。“修正主義”でいく!
株式会社 タスカジ 代表取締役 和田幸子さん(50歳)
年齢と経験を重ねたのち、新たに事業を起こした起業家たちが歩んだ道のりに、挑戦のヒントが。株式会社 タスカジ 代表取締役の和田幸子さんが起業した理由とは。
家事シェアから家事ゼロへ。ハードルがあるから人生は楽しい
Profile
’99 富士通に入社。エンジニアとして業務システムの開発に携わる。
’05 企業派遣制度で大学院に留学し、MBAを取得。
’08 第一子出産。
’13 富士通を退職して起業。
'14 ITを軸とした家事代行の新サービス「タスカジ」をローンチ。
’23 シェアリングエコノミー協会理事に就任。
“自分を助けるため”が世の女性たちの救いにも
「女性が活躍しづらい社会への不満が、起業の原点だったのかもしれません。出産後、仕事と子育ての両立において家事が大きな負担となりましたが、当時は解決策がありませんでした。それで、家事を軽減できる仕組みを自分でつくろうと。事業としても可能性を感じました」
和田幸子さんがマッチング型の家事代行サービス「タスカジ」をスタートさせたのは’14年のこと。以来、料理の作り置きや整理収納など幅広いサービスをリーズナブルに提供し“家事シェア”を浸透させる立役者となった。
「利用者から『本来の自分を取り戻せた』『キャリアをあきらめずにすんだ』と多くの声をいただき、ハウスキーパーからは家事スキルが正当に評価されてうれしいと喜ばれました。自分の課題解決から出発した取り組みが世の女性たちの救いにもなって、やりがいを感じました」
学生のころから起業を視野に入れ、戦略的に富士通のエンジニア職に就くなど、先を見据えて歩んできた。それでも、「踏み出す怖さ」は今でもあるという。
「無意識の思い込みがブレーキにならないよう、定期的にコーチングを受けて自分と向き合う時間をつくっています。恐怖心の原因や本当の望みがクリアになれば、対処法や具体的な道すじを描けるので、納得感をもって前進できるんです」
昨年、創業から10年の節目を迎えた。大小さまざまな壁を乗り越えてきたぶん、スキルや視座が上がった実感をもつ。
「仕事にかぎらず、生きていれば常に問題は起こりますが、それこそが人生の彩りだと思うようになりました。これからなしとげたいのは、IoTデバイスやロボット技術を活用して家事をゼロにする仕組みを構築すること。知恵を絞ってハードルを乗り越え、実現させたいです」
和田さん自身、タスカジのヘビーユーザー。「日々、本当に助けられています。サービスをつくった、あのときの自分をほめてあげたい!」
一歩を踏み出すための、3カ条
1. 思い込みでブレーキをかけていないか振り返る
2. 恐怖心の原因や望みを明確にする
3. 困難も失敗も人生の彩りと考える
FUTURE FASHION INSTITUTE 株式会社 代表取締役 秋山和香奈さん(50歳)
年齢と経験を重ねたのち、新たに事業を起こした起業家たちが歩んだ道のりに、挑戦のヒントが。教育分野は未経験だった秋山和香奈さんが、中高生向けのキャリアデザインゼミ「FFi」で起業した理由とは。
よりよい未来のために。子供たちの成長が原動力
Profile
’97 大学在学中にフリーライターとして独立。ファッション誌を中心に活動。
’06 クリエイターエージェント「LOVABLE」を設立。
’07 第一子出産。
’20 「FUTURE FASHION INSTITUTE」を設立。
’21 中高生に向けたインターンシッププログラムを提供するキャリアデザインゼミ「FFi」 を本格始動。
フットワークの軽さが武器。運・タイミング・コネを大切に
子育てを機に教育に関心を深め、5年前から、中高生向けのキャリアデザインゼミ「FFi」を運営する秋山和香奈さん。ファッションや出版などの現場を訪ね、子供たちが仕事の“リアル”に触れられるプログラムを提供している。「仕事=我慢」という従来の価値観に違和感をもったことがきっかけだった。
「今の社会は、大学3年の就職活動でスペックを基準に“入れる会社”を選ぶのが一般的。でもそれでは自分の得意なことを生かせず、我慢して働くことにつながりやすいと思うんです。中高生のうちから多様な職業に触れ、いきいきと働く大人に出会う体験は、キャリア観を育むうえで大きな価値があるのではないかと」
大学時代からライターとして活動し、クリエイター事務所を設立した経験もある秋山さん。教育分野は未経験だったが、挑戦に迷いはなかったという。
「もともとフットワークが軽く、目の前の違和感や課題に対して、どう解決するか作戦を練るのが好きな性格で。起業にあたってはアクセラレーションをいろいろ活用し、学びながら、共感してくれる人を巻き込みながら、どうにかやってきました。子供たちの成長がなによりのモチベーション。若い世代にていねいに寄り添い、かかわっていけば、社会を前向きに変えていけると信じています」
いわく、「物事を緻密に計算して進めるのは苦手」。だからこそ、運とタイミングとコネクションを大事にしてきた。
「運はチャンスとも言い換えられますが、本来は誰にでも等しくめぐってきて、それに気づけるかどうかの差なのだと思っています。アンテナを張り、視野を広げて好奇心旺盛に。タイミングがきたら躊躇せず流れに身を任せる。それだけで、世界は大きく広がっていくはずです」
企業の課題にアイデアを出しあうグループワークや社員へのキャリアインタビューなど、中高生向けの多彩なプログラムを展開する
一歩を踏み出すための、3カ条
1. 身近な違和感を深掘りしてみる
2. 常にアンテナを張りチャンスを逃さない
3. やりたいことをまわりに話して巻き込む
読者に聞きました!
50代はまだ十分、“もう1ゲーム”楽しめる──。始めたい! 変わりたい! その気持ちをかたちにするためには? 一歩踏み出して人生を変えた3人のアラフィー起業家が具体的に回答。
※エクラメルマガアンケート50名の回答より
Q.いつか挑戦してみたいことはありますか?
Q.新たに挑戦してみたいことは?
「会社を立ち上げたい。自分がビジネスすることで、発達障害などでお仕事がしたくてもできないかたがたを少しでも雇用できたら」(49歳・自営業)
「自宅を開放し、地域の人が気軽に集まれる“花のサロン”を開きたい」(51歳・会社員)
「海外留学をしてみたい!」(47歳・主婦)
企業の課題にアイデアを出しあうグループワークや社員へのキャリアインタビューなど、中高生向けの多彩なプログラムを展開する
Q.一歩目を踏み出せない理由は?
「気持ちは前向きだが、時間や環境がなかなか整わない」(50歳・会社員)
「コロナ禍と更年期が重なって、気持ちと体に変化が押し寄せました。なんとなく不安になったり、おっくうになったり」(55歳・会社員)
「ただ漠然とした夢なので、何をどうしたらいいのかわからず……。」(54歳・自営業)
アラフィー起業家が経験をもとにアドバイス
やりたいことはあるけど、もう若くないから消極的になってしまう。そんなエクラ読者のリアルな声に、一歩踏み出して人生を変えたアラフィー起業家が経験をもとにアドバイス。
Q.何か新しいことを始めたい、このままではいけないという気持ちはあるのですが、 挑戦したいものが見つかりません。“目標”はどうやって見つけたらいいのでしょうか。
(48歳・会社員)
株式会社 BEAT BRAND DESIGN 代表取締役 渡邉和子さん
急いで目標を見つけるより先に自分の本当の気持ちを見つめてみて
「このままではいけないのではないか」という漠然とした不安が強いように感じます。目標を急いで見つけるよりも、まずは、なぜこのままではいけないと思うのか、ていねいに考えてみて。身近な人にモヤモヤを打ち明けてみるのもいい方法です。あいまいな気持ちを必死に言語化するプロセスにより、自分の本当の気持ちが整理されていき、やるべきことが見えてくると思います。
株式会社 タスカジ 代表取締役 和田幸子さん
第三者との対話を繰り返して自己理解を深めよう
自分を深く理解することが、最初の一歩だと思います。どんなときに幸せを感じるのか、何が得意なのか、この先をどんなふうに過ごしたいかなどを、細かく棚卸ししてみてください。私のおすすめはコーチングですが、ChatGPTなどのAIと繰り返し対話して自分自身の内面を掘り下げていくのも有効です。思考や行動を制限していた思いがけない理由が発見できるかもしれません。
FUTURE FASHION INSTITUTE 株式会社 代表取締役 秋山和香奈さん
自分の得意分野にヒントがあるかも。慌てずじっくり作戦を練ればOK!
慌てなくて大丈夫です。新しいことに挑戦したい!というマインドがある時点で、すでにスタートラインに立っています。よく「得意なことを3つ掛け合わせると、100万人にひとりの存在になれる」といわれます。そんな考え方をヒントにしてみては。私の場合は、解決したい課題に向き合うために、経験値の高い分野を軸に作戦を練っていった結果、やりたいことが自然と明確になっていきました。
Q.近い将来やってみたいことはあるものの、子育てや親のサポート、仕事に追われ、自分の時間が皆無です。一段落つくのを待つべき? 忙しくてもできることはありますか。
(52歳・会社員)
株式会社 BEAT BRAND DESIGN 代表取締役 渡邉和子さん
いくら待っても一段落つきません。少しずつやりたいことに触れる時間を
自分が元気で動けるうちに、完全に一段落つく日はこないでしょう。大きなまとまった時間がないと、新しいチャレンジができないと思われがちですが、そんなことはありません。せっかくやりたいことがあるのですから、その世界にかかわる時間を一日20分でもつくれるといいですね。コツコツ積み重ねていくことで、急に視界が開けて目標がぐっと近づくこともあるはずです。
株式会社 タスカジ 代表取締役 和田幸子さん
役割分担を見直して時間を確保し、小さなことから行動するべし
仕事も家族のケアも責任感のある人に集中しがちです。ひとりで抱えすぎていないか、まずは家族やチームで役割分担を見直すことから始めてみては。そのうえで、時間も金額も大きくかからない“小さな一歩”を踏み出してみて。私も興味のあることは小さく始めるようにしています。やってみて「違う」と思ったら方向転換すればいい。最小限のダメージで次につながる経験も得られますよ。
FUTURE FASHION INSTITUTE 株式会社 代表取締役 秋山和香奈さん
タイミングがきたら動けるはず。そのときまで、熱量をキープして
やりたい熱量をしっかり持続させておけば、「今だ!」というタイミングがきっと訪れます。そのときがきたら、どんなに忙しい状況でも、自分でどうにか調整して動きだせるもの。あまり心配しなくていいと思います。動きだすタイミングがこなかったら、そこまでの熱量ではなかったということ。ガチガチに計画を立てるのではなく、タイミングを逃さないようにアンテナは張っておきましょう。
Q.50代になり、体力や記憶力の衰えを感じる毎日。今さら新しいことなんてできないのでは……と尻込みしてしまいます。
(55歳・主婦)
株式会社 BEAT BRAND DESIGN 代表取締役 渡邉和子さん
これからが新しいステージ! “やらないこと”の見極めはしっかり
50代はまだ十分に“もう1ゲーム”楽しめる世代。「もう遅い」なんてあきらめることはありません。これまで仕事や家事に力を注いできた人こそ、これからは自分自身のために生きる「新しいステージ」ととらえてみてください。20代や30代のように、がむしゃらに突っ走ることはむずかしくても、50代ならではのやり方はいくらでもあり、長年の経験を通じて培った確かな判断軸も、若い世代にはない大きな強みです。無謀な挑戦にならないように「何をやるか」より「何をやらないか」をしっかり見極めることが大切になると思います。
株式会社 タスカジ 代表取締役 和田幸子さん
心身の不調はしっかりケアしてやりたいことだけをマイペースに
更年期世代特有の心身の乱れも影響しているのかもしれません。今はいい薬やサプリメントがあるので、しっかりケアをして改善されれば、気持ちも前向きになっていくのではないでしょうか。私自身、年齢を重ねるにつれ、仕事でも家庭でもできないことが増えてきたと感じています。残念ではありますが、そこは「まあいいか」と開き直り、自分ができること、本当にやりたいことだけにフォーカスすることにしました。「新しいことを始める」のはハードルが高いけれど、「やりたいことをマイペースにやる」くらいなら気負わず踏み出せそうです。
FUTURE FASHION INSTITUTE 株式会社 代表取締役 秋山和香奈さん
年齢なんて、ただの記号です。“先輩”の歩みも励みにして
私も物忘れが激しいので、気持ちはよーくわかります(笑)。年齢を理由に弱気になってしまうとき、私がよく思い浮かべるのは、ケンタッキーフライドチキンの創業者カーネル・サンダースのこと。彼が現在のようなフランチャイズ展開を始めたのは65歳のとき、しかも無一文からのスタートだったとか……! 身近な存在でなくても、“年上の先輩”が力強く挑んだ体験談は大きな励みになり、年齢による制約は社会がつくった既成概念にすぎないと気づかされます。何かを始めるのに遅すぎることはなく、各自のタイミングで動きだすのがベストです。
Q.新しく事業を始めるために資格をとり、 準備を進めています。起業には人とのつながりがとても重要だと思いますが、人脈の広げ方や信頼できる人の見極め方で何かアドバイスはありますか。
(50歳・自営業)
株式会社 BEAT BRAND DESIGN 代表取締役 渡邉和子さん
人脈は無理に広げない。「量より質」を意識したいところ
「人脈を広げよう!」と意気込んで得たつながりは、往々にして薄い関係にとどまりがち。私は人間関係を「量より質」と考え、少数でも信頼できる人たちと深く関わることを大切にしてきました。相手に誠心誠意向き合い続けることで人の輪が広がり、必要なご縁につながっていった実感があります。私が人を見極める際、ポイントにしていることは3つ。まずは、締め切りや時間などの約束を守ること、そして、誰に対しても態度が変わらないこと、最後に、困難な状況から逃げないこと。人間性は意外と小さなところに現れるものなんですよね。
株式会社 タスカジ 代表取締役 和田幸子さん
“旗”を立てて、仲間を集めよう。大切なのは、個性より誠実さ
起業に必要なのは、自分のやりたいことを支えてくれる人脈。よく「旗を立てる」といいますが、自分の思いやなしとげたいことを積極的に言葉にしていくことで、興味をもつ人や応援してくれる仲間が集まってきます。信頼できる人のポイントは、相手の話をていねいに聞き、意図や期待を汲み取ろうとする姿勢にあると思っています。起業の世界では「独自の視点」や「個性」が注目されがちですが、実際に事業を進めるうえで欠かせないのは、誠実さです。人としてあたりまえのことをきちんとできる。その人柄こそ大切なのだと感じています。
FUTURE FASHION INSTITUTE 株式会社 代表取締役 秋山和香奈さん
まずは自分が信頼されること! 同じ志の人と出会える学びの場も活用
事業を始めるとき、味方が多いほど心強いです。そのためには日ごろから、自分自身が信頼される存在でいることが重要です。それを意識したうえで、いろいろな勉強会に参加してみるのもおすすめ。例えば、東京・有楽町にあるスタートアップの支援拠点「Tokyo Innovation Base」の無料セミナーに参加したり、国や自治体、企業などが主催するアクセラレーション(スタートアップの支援プログラム)を受講してみたり。こうした場所では同じ志をもつ仲間たちと出会えます。切磋琢磨しながら、表面的ではないコアな関係を築いていけると思います。
一歩踏み出すためのお役立ち情報
50代、新たに挑戦してみたいことがある人に。「学び直し」の場や、「起業」にまつわる相談先など、気持ちをかたちにして、一歩目を踏み出すためのお役立ち情報をまとめ。
学び直し
日本最大級の動画学習サービス「gacco」
大学教授や専門家による本格的な講義を、原則無料で受講できるオンライン動画学習サービス。簿記や統計学などのビジネス関連から、防災学や心理学などの教養まで、幅広い講義をラインナップ。多くの講義動画は1回につき10分程度にまとめられているため、スキマ時間に学ぶことも!
講座によってはディスカッションや課題提出といった双方向の学びも可能で、所定の基準を満たすと修了証が発行されるのもうれしい。
学びたいことを探せる支援サイト「マナパス」
文部科学省が運営する、リカレント教育やリ・スキリングに役立つ情報を集めたポータルサイト。社会人が受講できる約1000件の大学・大学院・専門学校・民間講座の情報を検索できるほか、修了者のインタビューを通じて自分に合う学びのロールモデルを見つける手助けに。
さらに、補助金や支援制度の紹介も充実しており、キャリアアップや転職に必要な情報を効率的に得ることができる。
資格取得のための心強い味方!「教育訓練給付金」
働く人の学び直しを費用面から支える国の制度。雇用保険の被保険者や離職者が対象となり、一定の条件を満たせば、資格取得やスキルアップのために受講した講座の費用の一部が支給される。
簿記検定、T O E IC、宅建士、ITパスポート、FP技能検定、保育士などの多様な講座が対象で、給付率は講座のレベルなどによって異なり、20%(上限10万円)から最大で80%(年間上限64 万円)。ハローワークで手続きが必要。
起業
起業の不安をプロに相談できる「TOKYO創業ステーション」
東京都中小企業振興公社が運営する創業支援施設。都内の創業者と起業を予定している人にさまざまな支援メニューを提供する。起業のアイデアをブラッシュアップできる「コンシェルジュ起業相談」や事業計画書の作成をサポートする「プランコンサルティング」をはじめ、無料のセミナーやイベントをほぼ毎日開催。
55歳以上のかたを対象としたビジネスグランプリも実施している。起業に興味がある人は、一度訪ねてみては。
あらゆる挑戦者を応援する結節点に「Tokyo Innovation Base」
東京都が’23年に設立したスタートアップの一大支援拠点。広大なスペースを備え、国内外の起業家や支援者が集う「イノベーションの結節点」として機能している。
製品開発を支援する設備や試験販売ができるショップ、人と人をつなぐ交流スペース、トップ経営者によるメンタリングなど、多彩なプログラムを提供し、アプリ登録で誰でも入場が可能。あらゆる挑戦者がアイデアを磨き、事業を成長させる環境が整っている。
撮影/大木慎太郎 目黒智子 取材・原文/熊坂麻美 ※エクラ2026年2・3月合併号掲載