この春は、京都で歌舞伎を楽しもう!今年3月の最注目は、京都・南座の『曽根崎心中物語』。“リアル『国宝』”ともいえる今回の公演。世話物の名作を中村壱太郎と尾上右近が現代に蘇らせる。
──おふたりは仲よしであると同時に、お互いを舞台で輝かせることができるパートナーでもあります。どんなところに相性のよさを感じますか?
右近 演じていて感情が高まるポイントが一緒なんだと思う。「来た~~!!」みたいな(笑)。
壱太郎 なるなる(笑)。
右近 お稽古のときも「やっぱここの場面好き」「俺もめっちゃ思った」って会話をよくしてるし。
壱太郎 ケンケンは伝えたいことがはっきりしてるよね。昨年、歌舞伎座でやった忠信も「こういう忠信をやりたい」というのがはっきりわかった。何もない人って何も伝わらないんですよ。でも、ケンケンは「この場面が、このセリフが大事なんだ」というところが明確に伝わってくる。そこが尾上右近の一番すごいところだと思う。
右近 うれしい。僕が壱さんをすごいと思うところは、とにかく細部にいたるまでこだわってつくるところですね。自分の体の表現にとどまらず、衣裳、鬘(かつら)、小道具、音。勉強家でなんでも知っている。「歌舞伎界のさかなクン」と呼んでます(笑)。
壱太郎 あははは!
右近 そして忘れてないから。第一回目の南座『三月花形歌舞伎』で『義経千本桜』をやることになったとき、壱さんが「僕が女方に回って静御前をやるから、ケンケンが忠信をやって」といってくれたこと。座頭自らサポートする側に回るって、どれだけ懐が深いのかということですよ。
壱太郎 その前に『研の會』(右近さんの自主公演)で、一緒に『封印切』や『二人椀久(ににんわんきゅう)』をやったときの信頼関係があったからだと思うけどね。
右近 ここで忠信をやっていなかったら、今の僕はいないと思っているので、本当に感謝してる。
壱太郎 いやいやいやいやいや。
右近 いやいやじゃなくて、そうなんです!(笑)だから壱さんと何かやるときは、まさに心中する覚悟だし、本音でぶつかるし。
──おふたりがアツアツなのは、よくわかりました(笑)。では最後に皆さんへメッセージを!
壱太郎 今回、南座ではいろいろな仕掛けを用意しています。特典グッズはもちろん、絵馬をメッセージボードにしたり、テーマパークっぽくなっているんですよね。
右近 それとお客さまには公演とともに京都の街も楽しんでいただきたいですね。
壱太郎 3月の京都、すごくいいんです。桜満開の時期ほど混んでないし。鴨川のあたりをお散歩するだけでもいいと思います。
右近 3月はぜひ京都にいらしてください
昨年の右近さんのお誕生日に壱太郎さんがプレゼントしたミニチュアの手獅子。仏師の江場琳觀氏制作。ちゃんと指が入るのもすごい
’18年、右近さんの自主公演で踊った『二人椀久』の稽古中。これで絆が深まった
楽屋でも仲よしなふたり 撮影/尾上右近
花形歌舞伎 特別公演
劇場:南座
上演期間:’26年3月3日(火)~ 25日(水)
深く愛しあう遊女・お初と醤油問屋の手代・徳兵衛。しかし徳兵衛には、お初を身請けする金はないうえに、友人にだまされて無実の罪を着せられる。お初はこの世では結ばれないことを悟り、死ぬ覚悟を徳兵衛に迫る……。江戸時代に実際に起きた心中事件をもとに近松門左衛門が書いた世話物の名作を中村壱太郎と尾上右近が現代に蘇らせる。
撮影/酒井貴生(aosora/人物) 伊藤 信 福森クニヒロ 内藤貞保 ハリー中西 取材・文/佐藤裕美 西村晶子 天野準子 ※エクラ2026年4月号掲載