立ち居振る舞いや姿勢がその人を象徴するように、ものの選び方、使い方にも信念や精神が表れる。価値を見極め、ていねいに付き合い続けていく持続可能なその力で、周囲と社会をよりよいほうへ。しなやかなリーダー、ミーレ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 冨田晶子さんの歩みは、タフで、そして美しい。
ミーレ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 冨田晶子さん
最新モデルがそろう表参道の直営店で。この日着用のシルクのブラウスも自宅で洗濯機洗い。「2年たっても風合いが変わりません」
profile
’96 津田塾大学国際関係学科卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社しアパレル部門勤務。
’04 外資系・日系アパレル会社で、マーチャンダイジングマネージャー、ディレクターを歴任。
’12 日本ロレアル株式会社 Club Créateurs Beauté事業部長に就任。
’15 オットージャパン株式会社 オットー事業部門長を経て、同社取締役兼COO。
’20~ 現職。
修理しながら大事に使う。その精神を、家電にも
台所がキッチンに変わり、風呂場の片隅にあった洗濯スペースは使いやすいランドリールームへ。生活様式や住空間の進化によって、その性能とデザインに憧れを覚えた海外の生活家電は、私たちにとって身近なものになりつつある。
125年を超える歴史を誇るドイツのミーレは、その筆頭ともいえるブランド。日本法人が設立されて今年で34年、現在トップを務める冨田晶子さんも、製品の性能とストーリーに魅せられたひとりである。
「家電は壊れたら買い替えるものだと思っていましたが、ミーレはメンテナンスをしながら長く使い続けるのがあたりまえであるという価値観。20年の使用を想定したものづくりと厳しい製品検査が徹底されています。ミーレからのオファーを受けた際、顧客の中には長く使っていたオーブンを結婚する孫に譲りたいと申し出るかたもいるのだと聞き、そのサステイナビリティに驚かされました」
もともとは生乳からバターを製造する分離機から出発したミーレ。撹拌(かくはん)の原理を利用した洗濯機に続き、掃除機、食器洗い機と、堅牢さと豊富な機能、そして美しく暮らしにフィットする家電を数々生み出し、世界に広めてきた。
対して、商社を皮切りにアパレル、コスメティック業界で順調にキャリアを積んできた冨田さんにとって、家電は初のジャンル。商社でB to B(Business to Business・企業間取引)に携わり、B to C(Business to Consumer・対顧客取引)の経験も積んだ中で、その両方をマネジメントするミーレでの挑戦を決意した。
「トップになりたいという強い思いがあったわけではなく、最初は『本当に私にできるの?』という迷いも感じていました。でも、日本も、ものを修理しながら大事に使う伝統のある国。同じ考えが、家電にもきっと通じるはずだと信じて」
そしてなにより、ブランドが世紀をまたいで女性の家事労働の軽減に貢献してきたことに、働く女性のひとりとしてシンパシーを感じたことも、背中を押した。
「日本の女性はもともと家事労働の負担が多いうえに、現在は仕事でも活躍の場が広がっている。そして、責任が増す年代と、女性特有の体調変化が起こりやすい時期がちょうど重なるんです。自分でも今、更年期を迎えて実感するのは、心身ともに健康であることの大切さ。まず自分の体と心を大事にしなければ、家族や仕事仲間を幸せにすることはできないし、社会に対しても貢献できませんよね。ですから、家事は頼れる家電にもっと任せて、無理をしないように」
誰もが健やかに、仕事と人生を楽しめるように──専門家の知見も借りながら健康経営を実践している冨田さん。時間を見つけては職場でランチ会を開催し、仲間とミーレのオーブンで作ったできたての昼食を味わう、そんなひとときに喜びを感じているという。
「仕事は、一日の中で最も時間を使う自分の生活を支える背骨。そこでさらに成長したいですし、幸せにもなっていきたい。私も、たとえ困難があっても負けずに前進していきたいと思います」
グリルチキン、サフランライス、茶碗蒸し、低温加熱したサーモンとクリームチーズを合わせたペーストは、すべてミーレのオーブンで
母から譲り受けたラドーの時計は、亡き父が結婚の際に贈ったもの。「修理しながら大切に使っています」
「一度に複数の料理を、オーブン任せで作れます。子育て中のかたにも、これから夫婦ふたりの生活に戻るかたにも、きっと頼りになるはず」と冨田さん
motto
困難が続く局面でこそ冨田さんが発揮するのは「グリット力(やり抜く力)」。「しかも、ちょっと楽しみながら……チームでやり抜くためには、その工夫が必要だと思っています」。
photography:Tomoko Meguro hair& make-up:Miho Kanesawa(MAKEUPBOX) text:Michiko Otani ※エクラ2026年4月号掲載
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