”混んでいる”といわれて久しい京都。通い慣れている人ほど、時間帯や場所を選んで”ほんまもんの京都”を味わっている。しかもあれこれ欲張らず、主目的はひとつ!のほうがより深い味わいの旅に。
中村壱太郎×尾上右近 インタビュー
今年春の京都の目玉といえば、中村壱太郎さんと尾上右近さんが出演する南座3月の花形歌舞伎特別公演『曽根崎心中物語』。遊女のお初と恋人の徳兵衛の悲恋を描いた近松門左衛門の代表作だが、今回ふたりはお初と徳兵衛を役替わりのダブルキャストで演じる。大胆な挑戦は、若いながら芸に秀で、切磋琢磨してきたふたりだからこそできること。揺るぎない信頼関係で結ばれた彼らがつくり上げる情熱の物語とは。
──『曽根崎心中』は、かつて壱太郎さんの祖父・坂田藤十郎さんがお初を演じて一大ブームとなった成駒家にとって大切な演目です。’24年2月には、松竹座でお初・壱太郎さん、徳兵衛・右近さんで演じられていますが、壱太郎さんの徳兵衛、右近さんのお初は今回が初役ですね。
壱太郎 今年で6回目になる南座3月の花形歌舞伎は、平成世代の若手で幕を開ける公演で、毎年ダブルキャストや役替わりをやっているんです。今回のように恋人同士の役替わりは珍しいことですけれど、徳兵衛を演じることで、お初の見方もまた変わってくると思うので楽しみですね。
右近 僕は子供のころ、藤十郎のおじさまにかわいがっていただいた思い出があって、おじさまが『封印切』をされたときには舞台袖で25日間、拝見したこともありました。だからお初もいつかやってみたいとは思っていましたけれど、「部外者で、しかも江戸っ子の僕が上方の役をやるのはどうなの?」って思っていたし、「うちの畑は、うちで耕すから大丈夫」っていわれても仕方ない状況で。でも、壱さんはいつも「やろうやろう」っていってくれて。
壱太郎 それは僕自身が遊牧民的に生きているからじゃない? 例えば僕が江戸の花魁の揚巻(『助六由縁江戸桜』に登場する女方の大役)をやるなんて思ってもみなかったけど、(市川)團十郎のお兄さんが南座での襲名披露で抜擢(ばってき)してくださったり。本当にいろいろなかたの相手役をさせてもらっているんですね。それが自分の役者観に影響していて、自分の家とは関係ない作品でも「自分でやるならどうやるだろう」という目で見るようになった。逆に自分の家の芸を誰かがやったからといって何かが変わってしまうとも思わないし。むしろ新しい発見があるんじゃないかと思ってケンケンを見てますね。
──江戸と上方の歌舞伎はかなり違うんですね。
右近 僕は音羽屋の人間で、音羽屋はカチッと型通りにやることを大事にするから、子供のころ、上方歌舞伎を見たとき、衝撃を受けました。ゆるさとかぬくもりがあって、お客さまとの距離感も近い。型はあるけれど、様式でアプローチするというより、心でアプローチする感じ。
壱太郎 そう、「情」だね。そこが本当に強い。だから感情だけじゃなくて、その人の匂いとか体温が伝わるような芝居になるんだと思う。
右近 だけど考えてみたら、歌舞伎の世界って、常に「先人たちとのダブルキャスト」かも。
壱太郎 そういう山を越えていくしかないんだね。
──『曽根崎心中』は、映画『国宝』でも話題になりました。壱太郎さんは踊りや演技の指導もなさったそうですが、「ほんまもんが見れる!」と劇場に足を運ぶお客さまも多いでしょうね。
壱太郎 それもあって、今回は父(中村鴈治郎)が『曽根崎心中“物語”』として、新たなかたちで監修を務めます。テンポよく、よりテーマがわかるような演出で、お初と徳兵衛の愛、壱太郎と右近の愛、歌舞伎への愛……すべてがつまった物語になっています。
右近 上演時間も短くなっているよね。とはいえ、3回公演の日もあるので、これはキツい。
壱太郎 ケンケンが言い出したことだけどね(笑)。お初・徳兵衛・お初。もしくは徳兵衛・お初・徳兵衛。3回目はどんな気持ちになるのか。
右近 お初と徳兵衛が溶けて合体して、違うキャラクターになってるかも(笑)
──おふたりは仲よしであると同時に、お互いを舞台で輝かせることができるパートナーでもあります。どんなところに相性のよさを感じますか?
右近 演じていて感情が高まるポイントが一緒なんだと思う。「来た~~!!」みたいな(笑)。
壱太郎 なるなる(笑)。
右近 お稽古のときも「やっぱここの場面好き」「俺もめっちゃ思った」って会話をよくしてるし。
壱太郎 ケンケンは伝えたいことがはっきりしてるよね。昨年、歌舞伎座でやった忠信も「こういう忠信をやりたい」というのがはっきりわかった。何もない人って何も伝わらないんですよ。でも、ケンケンは「この場面が、このセリフが大事なんだ」というところが明確に伝わってくる。そこが尾上右近の一番すごいところだと思う。
右近 うれしい。僕が壱さんをすごいと思うところは、とにかく細部にいたるまでこだわってつくるところですね。自分の体の表現にとどまらず、衣裳、鬘(かつら)、小道具、音。勉強家でなんでも知っている。「歌舞伎界のさかなクン」と呼んでます(笑)。
壱太郎 あははは!
右近 そして忘れてないから。第一回目の南座『三月花形歌舞伎』で『義経千本桜』をやることになったとき、壱さんが「僕が女方に回って静御前をやるから、ケンケンが忠信をやって」といってくれたこと。座頭自らサポートする側に回るって、どれだけ懐が深いのかということですよ。
壱太郎 その前に『研の會』(右近さんの自主公演)で、一緒に『封印切』や『二人椀久(ににんわんきゅう)』をやったときの信頼関係があったからだと思うけどね。
右近 ここで忠信をやっていなかったら、今の僕はいないと思っているので、本当に感謝してる。
壱太郎 いやいやいやいやいや。
右近 いやいやじゃなくて、そうなんです!(笑)だから壱さんと何かやるときは、まさに心中する覚悟だし、本音でぶつかるし。
──おふたりがアツアツなのは、よくわかりました(笑)。では最後に皆さんへメッセージを!
壱太郎 今回、南座ではいろいろな仕掛けを用意しています。特典グッズはもちろん、絵馬をメッセージボードにしたり、テーマパークっぽくなっているんですよね。
右近 それとお客さまには公演とともに京都の街も楽しんでいただきたいですね。
壱太郎 3月の京都、すごくいいんです。桜満開の時期ほど混んでないし。鴨川のあたりをお散歩するだけでもいいと思います。
右近 3月はぜひ京都にいらしてください
昨年の右近さんのお誕生日に壱太郎さんがプレゼントしたミニチュアの手獅子。仏師の江場琳觀氏制作。ちゃんと指が入るのもすごい
’18年、右近さんの自主公演で踊った『二人椀久』の稽古中。これで絆が深まった
楽屋でも仲よしなふたり 撮影/尾上右近
花形歌舞伎 特別公演
劇場:南座
上演期間:’26年3月3日(火)~ 25日(水)
深く愛しあう遊女・お初と醤油問屋の手代・徳兵衛。しかし徳兵衛には、お初を身請けする金はないうえに、友人にだまされて無実の罪を着せられる。お初はこの世では結ばれないことを悟り、死ぬ覚悟を徳兵衛に迫る……。江戸時代に実際に起きた心中事件をもとに近松門左衛門が書いた世話物の名作を中村壱太郎と尾上右近が現代に蘇らせる。
中村壱太郎さんの「京のお気に入り」スポット
早朝の鴨川
朝は最高の時間帯。川沿いを歩くとすがすがしい気持ちにリフレッシュ
動植物の多様性でも知られる鴨川。春は半木の道をはじめ桜もあちらこちらに。鷺や鴨なども美しい。「京都はとにかく街並みが好きです! また季節を感じることができる木々がいいですね」
東華菜館
味も空間も変わらない京都滞在中のなくてはならない一軒
四条大橋のほとりにたたずむ国内唯一のヴォーリズ建築のレストラン。戦後の創業以来、伝統的な北京料理を軸にするコース(¥6,000〜。税・サ別)と一品料理を提供し、春巻き(¥2,200)は根強い人気。「お店と南座をロープでつないで出前をしてほしいと願うくらい、よくいただきます」。
京都市下京区四条大橋西詰
☎075・221・1147
平日11:30~14:30LO、17:00~21:00LO、土・日曜、祝日11:30 ~ 21:00LO
不定休 3月6日まで改装休業
タナカコーヒ 河原町店
アルバイトしていた思い出と重なるサイフォンでいれるコーヒー喫茶
’74年創業の京都屈指の老舗珈琲店。サイフォンで入れる香り、酸味、甘味のバランスがいいオリジナルコーヒーと純喫茶らしい軽食が評判。街中にありながら60席と広く、「ひとりでも入りやすい雰囲気で仕事がはかどる場所です」。
ハム&卵のホットサンド¥990、特製ブレンドコーヒ¥682。
京都市中京区河原町通三条下る4筋目東入る北車屋町267
☎075・223・0524
9:00〜18:00LO(土曜20:00LO)
無休
全席喫煙可
村上重本店
京都みやげのお漬け物といえばこちら
日常の上質な逸品がそろう
四条河原町に店を構える江戸時代後期創業の老舗漬物店。素材の持ち味を引き出す品のある味つけに定評があり、春夏秋冬の野菜を生かした漬物を年間50種類ほどそろえる。「おみやげはお漬物にすることが多く、いつも村上重さん」。春限定の菜の花漬(¥540)はおひたし感覚で楽しめる。
京都市下京区西木屋町四条下る船頭町190
☎075・351・1737
9:00〜18:00
無休(元旦から3日を除く)
尾上右近さんの「京のお気に入り」スポット
夜の円山公園
Photo:田中秀明/アフロ
俳優仲間と訪れるお花見スポット。圧巻の枝垂れ桜を堪能
公園中央にある「祇園の夜桜」。園内には650本もの桜が咲き、桜の時期は22時ごろまでライトアップも。「3月の花形歌舞伎のとき、劇場からも近いですし、出演者と枝垂れ桜を堪能します」
宮脇賣扇庵
ふだん使いから稽古、舞台用まで。信頼して選べるお店
京町家の静かなたたずまいの中に、日常使いの扇子から美術性の高いものまでそろう、江戸後期創業の専門店。贈答や装いの小物として選ばれることが多く、客層は地元の目利きから、日本文化に深くかかわる来訪者まで。「扇子は私たちにとってとても重要で、稽古用も舞台用も宮脇さんです」。
京都市中京区六角通富小路東入る大黒町80の3
☎075・221・0181
10:00〜18:00(夏季〜19:00)
無休
コーヒーショップ ナカタニ
舞台の合間の軽食はここ。さりげない気遣いがうれしい
観光客の多いエリアにありながら、昔から地元の人や日本伝統文化にかかわる人たちが贔屓にする純喫茶。食べやすいように小さくカットされたサンドイッチはテイクアウトもでき、「南座に近く、観劇の前後にサクッと食べるにもおすすめです」。ミックスサンド¥1,100、バナナジュース¥900。
京都市東山区廿一軒町236鴨東ビル1F
☎075・525・0823
9:00〜16:00(不定)
不定休
全席喫煙可
祇園権兵衛
子供のころから慣れ親しんだ変わらぬ味と雰囲気
昭和2年創業の祇園の食文化を支える老舗で、だしを重視するうどんやそば、丼ものを風情ある小上がり座敷で楽しめる。「子供のころから通っているお店で、ざるそばと親子丼を必ず食べます。女将さんがとても優しく、ここに来るとほっとします」。ざるそば¥1,300、親子丼¥1,900。
京都市東山区祇園町北側254
☎075・561・3350
11:30〜14:40LO、17:00〜19:40LO(土・日曜、祝日11:30〜19:40LO)
定休日:木曜
帝国ホテル×京都 最上質のステイ
3月に開業する『帝国ホテル 京都』。祇園甲部×帝国ホテルという最強の組み合わせは、すべてが日本の新しい上質を極めている。このステイだけでも行く価値あり!
祇園川上の京朝食という新しい贅沢
祗園甲部の紋章の”つなぎ団子”をあしらった行灯形の二段重で供される「祇園川上」の朝食。料理や器、膝かけは季節や歳時で替わる
花街の華やかさと伝統が静かに息づく京都・祇園に今年3月『帝国ホテル京都』がオープンする。その舞台となるのは、歴史的建造物で、この街の記憶を長年培ってきた弥栄(やさか)会館。外観の風情をそのまま残す本棟と新たに増築した北棟からなり、土地がもっている時間や気配をそっと整え、継承する場をつくっている。
客室やラウンジは、新素材研究所による希少な素材を用いたデザインが空間を彩り、くつろぎとともに感性が研ぎすまされる。特に大谷石をはじめとした名石使いは必見。地元の名店「祇園川上」が担う和食も象徴的だ。京都の人が日々を整えるための体に優しい料理が供される。一日の終わりには「オールドインペリアルバー」へ。カウンターからは東山や比叡山を望み、格式あるバーが祇園の夜にしっとりとなじむ。
これまで積み重ねてきた感性を、静かに体感できる場所である。
和朝食の締めのにんじんジュース
美山町の「静家」の豆乳
美しく整えられた日本庭園を一望する宿泊者ラウンジ
アール・デコの多角形デザインを思わせるオリジナル家具
比叡山を望む「オールドインペリアルバー」
帝国ホテルの品格を受け継ぐ「オールドインペリアルバー」
客室は全55室。奇をてらわず、過去と歩調を合わせて整えられた空間
祇園甲部歌舞練場に隣接
客室に帝国ホテル初の畳を導入
奈良県 吉野にある水分神社の樹齢1000年以上の欅を使用
帝国ホテル 京都
京都市東山区祇園町南側570の289
電話 075・531・0111(開業まで月〜金曜10:00~17:00)
1泊1室2名¥177,100 〜(室料のみ。税・サ別)
チェックイン15:00 ~、チェックアウト12:00〜
https://www.imperialhotel.co.jp/kyoto
最旬、春の穴場はここ!
「混んでいる」といわれている京都も、実は時間や場所を選べば、意外なほどに静か。深夜でも落ち着いて過ごせる穴場店をご紹介。
しんや食堂おがわ
深夜の西木屋町
高瀬川に沿う木屋町通は、観光客、地元客問わず、夜の散策に人気の繁華街。けれど、その喧騒から一本西へ入った西木屋町には少し異なる夜の時間が流れている。割烹、居酒屋、バーが軒を連ねるも派手な看板はなく、行き来する人の足どりもゆっくり。暮らしの延長線上の京都の夜をのぞき込む入口のような場所だ。
その空気を象徴する存在が上質な和食を親しみやすく提供する「食堂おがわ」。予約困難なお店だが、近くにはふらりと立ち寄れるカジュアルダイニングの系列店「オテル ドゥ オガワ」があり、この春には新たな姉妹店『しんや食堂おがわ』がオープンする。21時オープンなので、遅がけの食事をゆっくり楽しめ、にぎわいから距離をとりたい夜にもぴったり。ちょうどいい余白を用意して待ってくれている。
「食堂おがわ」が手がける、うどんを中心に、とびきりおいしいお酒とおつまみも楽しめる新店。おがわに長く勤める熊木慎也さんが迎えてくれる。予約不要。4月ごろオープンの予定。
DATA
京都市下京区船頭町224
21:00 ~閉店未定
定休日:月曜
お花見弁当&和菓子の新しいカタチ
この時期にしか味わえないお弁当。桜の下で味わうのもよし、ホテルのお部屋でもよし。一瞬の楽しみを自由に堪能したい。
ひがしやま 司
伝統的な京料理を基盤にしつつ、店では供さない八寸の技や和型に縛られない発想を取り入れた「行楽弁当」¥5,000。定番のだし巻きや銀ダラ西京焼き、春の趣(おもむき)の小袖寿司や筍ごはんに、山椒醤油味の鰻フライ、中華味の海老と椎茸の重ね揚げ、ごまを衣にした鶏利休揚げなどの多彩な味をひと折にていねいに詰め合わせている。1 階の「コノシマビール」でいただくことも可。
DATA
京都市東山区西町127三条白川橋ビル2F
電話 075・771・4696
定休日:日・月曜
2個から受け付け。3日前までにDMか電話で要予約。
11:30から店頭か1階の「コノシマビール」で受け取り。
近野(こんの)
京都の粋客が好む、けれん味を排して奇をてらわない、質実な京料理を盛り込んだ春限定の「松花堂弁当」¥5,400。店で出す料理の延長線上にある一折ととらえ、鯛とマグロの向付、だし巻きや焼き物、あえ物などの口取、炊き合わせ、ごはんで構成される。コースを凝縮したような充実感があり、高い美意識が伝わってくる。
DATA
京都市東山区大和大路通松原下る弓矢町38
電話 050・1722・4531
定休日:月曜
3/22〜4/30限定。3日前までにテーブルチェックで要予約。
弁当は12:00から店頭で受け取り。
御菓子丸喫茶
独創的な和菓子ブランド「御菓子丸」による予約制の喫茶。「食とアートの融合」を掲げる空間で4種類の菓子と3種類のドリンクからなる月替わりのコース¥8,025を提供する。野草や果実で新たな味や香りを表現し、春には木の芽入りの"麩の焼き”「葉まくら」、よもぎを練り込んだきんとん「薬玉」を楽しめる。
DATA
京都市中京区室町通二条下る蛸薬師町287 IDO 1F
11:00、13:30、15:00
各一斉スタート
定休日:月〜金曜
DMにて要予約。
Instagram:@okashimaru_
好和(このわ)
茶席用の主菓子を手がける西陣にある和菓子店。人気の菓子司「聚洸」で培った基礎を大切にし、甘さを抑えた切れのよいあんと、はんなりとした色みや軟らかな口当たりを重んじている。手前から、外郎(ういろう)であんを包む「花見団子」¥470、春近い雨を表現した「催花雨(さいかう)」¥450、満開の桜を思わせる「春酣(はるたけなわ)」¥460。
DATA
京都市北区紫野下柏野町16の5
11:00 ~夕方まで(売り切れしだい閉店)
定休日:日〜木曜
DMにて前日までに要予約。
Instagram:@konowa_gashi
私のとっておき"穴場な京都”
東京で活躍しつつも、京都に通い詰める彼女たちが求めるものとは?この春のとっておき、最旬のお気に入りを聞いた。
琵琶湖疏水めぐり
トラベルライター・坪田三千代さんのお気に入り
琵琶湖から水を引いた「琵琶湖疏水」は、長年、京都の物流と景観を育んできた水路。「京都には、明治以後に造られたモダン建築が数々ありますが、それらができたのも疏水があったから。蹴上から山科や三井寺、大津までの疏水を航行する『びわ湖疏水船』も多くの見所と学びが。春は蹴上インクラインから眺める桜がフォトジェニックで絶景。早朝がおすすめです」。
歴史的建造物の旧御所水道ポンプ室を船上から間近に楽しめる
毘沙門堂の参道にかかる安朱橋周辺は菜の花やソメイヨシノが咲き誇る花の名所
水の道を移動する体験そのものが特別。陸路では味わえない静かな疏水の流れと明治のロマンを体感できる
びわ湖疏水船は春秋の期間限定運航。びわ湖・大津港便、三井寺便などがある。
Data
びわ湖疏水船受付事務局
電話 075・365・7768
定休日:土・日曜、祝日
詳細・予約はbiwakososui.kyoto.travel
酒陶 桺野
「ヌキテパ」ディレクター・神 真美さんのお気に入り
「毎春、友人が運営に携わっているKYOTOGRAPHIEを訪れ、新しくも深い刺激をもらっています。滞在中に必ず立ち寄るのがバーの『酒陶 桺野(しゅとうやなぎの)』。食前はスッキリとしたジントニックを、遅い時間にはお料理もいただきます」。土壁に囲まれた空間に季節の花を飾るしつらえは、茶室のような趣。アートの余韻に浸るのも会話を楽しむのもここでは自由。どこまでも続くような庭のある個室や器選びにもセンスが感じられる。
季節でジンの銘柄が替わるジントニック¥1,200。グラスはアンティークで、お客ごとに異なる。
Data
京都市中京区三条通新町西入る
電話 075・253・4310 17:00 〜24:00
無休(木曜はドリンクのみ)
KYOTOGRAPHIE
「ヌキテパ」ディレクター・神 真美さんのお気に入り
What I Do To Please You I Do, 1981-2008
© Linder, Courtesy of the artist and Modern Art, London
今年14回目を迎える「KYOTOGRAPHIE」は、京都を拠点に、毎年春に開催される国際写真祭。京都の文化空間である町家からギャラリー、博物館、寺院にいたるまでが会場となり、写真表現の深さと広がりを多角的に体験できる。会期は4月18日〜5月17日。
Data
KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭
www.kyotographie.jp
COIMO WINE
フードライター・佐々木ケイさんのお気に入り
店がある一乗寺は街中から少し距離はあるが、気になる店が点在するエリア。ナチュラルワインバーのここもその中の一軒。店主の高橋順子さんは元パティシエで、タイに10年滞在後、’22年に開店。「さまざまな土地の要素がミックスされたおつまみが肩の力が抜けていて、かつクリエイティブ。15時から営業で、明るく静かな時間がとてもいいです」。姉で写真家の高橋ヨーコさんの作品を飾り、まるでギャラリーのような空間。近くの書店「恵文社一乗寺店」も格別に楽しい。
赤ワインと好相性の甘じょっぱい「パルミジャーノのプリン」¥700
昼飲みができ、カフェとしても利用可能
スパイスやハーブを効かせた、「日替わりのおつまみ3点盛り」¥750。「菜の花のマスタード和え、きのこのクミン風味、山芋山椒和え」。グラスワイン¥800 〜
Data
京都市左京区一乗寺払殿町38の3 パールハイツ1D
電話なし
15:00~22:00LO(木曜は16:00~)
定休日:火・水曜(不定休あり)
柏屋光貞
「OVUNQUE」 代表・古澤千恵さんのお気に入り
「京都は毎月通っていますが、時間がかぎられているときは通りを決めて歩きます。エリアが違っても、買いたいのが『そら豆』。すばらしいお菓子です」。煎茶道の干菓子として愛され続ける、州浜の中に口当たりなめらかなこしあんをしのばせたそら豆の形の半生菓子。素朴ながら忘れがたい雅味はコーヒーとも相性がよい。節分限定の「法螺貝餅」や祇園祭の宵山に販売する「行者餅」も人気。昔ながらの和菓子屋の風情を保ちつつ、どこか新しい。京都でずっと残ってほしいお店のひとつ。
東大路通沿いに店を構える江戸時代創業の老舗。10代目考案の現代の感性を融合させた「おゝきに」や落雁製の「音羽山」との詰め合わせも
秘伝の手法で州浜をネチッとした食感に仕上げた「そら豆」。1個ずつ薄紙に包んで販売。1箱8個入り¥1,520。発送可能
Data
京都市東山区安井毘沙門町33の2
電話075・561・2263
11:00 ~ 18:00
定休日:日曜、祝日
汽[ki:]
料理家・冷水希三子さんのお気に入り
自家栽培の無農薬野菜とレバノン料理を軸に、朝はワンプレートとスープを供するレストラン。「レバノン料理を朝食にいただけるのが新鮮。野菜もおいしいです」。フランス料理歴26年のオーナー・長野浩丈さんが手がける料理はフレンチの技と感性が生き、素材の持ち味を引き出す洗練の味。ひよこ豆とそら豆のコロッケのファラフェルや、窯で燻したスモークチキンをピタパンに詰めて味わうと、体がすっと目覚める。
チキンとファラフェルにフムス、ザワークラウトなどの野菜を盛り合わせたプレートにピタパンとスープがつく朝食¥1,900。大テーブルを囲む、気取りのないスタイルで楽しめる
Data
京都市下京区都市町149
電話 075・585・4224
8:00~9:45LO、11:00~14:45LO
無休
éclat京都班最新アドレス案内
伝統を守りつつも、新店が続々オープンする街・京都。旅に役立つ”京のトレンド”を、エクラ京都班最強のふたりがご案内。
京都在住ライター・天野準子
チェックアウト後 “話題の五条”で多国籍な朝を
東西に長い五条通の中でも、木屋町通から烏丸通の間に、ここ数年、飲食店が増えている。にぎやかな四条界隈にも近いのに、京都の日常が味わえるエリア。民家を改装したゲストハウスが多いこともあり、朝食需要が高く、昨年10月から朝食を始めた『sonoba』や店主ゆかりのNYの味を再現した『ROBYN』、台湾蒸しスープと小皿料理の店『ニューオリエンタル』など、素敵な朝時間を過ごせる店に出会える。地下鉄五条駅の隣が京都駅であり、帰路につく前に訪れるのにもちょうどいい。せっかくこの界隈に来たら、『今西軒』のおはぎと『アロウネノ』の駅弁がわりのお弁当もぜひ。
ニューオリエンタル
看板メニューは台湾蒸しスープ。昼を待たずにスパイス料理とお酒を楽しむことも。味つけは塩のみ。滋味深い蒸湯・京地鶏、豚スペアリブ、発酵パイナップル醤¥900、皮蛋ウフマヨ¥650。
京都市下京区高倉通花屋町下る若松町425の2
☎ 050・1794・1121
11:00〜18:00LO
定休日:火・水曜
ROBYN
NYから京都に移り住んだエッセイスト仁平綾さんが開いたカフェ&グロッサリー。メニューは仁平さんがNYで慣れ親しんでいた味が再現されている。バターミルクパンケーキ¥1,500、カフェラテ¥800。
京都市下京区下鱗形町535
☎なし
9:00〜17:00(イートインは16:30LO)
定休日:水〜金曜
sonoba
DIYした店内や自作の器など、美大出身の店主が営む老舗店とは違う自由な雰囲気のそば店。朝食のガレットは、そば粉にこだわり、風味が豊か。鴨の生ハムのガレットと季節のスープ¥2,100。
京都市下京区本塩竈町533の3
☎なし
11:30〜14:45LO(朝食は土・日曜8:00〜10:00LO)
定休日:水・木曜
今西軒
開店後1時間以内に売り切れてしまうことも多いおはぎ専門店。雑味がない上品な味わいのおはぎ・つぶあん、こしあん、きなこ各¥240。
●京都市下京区五条通烏丸西入る一筋目下る横諏訪町312
☎︎075・351・5825
9:30 〜売り切れしだい閉店
定休日:火曜、第1・3・5月曜(6〜8月は月・火曜)
アロウネノ
120年の歴史ある天然だしの老舗「うね乃」が展開する惣菜ストア。だし巻き卵をまるごと1本使用。のりの下には、だしをしみ込ませた唐揚げなど、具がぎっしり。うね乃弁当¥1,800。
●京都市下京区本塩竈町557メゾンドール五条1F
☎︎075・354・1600
11:00〜18:30
不定休
関西在住ライター・西村晶子
ひとりごはんは“御所まわり”で
ひとりのごはんは、過密な街中を離れた静かな場所で楽しみたいもの。御所周辺は住宅地ゆえ、地元の暮らしに自然と溶け込み、派手な看板はなく、内容で勝負する店が点在する。昨年8月に東京から御所南の町家に移転した『!!!ava』はワインバーとしても利用でき、シチリアの郷土料理をモダンに昇華して和食器で供する。ハーフポーションにも応じてくれ、カウンターはひとりでもくつろげ、心地よい。
’25年10月に御所西でオープンした『能勢』はカウンター6席で営業。ご主人の能勢修行さんは、仕出しの名店「菱岩」にのべ35年勤め、京料理のていねいで誠実な仕事を今も貫く。
能勢
地元の食通が「安心できる味」と太鼓判を押す、正統派の京料理を楽しめる一軒。鮑や海老を個別に調味したつきだしにお造り、椀物、だし巻きなど、10品ほどのコース¥20,000。
●京都市上京区烏丸通一条下る龍前町589
電話075・468·3177
18:00〜19:30(入店)
定休日:日曜 要予約
!!!ava
イタリアで研鑽を積んだ吉森康太シェフの料理はハーブやスパイスを効かせた軽快な味わい。イワシの包み焼き(¥1,300)などのアラカルトを深夜まで楽しめる。
●京都市中京区二条通堺町東入る観音町87
電話075・708・5513
18:00〜24:00LO
不定休
コースは前日までに要予約
撮影/酒井貴生(aosora/人物) 伊藤 信 福森クニヒロ 内藤貞保 ハリー中西
取材・原文/佐藤裕美 西村晶子 天野準子 ※エクラ2026年4月号掲載