東京は世田谷文学館で開催中の『イラストレーター 安西水丸展』。8/31までの会期が延長されて、9/20までとなりました。
こちらは、’16年以来の全国巡回展の集大成。仙台展に行ったのは5年も前という事実に大きな衝撃を受けましたが、その時とは全く異なる会場設営でかなり気合が入っていました! 1階から絵本関連の展示があったり(※8/31まで)、階段の手すりに機関車がいたりと、入館してすぐワクワクモードへ。2階の展示室は舞台の大道具風の仕切りで区分けされていて、ところどころにのぞき穴が設けられています。
安西水丸さん(1942~2014)といえばイラストレーターで、漫画家で小説家でエッセイストで絵本作家で、ジャズやカレーやお城やスノードームや民芸品etc.を愛する素敵な趣味人。そのパーソナリティまでしっかり伝える魅力的な展示のおかげで、子供から大人まで、それぞれの興味に従って楽しい時間を過ごせます。
章立ては、多彩な仕事を振り返る「ぼくの仕事」、嵐山光三郎、村上春樹、和田誠のお三方との交流から生まれた作品を特集する「ぼくと三人の作家」、幼少期の絵やノートから愛用の品々までを展示する「ぼくの来た道」、名作が並ぶ「ぼくのイラストレーション」、そして、旅人としての安西水丸をフィーチャーした「たびたびの旅」。おおよその順番はあるものの、巨大迷路を進むような気分で、ぐるぐる回遊できる構成になっています。
水丸さんの絵は、一歩引いているようでいながら本質を捉えていて、見飽きることがありません。その特質がよく発揮されているのが、ミニマムな装丁だと思います。『ひさしぶりの海苔弁』のカバーは、ペンの太・細で書いた文字と、大きめの切手くらいのもわもわした黒いのが原材料。『すいかの匂い』や『神様のボート』なども要素が少なくてびっくり。でも、きちんと洗練されているからスゴイのです。切り紙絵スタイルの『日本の文学』(近代編)がズラっと並んでいるのも圧巻でした。
あまり紹介しすぎてもいけませんので、最後に会場で注目していただきたいことを二つばかり。ひとつは、中学校時代のノートに描かれた図解のデッサン力。水丸さんもいわば「ピカソ式」で、卓越した素養の持ち主が子供のように描く境地に達している状態だったことが伺えます。もうひとつは、描き直し。一発でどんどん描いていくイメージの強い水丸さんですが、“女性の顔”は少々勝手が違ったようです。展示作品に限るなら、けっこうな比率で眉や目の部分が重ね貼りされていました。下の表情との違いについて、想像をめぐらせてみるのも一興かと思います。
(編集B)
●~9/20 10:00~18:00(※ 混雑時は感染対策のため入場制限あり。入場、ミュージアムショップの営業は17:30まで)
休館日9/6、9/13 当日一般/900円
東京都世田谷区南烏山1-10-10 ☎03・5374・9111