毎日手に触れ、目に触れる器。心ときめくものや、使いやすいものが見つかれば、毎日がより豊かに幸せになるはず。今回は料理家・冷水希三子さんにお気に入りの「ときめく器」をうかがった。
器は、一番気軽なインテリア。ときめくものだけを、使いたい
小さな器を大事に選んで卓上の、室内の景色をつくる
料理家にとって、器は仕事道具。こだわりはあって当然だが、冷水希三子さんの“器愛”は並々ならぬものがある。撮影や料理教室にも使う自宅のダイニングキッチンに並ぶ器の量は、ちょっとしたギャラリー顔負けの量で、ディスプレイ収納のセンスのよさも知られるところ。今年2月には、都内のギャラリーで開催された5人の作家の展示でキュレーターも務めた。
「家具も好きですが、価格やスペースを考えると“集める”のはなかなかむずかしい。その点、器は気軽に求められる。見せる収納を工夫すれば、室内の雰囲気も変わる。一番気軽なインテリアなんです」
陶器に磁器、木地もの、作家は重鎮から新進気鋭まで、東西のアンティークに民芸品と、セレクトの幅も広い。基準は「ものとして力があるもの」だという。
「新しい作家さんとの出会いは直感が第一。その中で定番になるのは、やはり“使いやすい”ものです」
個人的にこれから注目していきたい作家として、陶芸家・タナカシゲオさんの名があがった。
「李朝の焼きものからの影響と、薪窯焼成の素朴さのバランスがとても素敵で。いろんな作品を見てみたいと、機をうかがっています」
第一印象で心をつかまれ、リピートしている器のつくり手のひとりが、木工作家・藤本健さん。
「木地の表情が生きた器は、どんな料理も美しく映えて、手ざわりなど質感も心地よいんです」
一方で日常的には、数をそろえられるアイテムも重要。コロナ禍で機会は減ったものの料理教室に公私の食事会と、大人数での食事の機会も多いからだ。
「わが家で最も活躍してくれているのは、中本純也さんの器。デザインもよく価格も良心的で、うちでファンになるかたも多いです」
加えて自身の経験から「作家にこだわらずそろえておくとよい」と推すのが、六寸皿。前菜にも取り皿にもよく、異なるデザインも卓上のアクセントになるのだとか。
「気になる作家に出会ったら、小さなものをまず2点。気に入ったら、数を増やしたり、違う形の器を求めたり。気軽な入口を見つけて、器を楽しんでほしいですね」
冷水希三子さんの「ときめく器」
1.割れやゆがみも「顔」になる木工作家・藤本健さんの作品
沖縄県南城市に工房を構える藤本健さんの作品は、5年ほど前から愛用。「工房と敷地内にあるレストラン『胃袋』におじゃましたのがきっかけで」と、冷水さん。沖縄で育った木の、豊かな表情を生かした作品が魅力なのだという。ボウル(φ25㎝×H12㎝)。
2.メキシコ、オアハカ州からFranciscoの素焼きの器
メキシコ、オアハカ州の作家・Franciscoのプレート(右、φ15㎝)と鉢(左、φ11㎝×H7㎝)。「素焼きの陶器のような、プリミティブな風合いが好きです。シンプルだから盛りつける料理を選ばず、日本の土ものとも違和感なくなじむ」のだとか。
3.洗練と素朴さをあわせもつタナカシゲオさんの世界
古陶磁を手本に奈良で作陶するタナカシゲオさんは、冷水さんが「今、最も気になるひとり」と話す陶芸作家。洗練されたデザインと薪窯焼成が生む、自然で、どこか素朴な風合いに惹かれるのだそう。台皿(φ16×H3.8㎝)。小皿 各(φ7.3㎝×H2㎝)。