子育てや介護など女の人生と切り離せないできごとを描いた小説は、社会を写し出す鏡。読めば悩みへのヒントが見えてきそう! エクラ世代へおすすめの女性作家の社会小説6冊をピックアップ。
医療
『夜明けのすべて』 瀬尾まいこ
水鈴社 ¥1,650
若くして思いがけず病気になってしまったら……
本屋大賞受賞作『そして、バトンは渡された』で話題になった著者の“人生の応援歌”。美紗は高校時代からPMS(月経前症候群)に悩まされている28歳。イライラや薬の副作用による眠けがひどくなり大卒後に入った職場をやめたが、今は体と折り合いをつけながら小さな会社で働いている。ある日美紗は転職してきた山添君にPMSの影響で当たってしまうが、彼もパニック障害だと知り……。厳しい現実に直面した若い男女が、自分より相手を助けることに懸命になっていく姿に感動! 弱っている人への向き合い方を優しく示唆しているような一冊。
教育
『翼の翼』朝比奈あすか
光文社 ¥1,760
過熱する中学受験熱、本当に大切なことは何?
自分でも子供でも、中学受験を経験した人なら胸がざわつくこと必至の小説。主人公は専業主婦の円佳。ひとり息子の小学2年生・翼に興味本位で進学塾の全国テストを受けさせ、好成績だったことから中学受験への道をスタート。翼の成績は難関校をねらえるほど上がるが、テストの成績で決まるクラス分けや同級生ママたちとの葛藤、義母の干渉、自身のプライドなどがからみ合い、しだいに円佳は平常心を失っていく。物語がすさまじさを増すのは、単身赴任から帰国した夫が受験熱を上げる後半以降。受験は何のため、そして誰のためと真剣に考えさせられる。
いじめ
『小説8050』林真理子
新潮社 ¥1,980
引きこもりの子への対応、母は甘くなりがちだけど
都内で歯科医院を営む大澤は完璧な人生を送っているように見えたが、7年間引きこもり中の長男・翔太が悩みの種で、妻の甘い対応にも不満をもっていた。長女の結婚問題が浮上して外部に解決策を依頼するもうまくいかず、追いつめられた大澤夫妻。そこで初めて翔太の引きこもりの原因となったいじめ事件と向き合い、大澤は裁判を決意する。絶望のどん底から希望の光を見出したかと思ったらまた絶望と、最初から最後まで地獄を上下しているようなスリリングな展開。深い傷を負いながらも未来へ向かう大澤家の人々には、現実を超えていこうとする力が。
性差
『我が友、スミス』石田夏穂
集英社 ¥1,540
“お年ごろ”に違和感、男でも女でもない生き物に!?
芥川賞候補になった話題作。会社員・U野はジムのトレーナーO島からボディ・ビル大会への出場をすすめられ、本格的な筋トレと食事の管理を始める。大会のプロたちはU野にさまざまな助言をするが、彼女にとってそれは初耳の連続。太い血管は映える、でっかいピアスとハイヒールは必須、髪を伸ばし笑顔で優美なポーズを、など。そんなときU野は久しぶりに家族と会うが、母に体つきを非難され……。男でも女でもない別の生き物になりたくてトレーニングに励んだのに、結局周囲から女性らしさを求められる主人公に思わず同情したくなる。
貧困
『一橋桐子(76)の犯罪日記』原田ひ香
徳間書店 ¥1,815
孤独死は迷惑だから刑務所に入りたい!?
両親の介護のため仕事をやめ、ふたりの死後は清掃のパートを続けてきた桐子は76歳で独身。親友・トモと楽しく暮らしていこうと思っていたのに、トモがあっさりと病死。貯金もなく心細くなった桐子は孤独死して人に迷惑をかけてはいけないと思いつめるが、そんなときテレビで高齢の受刑者が介護されている光景を目撃。以来桐子は長く刑務所にいられる犯罪を真剣に考えはじめ……。桐子の性格のよさが人の輪を広げ、その恩恵が彼女自身に返ってくるおとぎ話のような連作短編集だが、貧しさからくる桐子の将来への不安は決して他人事ではない。
老後
『ミシンと金魚』永井みみ
集英社 ¥1,540
認知症の女性が振り返る人生の光と影
日帰り介護などを受けながらひとりで暮らしているカケイは、認知症の老女。病院からの帰り道、付き添いの女性に「今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」とたずねられたカケイは、過去の記憶をたどりはじめる。カケイを産むとすぐに亡くなった実母と毎日薪で殴ってきた継母のこと。息子を産むと間もなく姿を消した夫のこと。夫の連れ子と息子の3人で暮らすために、毎日ミシンを踏み続けたこと。ある男に孕(はら)まされて娘を産むが、その先には悲劇が待っていたこと。カケイの波乱万丈の生涯を独特の語りで描いてせつない、すばる文学賞受賞作。