第2の人生へと踏みだすため、新しい家への住み替えを検討する人も多い。今回は、新たな住まいとして新築のコーポラティブハウスを選んだエクラ 華組の伊藤美帆さんのお宅を拝見。伊藤さんにとっての心地よい暮らし空間とは?
「終(つい)の住処(すみか)と考えてふたりの理想をかなえました」
DATA
家族構成:夫(50代)
延床面積:約115㎡
築年数:1年未満(’22年2月完成)
経験と価値観を集約した夫婦の理想の家造り
スウェーデンに7年、アメリカに8年と、長く海外で過ごした伊藤夫妻。帰国後に住まいとして選んだのは新築のコーポラティブハウス。居住者が個々の部屋の設計を自由に注文でき、規約なども話し合いで決める集合住宅だ。
「これまで引っ越しが多く、10軒以上の家に住んできたけれど、たぶんこれが最後。理想形をつくりたいよね、と話してここに決めました。3頭の犬がいて、一戸建ても考えたけれど、ちょうど立地のいい今の場所にコーポラティブハウスを造るという話があって」。9軒あるうち、選んだのはルーフトップバルコニーのある部屋。
「庭はなくても、広いバルコニーがあれば犬が走りまわれます。植物の朝の水やりも気持ちいい」と伊藤さん。2階に玄関と寝室、バスルーム、3階がリビングという間取りで、1フロアごとの面積はそれほど広くない。理想のかたちをかなえるため、潔い取捨選択を行った。
「リビングのフロアではダイニングテーブルを置くのをあきらめました。なくしてみれば、それほど必要ではなかったなと思います。玄関は空間を区切るのがもったいないので、土間に椅子を1脚置いただけ。客間も造りませんでした」。
ダイニングテーブルをなくしたかわりに、アイランドキッチンはふたりで食事もできるオーダーメイドに。人が集まるときは立食で、ソファや椅子など好きな場所に座ってもらう。誰かが泊まるときはエアベッドに空気を入れればOK。そして上がり框(かまち)のないフラットな玄関は空間が広く使え、掃除も楽。今の夫婦の暮らしになんの不足もなく、むしろむだのない軽やかな空間になった。
夫婦ともにインテリアが好きで、家具などの物選びにも妥協がない伊藤さん。家を大切にするスウェーデンでの暮らしでも、さまざまな刺激を受けたそう。
「築100〜200年のアパートも、きれいに住み続けられるよう工夫されたミニマルなデザイン。個々に手を入れて住んでいるところも素敵で、そんな暮らしができたら、と思ったんです」
50代になり、暮らしに必要なものの優先順位も以前とは変わった。これまでの経験を集約し、価値観を見つめ直した「住み替え」は、伊藤さんの第2の人生への大きなステップになっている。
2面に大きな窓をとった明るいリビング。手前の椅子はデンマーク「フリッツ・ハンセン」のスワンチェア。ソファとクッション、アイランドのスツールはデンマークのインテリアブランド「HAY」のもの
約40㎡のルーフトップバルコニーは愛犬たちの格好の遊び場。置いている椅子はアメリカ在住時代に知った「ロールデザイン」のもので、すべてリサイクル素材で作られている
削ぎ落としたものも多いけれど、伊藤さんがどうしても欲しかったのがふたりで同時に使える洗面所のダブルボウル。「スペース的にかなりむずかしかったようですが、無理をいって入れてもらいました」
玄関のドアを開けると土間のみのフラットな空間。荷物をちょい置きしたり靴を履くとき用に椅子を1脚置いているだけ
リビングからバルコニーへ上がる階段。堅牢でシンプルなコンクリート造の内装も気に入っている
モノトーンのインテリアの中で、大きめのグリーンとビビッドな色合いのアートがアクセントに。真っ赤なりんごの絵はイタリアのデザイナー、エンツォ・マーリ作
「キッチンは暮らしの中心なので特にこだわって造りました」と伊藤さん。機能的でスタイリッシュ、直線的なデザインが美しいアイランドは「アムスタイル」でフルオーダー。正方形に近いコンパクトサイズで両サイドから食器洗いができる。奥側はスツールが置けるよう足もとを広くし、ここで食事ができるように
よく使う食器やグラスは壁づけの棚に。見やすく、出し入れしやすいようにすっきりと整理されている。アイランド上のラバーのペンダントはスウェーデンの「ムート」製