2023年のエクラカレンダーは、山本容子さんの俳句と銅版画のコラボレーション。俳句の先生(宗匠)である小説家・俳人の小林恭二さんをお招きして、俳句の楽しみを語り合っていただいた。容子さんを虜(とりこ)にした、俳句のおもしろさとは? 前後編の前編。
言葉と絵が合わさってこれは信頼のカレンダー!
山本 宗匠、これが今度のカレンダー、私の詠んだ句と私の描いた絵で構成しているんです。
小林 おお、きれいですね!
山本 この10年で詠んだ句が500句以上あって、春夏秋冬の銅版画が240点あって。それをアトリエにずらっと並べて付き合わせて、カルタ取りみたいに組み合わせていく作業がめちゃくちゃ楽しかった。
小林 どっちかがどっちかの説明になっているわけじゃないんですね。
山本 絵を描くときに思っていたイメージと句を詠んでいたときのイメージと、まったく違うんだけど、合わせてみると、また別の世界が生まれてくるんです。
小林 そこがいいですよね。両方ともがすっくと立っていて、言葉と絵が会話しているような。
山本 俳句を詠ませたいとか絵を見せつけたいとか、そんなことじゃないんです。誰かがこれを見て、あ、これは昨日の私、みたいなことがあったら、それだけで私とその人の間にコミュニケーションが成り立つ。それができそうだなって、なにか信頼みたいなものがあるの。だからこれは、信頼のカレンダー(笑)。
カレンダーに使った絵の原画。「本物はすばらしいですね!」(小林)。「色を染めた紙に摺っているから、印刷物で見るよりもフワッとしています。展覧会でもして、皆さんに見てほしいですね」(山本)
「この句は容子さんにしか書けない、この絵もすばらしい。同じ根から出て、それが会話しあっている」(小林さん)
小林 これを見ると、中国の文人画を思い出します。文人画というのは、文学と絵に対しての、ある程度の教養がないと評価されない。作るには知性が必要なんですよ。容子さんはそれをやっている。
山本 あ、うれしい! そういう見方もしていただけるのね。
小林 この12月もかっこいい。『冬うらら歌聖全部と正座する』。これはまず、ほかの人にはまねできない。俳句のベストの形というのは、よいものを書くとかうまいものを書くのではなくて、自分にしか書けないものを書くことなんです。もちろん形は必要、技術はあったほうがいいけれど、10年もやれば技術は、ある程度身につくんです。あとはその人本人の問題。この句は山本容子さんにしか書けない、この絵もすばらしい。同じ根から出て、それが会話しあっている感じがいいですね。
俳句を始めたときからのノートも、3冊目になった。その日に作った句とそれに対する批評、感じたことがていねいに書き込まれている。「私はね、遊びはちゃんと遊ばないと、遊べない。いいかげんはイヤなんです」(山本)
「恋をすると、いつもと違う自分になれるじゃない? 俳句のときもそういう自分になれるの」(山本さん)
山本 小林宗匠のおかげで、俳句を始めて10年たちました。あ、読者のかたたちにご紹介しますね。小林さんは小説もお書きになっているけど、俳句の世界でとても有名なかた。小林さんがお友だちだったから私、俳句の世界に飛び込むことができたんです。
小林 いやいや(笑)。10年前のあのころ、私も50歳を過ぎて、そろそろ老年の準備でもしようかと、遊ぶ仲間もつくらないとな、と思って、それで容子さんを誘って、仲間を集めてみたんです。
山本 うれしかった(笑)。60歳になったばかりのころ、なんだか日常が退屈だと思いはじめたのね。気がついたら私、自分の知っている言葉で、知っている人と、知っていることしかできなくなっていた。自分で自分に飽きてしまった、というか。だからなにか未知の世界に惹かれたんです。ほら、恋をすると、いつもと違うことを考えたり、想定外の行動に出たりするじゃない? 俳句でもなんでも、初めてのときには、そういう自分になれるの。
小林 なるほど、恋のかわりですか。
山本 大恋愛よ、10年以上続いているんだから(笑)。
(後編へつづく)
2023年カレンダー『山猫ごよみ』
山本容子さんがこの10年に作った句と四季を描いた銅版画をコラボレーション。繊細な絵と独特の視点が、一年を彩ってくれる。
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