エクラ世代、後半の人生をともにするなら、トレンドや常識に左右されず、自分が主役のキッチンにしたいもの。キッチンリノベーション実例とプロのアドバイスを参考に、これからの理想のキッチンを考えてみて。
F邸(東京・広尾)のケース
会話をしながらストレスなく料理ができる住む人にも来客にも心地のいいキッチン
リビングダイニング側からは、キッチンに立つ人の顔だけが見え、雑多なものがいっさい見えないキッチン。ダイニングテーブルはカンディハウス。「以前は12人が座れる長方形のテーブルだったのですが、この家では円形がいいなと思って。6人がけになりましたが十分ですね」とFさん。チェアは長年愛用するB&B ItaliaのVol Au Ventをグレー系に張り替えた
公式サイト
手持ちの食器類がすべて収まり、好きな色・素材に囲まれた場に
娘の留学などをきっかけに、亡き祖母が暮らしていたヴィンテージマンションへと住み替え、暮らしをコンパクトにシフトしたFさん。入居にあたり、フルリノベーションをすることに。ネットで検索し、設計事例が気に入ったアトリエエツコの山田さんに依頼をした。
「前の家は約6畳のクローズドキッチンで、朝ごはんや簡単な食事ができる広さでした。でも料理中はキッチンにこもりきり。お客さまがいらしても落ち着いて会話ができませんでした。なのでこの家ではおしゃべりをしながら料理ができるオープンキッチンにしたいと。ただしすべてが見えてしまうのには抵抗があったのと、玄関を入った正面にキッチンがあるので、調理台やシンクは隠れるようにと希望しました。前の家から50㎡近く狭くなったため、物がすべて収まるのかがとにかく心配で。キッチンにも可能なかぎり収納を造ってもらいました」と語るFさん。山田さんはカウンターを1.15mと高めにし、顔だけが見えるキッチンを提案。譲り受けたり手に入れてきた食器をたくさん所有するFさんのために、収納はたっぷりと確保。パントリーのかわりにダイニング側の壁面をすべて収納にし、キッチンカウンターの前面や上部にも収納を設けた。内装はFさん夫婦が気に入った真鍮色の水栓が映えるよう、全体をグレージュでまとめることに。カウンタートップ、タイル、収納扉と色みをそろえた素材の異なるグレージュを重ね、上品で洗練されたキッチンが完成した。
「初めて家をオーダーする経験をしましたが、既製の物件ではかなわない、好みのものに囲まれた仕上がりに大満足です。素材ひとつにもこまやかに対応してくださったおかげで、奥行きのあるグレージュのキッチンが実現しました。オープンキッチンになって人を呼びやすくなりましたね。お客さまも気を使わずに過ごしてくださいます。急なお客さまでも慌てることなく、『ごはんを食べていって』なんて気軽にいえるようになりました」
山田さんはエクラ世代のリノベーションについて「これからどう暮らしたいかを考えるいい機会になるのでは? 外食好きならキッチンに投資する必要はないし、逆に料理を楽しみたいならお金をかける意味がある。収納も、暮らしをリセットしたいのか、思い出とともに暮らしたいのかによって変わります。まずは目的を明確にすることが大切だと思います」。
間取り図Before&After
F邸は家全体をフルリノベーション。キッチンはマンションの規約上、場所を大きく変えることができなかったため場所はそのまま。玄関正面と、リビングダイニングとの間にあった壁を取り払い、クローズドキッチンからリビングダイニングと一体となるオープンキッチンにした。さらにL字形だった配置を2列形にし、シンクやコンロも移動した。「もとの間取りを知っているかたがびっくりするくらい、雰囲気が変わり、明るいキッチンになりました」とFさん
パントリーも兼ね、ダイニングの梁下の壁面を全面収納にした。開き戸なので奥行きは浅めに。Fさんが退職する際に記念に購入したブラックパラティッシシリーズや、お母さまから譲り受けたアラビアの食器、グラス類などが整然と並ぶ
カウンター下のダイニング側にも食器やカトラリーを収納。デザイン性と使い勝手を追求し、大きな引き出しの内側に内引き出しをつけた。引き出しはソフトクローズでスッと閉まる
工事中に急きょ造ることが決まったガラスのショーケースには照明をつけ、お気に入りの食器やグラスを飾った
カウンタートップは真鍮色の水栓金具に合うシーザーストーンのグレー系を選択。断面も美しい
水洗金具はアクサー。グレーのシンクは山田さんの提案。汚れが落ちやすくお手入れがラクで、耐久性の高いCOMOのカラーシンク。コンロとオーブンはリンナイ。愛用の土鍋や鋳物鍋がそのまま使え、オーブンも高温で焼けるガスを選択した
食洗機はミーレの幅60cmタイプ。「これまであまり食洗機を使う習慣がなかったのですが、大容量なので来客時に大活躍です」
シンク下は、浅い奥行きを利用して包丁を収納。斜めに開くので出し入れしやすい
色みをそろえた異素材を重ね、奥行きのあるワントーンキッチンに
玄関を入ると正面にキッチンが。高さ1.15mのカウンターのおかげで、雑多なものが見えずすっきり。吊り戸棚は使いやすいようダイニング、キッチンの両側に収納を設け、奥行きは浅めに。カウンター下の玄関とダイニング側部分はオーク材を浮造(うづく)りした木目にグレージュの塗装を施した、柔らかさと表情のある面材を選んだ
冷蔵庫はリープヘルのビルトイン冷凍冷蔵庫を選択。見た目の美しい収まりはもちろん「ふだんも来客時もわが家は氷をよく使うため、自動で注水・製氷してくれるところも気に入りました」とFさん。扉材はメラミンで、取っ手は真鍮色に
電子レンジ、オーブントースター、炊飯器、コーヒーメーカーなどキッチン家電類をすべて収めつつ、その場で使える収納スペースも確保。下段は使用時に引き出せるように。扉を閉めればすっきり
茶道を習い、骨董も好きなFさん。写真は骨董の和食器など、大切にしている器専用の引き出し。「引き出し式の収納だと、重ねずにしまえるし、ひと目で見渡せる。骨董の器の扱いがとてもラクになりました」