現在は、東京と鎌倉との2拠点生活。戸建とマンション。自然豊かな場所と都心。どちらも経験したうえで、将来は都心のマンション暮らそうと考えているというNさん。コンパクトながら洗練された、機能美あふれる部屋にうかがった。
Profile
Nさん
夫、妻、子の3人家族。海外生活を経て、都内にある75㎡のマンションを2000年に新築で購入。現在は鎌倉の実家をメインの拠点にし、母と夫と3人で暮らす。マンションは‘21〜’22年にFILEに依頼して、リノベーション。子供は独立し、現在は、東京と鎌倉との2拠点生活を送っている。
75㎡、1LDK(2LDKからリノベーション)、2人暮らし。LDKの横にあった主寝室をなくし、壁を取り払ってリビングスペースを広く取った。水回りの位置はほぼ変わらず、キッチンは2列型からコの字型に変更。
リノベーションにあたって、希望ははっきりと
「以前ワンルームに近い間取りの家に住んだことがあり、とても暮らしやすかったんです。それもあって、購入した頃から、いつかLDKを広くしたいと思い描いていました。LDKと寝室の間の壁を取り払えることも確認して。まだリノベーションという言葉すら知らなかったのに」と笑うNさん。
住まいは、都心の高台に建つマンション。眺めがいいこと、出張に出やすく、鎌倉の実家にも通いやすい利便性などが決め手となり、海外からの帰国のタイミングで2000年に新築で購入。75㎡の2LDKに家族3人で暮らしてきた。父が他界して母が一人暮らしになったのをきっかけに、鎌倉にある実家で同居することになり、以来、このマンションは東京の拠点とし、鎌倉に軸足を置いた2拠点暮らしをしている。
「実家は戸建てで、父が生前、丹精込めて手入れをしていた広い庭があります。四季折々の景色を楽しめ、東京に比べて夏は涼しく、冬は暖かい。いい面もたくさん。一方で、秋の落ち葉掃きにはじまり、庭の掃除や維持は大変な作業です。草むしりに励んだら身体を痛めてしまったことも。家も広いぶん、荷物がどんどん増えてしまい、年齢もあってどこに何があるか把握できなくなってしまっていますし(笑)」
豊かな自然が残る地での、庭のある広い戸建て暮らしも、便利な都心でのコンパクトなマンション暮らしも、両方を経験しているNさん。それぞれのメリット、デメリットを肌で感じながら、この先もっと歳をとったら、軸足を東京のマンション暮らしに戻そうと決意。3人で暮らしたマンションを、夫婦二人で暮らすためにフルリノベーションすることにした。
窓が多く、明るく、眺めのいいリビング。壁は薄いグレーにペイントした壁紙。汚れても上から塗装できる。回り縁を白くし、キリリと引き締めた。窓辺には夫の仕事スペースが。デスクは手触りのいいウォルナット材で造作。仕事用チェアはレザー張りのセブンチェアのオフィスチェア
グレーのソファとウォルナット材のコーヒーテーブルはFILEのオリジナル。ゆったりとしたアームチェアはハンス・J・ウェグナーによる名作、C H78ママ・ベアチェア
リノベーションは、ネットで検索して施工事例に目が留まったFILEに迷いなく依頼。設計・施工には1年近くを費やし、じっくりと丁寧に進められた。設計にあたり、「無駄な手間をおかけしないためにも、最初から思いきって希望をお伝えしました」とNさん。
「部屋をひとつ潰し、LDKを広く」「キッチンに立った時に窓の外の景色が見えるように」など間取りのことや、「窓に照明が反射せずに美しい夜景が見られるように」「PCやプリンターなどを隠す収納場所が欲しい」と照明や収納のことなどをリクエストした。とくに収納は、すっきりと暮らすためにできるだけ確保したとか。
「リノベーション時に、相当量の持ち物を整理しましたが、東京に軸足を戻す時にはさらにじっくりと見極めて整理する予定です。今はまだ2拠点暮らしなので、収納スペースには余白がありますが、将来もきちんと収まる範囲内で暮らしていきたいと思っています」
腰高窓にはウッドブラインドを、掃き出し窓にはカーテンを付けた。ドレープの生地はクヴァドラ社。観葉植物は、からならの木で購入
夫の仕事スペースにはPC、プリンターなどを隠してしまえる収納を設けた。プリンターは引き出して使える。ランプはカイザー・イデルテーブルランプ
LDの床は遮音性を考慮し、ウールを織り込んだ足触りの柔らかいサイザルカーペットに。キッチンの床はPタイル
限られた空間ですっきり暮らすための工夫はほかにも。AVボードやデスクなどの家具は造作してピッタリと収め、既製の家具も動線の邪魔にならないものを選んでいる。なるべく広く感じられるよう、家具の選びかたや配置にも気を配った。
手持ちの家具は一部を実家に持っていき、すべて一新。これまでの住まいでは、イギリスなどのクラシカルな家具を愛用してきたが、リノベーションを機にFILEに提案された北欧の家具や照明を選んだ。「北欧家具についての本を読んで、フィンランドにも行ってみました」とNさん。
リビングの一角にはデスクと一体となった壁面収納をつくり、FILEオリジナルのサイドボードを間仕切りとして置いた。独立した子供の帰省時のために簡易ベッドをサイドボードで隠し、リビングから見えないように。サイドボードは、小スペースでも開閉がしやすい蛇腹式の引き込み扉。いずれベッドをなくした時にも窓下にピッタリと収まるサイズ
壁面収納のオープン棚には、Nさんがアメリカ在住時に手に入れたナンタケットバスケットなど、思い出のアイテムを飾って
FILEによるオーダーキッチン。もとは2列型のセミオープンキッチンだったのを、コの字型のオープンキッチンへ。窓からの景色をより楽しめるようになった。カウンタートップはグレーのクオーツ、扉は無垢材をペンキ塗装。シンク下の収納の内側にはゴミ箱を収納するために、ヘルスコートという脱臭効果のある炭を混ぜた塗料を塗った。冷蔵庫、食洗機、スチームオーブンはASKO
シンクはホーロー素材でコーラー社のもの、換気扇はアリアフィーナ社のアリエッタ。ペンダントランプはポール・ヘニングセンによるP H2/1ペンダントランプ
ダイニング側のカウンタートップ下にはワインセラーを組み込んだ。ウォルナット材のダイニングテーブル、椅子もFILEのオリジナル
ダイニングの壁には夫のアイデアでワイングラスのための飾り棚を設置。ウォルナット材を用い、FILEが造作した。飾り棚を壁付けにしたのも、テーブルにすっきりと収まる椅子を選んだのも、限られたスペースを有効活用できて、人がスムーズに移動できるようにとの配慮から
すべてに目が届き、ものがきちんと収まる空間
インテリアのベースカラーはグレーと白、そこにウォルナット材の上質な家具と植物の緑が映え、落ち着きのある洗練された内装だ。家具、照明などすべてが美しく調和し、なんとも言えない心地よさが漂う。
「グレーと白に、ウォルナットの家具と緑がとても合いますよね。色サンプルから微妙な色の違いを選び取るのは難しくもありましたが、結果的にはとても満足しています。色や素材の合わせ、キッチンやバスルームのデザインなど、FILEさんのセンスが素晴らしいので安心してお願いできました」 現在は夫が週に数回、Nさんは月に数回の頻度でこのマンションを訪れている。「この家ではソファに座っている時間が一番好きです。飲み物を飲みながら窓の外の景色を眺めたりT Vを見たりして、のんびりと過ごします。友人を呼んでお茶をすることも」
スーパーや病院が徒歩圏にあり、思い立ったら美術館や展覧会にもすぐに行ける。フットワーク軽く出歩けるのも都会のメリットだ。「歳を重ねたら、都会のほうが暮らしやすいのではと思っています。戸建てだと、きちんと鍵を閉めて外出しても不安になることが。マンションは鍵ひとつ持てば、安心してさっと外出できるところもいいですよね」
落ち着いた雰囲気の玄関
玄関にはNさんのリクエストで、コート掛けや、荷物を仮置きできて靴を履く時に座れるベンチを盛り込んだ壁面収納をつくった
廊下にもコートや日用品を収納する壁面収納が。廊下に光が入るよう、LDKとの間仕切りはガラス扉に
美しく整ったパウダールーム。収納扉やタイルの一部は薄いグレーに。収納もたっぷりと確保し、扉の中はアイテムによって棚板の高さを調整できるようになっていて、アイロン台の収納場所までつくられている。洗濯機。乾燥機はASKO
バスルームは在来工法と仕上がりがほぼ変わらず、より防水性の高いオーダーユニットバスを採用。浴槽はホーロー製で保温性が高く、とても温かいとか
トイレの洗面台の上の壁にはモザイクタイルを貼り、FILEにオーダーした鏡を掛けた。夜中に利用した際に、眩しすぎないよう、明るさを変えた照明器具を数個設置してある
寝室はヘッドボード代わりにウォルナット材を貼った腰壁にし、クローゼットの収納扉も同素材にした。ペンダントランプはエバソロ社のクローバー。壁にはナンタケット島で購入した春夏秋冬のくじらの絵葉書を額装し、飾っている。
好きな色や素材、家具で彩ったインテリア、思い出のもの、好きなものに囲まれたしつらい、すべてに目が届き、掃除が負担にならない程よい広さ、ものがきちんと収まる適材適所の収納、安心して暮らせるセキュリティ。これらすべてを満たす、コンパクトで過不足のない美しい住まいが、きっとこれからのNさんの暮らしに、たくさんの楽しみや喜びをもたらしてくれるはず。
「じっくりと時間をかけてリノベーションしたお陰で愛着もひとしお。毎日ここで暮らすのを今からとても楽しみにしています」