【ソフィー・ブイエ=デュマの美しきボタニカル・ライフ】《後編》ソフィーが語る植物への愛情

植物をこよなく愛するあまり自らイギリス式庭園を構想し、果ては花や種をモチーフとするジュエリーのデザイナーとなった、ソフィー・ブイエ=デュマ。彼女と家族の週末の家と庭では、草木や花、ファブリックやオブジェのひとつひとつが、ストーリーを語っている。

前編に続き、後編では庭を彩る"植物”への思いについても語ってくれた。

ソフィー・ブイエ=デュマの美しきボタニカル・ライフ《前編》

母が愛したイギリス式庭園の様式を、自身の庭にも取り入れて

ソフィーは母から、庭づくりへの情熱を受け継いだ。アマチュア園芸家としての母が、ジオ・ポンティのデザインによるパリ郊外のブイエ家邸宅にしつらえたのは、イギリス式庭園。整然としたイタリアやフランスの庭園と違って、イギリス風は野生に近い、自由な植生を重視したスタイルだ。
「私も庭づくりでは、イギリス式を好みます。詩情が感じられますから」と、ソフィーは断言する。「変化の予測がむずかしくてたゆまぬ手入れを必要とする庭には、謙遜と忍耐をもって向き合うべき。それも、母から学んだのです」。

 ノルマンディの広大な庭の構想は、防風も兼ねる大木に始まり、草花、家庭菜園に発展。目的と美観、両方の観点を大切にした。最後に整えたのは、57もの品種をそろえた、紫陽花園。植物学にのめり込んでいたソフィーは、紫陽花についての研究を進めていたのだ。

「私の植物愛は、見た目の美しさだけではありません。その歴史や生命力を知れば知るほど興味がわくんです。植物のDNA鑑定が可能になったことから、専門家によれば紫陽花の起源であるハイドランジェアは、9億年も前から存在していたことがわかったそうです。しかも原産地のカリフォルニアから海を渡り、山を越えて世界中に広がり、たくさんの品種に派生して」。ソフィーはこういって、目を輝かせる。紫陽花の花びらに魅せられた彼女は、この形をジュエリーとして身につけたいと思うようになったのだ。ローズゴールドという素材に置き換えて。
「ジュエリーの世界では、ジオメトリックな形が主流です。そのほうが製造しやすいですし。でも私が作りたかったのは、自然のままの大きさ、形」。とはいえ、微妙な曲線を金銀細工で表現するには、むずかしい技術を必要としたため、職人探しに奔走した。「パリのあるファインジュエリー工房のオーナーが植物好きだったことで意気投合し、私のデザインを形にしてくれることになったんです。母ミラベルと、バラの品種改良を趣味としていた曽祖母ステラ、ふたりのファーストネームを組み合わせて、ブランドは『ミラステラ』と名づけました」

 四方を庭に囲まれた家で、ソフィーは幸福感を噛みしめながらこう語る。ここには花や草木が、絵として、壁紙やカーテンなどのモチーフとして、ここかしこに存在する。今後も四季がめぐるにつれて、植物はこの家を彩り、ソフィーの感性を刺激することだろう。

アトリエは心を落ち着け、 インスピレーションを受ける場所

イーゼル

イーゼルにはソフィーが描いた、庭でとれたかぼちゃの油彩画が

祖父がコレクションしていたドロー イングと、野原で拾って乾燥させたケシの実

祖父がコレクションしていたドローイングと、野原で拾って乾燥させたケシの実

アト リエの一角にしつらえた、ドライフラワールーム

アトリエの一角にしつらえた、ドライフラワールーム

手もと

マグノリアの蕾を描くソフィーの手もとを、ミラステラのジュエリーが飾る。左手には紫陽花のリング、右手にはシーケールの種を模った粒がいくつもゆらゆらと揺れるリング。いずれもローズゴールド

ソフィー

庭の植物をチェックするソフィー。この茂みに選んだのは、赤の野バラと、青い花を咲かせるキケマン。背後にたたずむ、敷地内にもともとあったチャペルのステンドグラスからとった2色だ

暖炉の上のディスプレイ。

暖炉の上のディスプレイ。左から夫からの贈り物の花の絵、ソフィーの母の写真、義父の籐のコップホルダーなど。

コレクション

右のランプはエットレ・ソットサス。風景画は夫妻のコレクションより、イギリスの画家マイク・ジョン・ショーの作品。義父のものだったゲリドンの上には、クリストフルの歴史的なシルバーウエアの数々が

とれたての野菜を入れたカ ゴ

とれたての野菜を入れたカゴは、日本で茅葺き屋根を見に高山を訪れた際に購入した。

書棚

リビングルームの書棚。ソファにはジオメトリックな柄を

キッチン

ファブリックの花モチーフが、窓からの眺めに呼応する
キッチンには花のモチーフがあふれる。カーテンとテーブルクロスはナタリー・ファーマン=ファーマによるファブリック・ブランド「デコール・バルバール」で。奥の大皿はソフィーが大好きでミラステラのブティックで展示もした、シモーヌ・ペロットの作品。キャンドルスタンドはクリストフル

Sophie Bouilhet-Dumas●ソフ ィー・ブイエ=デュマ
Sophie Bouilhet-Dumas●ソフ ィー・ブイエ=デュマ

パリでシルバーウエアの老舗「クリストフル」の家系に生まれる。キャリアの初期には、ロンドンの磁器メーカーやエルメス、ポール・スミスなどでオブジェのデザインを手がけた。建築家で家具デザイナー、ジオ・ポンティが祖父の叔父だったことから、’18年にはパリ装飾芸術美術館で「ジオ・ポンティ」展を企画・構成。同年に自身のジュエリーブランド「ミラステラ」をローンチ。夫はエルメスのアーティスティック・ディレクター、ピエール=アレクシィ・デュマ。

撮影/Tom Mannion 取材・文/Minako Norimatsu ※エクラ2026年4月号掲載

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