ファインダイニングから大衆酒場、バーや角打ちまで、日本全国を食べ歩く。ライター佐々木ケイがリアルに食べた、飲んだおいしい店を紹介。12月は、2024年を振り返り、どうしても年内中にお伝えしたい3軒を。2軒目は、岡山県瀬戸内市にある「備前福岡 一文字うどん」。
全国津々浦々、豊かな経験による独自の切り口で取材、執筆。その守備範囲は食、酒、旅をテーマに、飲食店、生産者、酒類、ホテル等と幅広い。JSA認定ワインエキスパートで、特にイタリアワインに詳しい。シェフやワイン関係者からの信頼も厚い。『éclat』をはじめ、『BRUTUS』など連載多数。小誌11月号の出雲特集の取材・執筆も担当。
Instagram:@sasaki__kei
ワンコインの贅沢、デスティネーション セルフうどん
「備前福岡 一文字うどん」岡山県瀬戸内市
2024年は縁あって岡山へ三度旅をし、数年来心に秘めていた店へ行くことができた。料理人、ビール醸造家、陶芸家など、岡山の食のプロたちの誰もが推すうどんの店だ。
自ら小麦を育て、自家製粉した粉で打つうどんを、セルフサービスで。うどんそのものに注ぐ並外れた情熱と、「セルフ」という業態のギャップがすさまじいのだが、扉を開けた瞬間にすべてが腑に落ちた。明るくて清潔で広々と快適な店内で、注文を取る女性のきびきびと温かな声がリズムをつくっていた。
うどんは小麦違いの2種があり、麵の量や温かい・冷たい、具材の組み合わせまで選択肢が豊富で、なかなか心が決まらない。結局、麵を小にしてかけとざるの両方を頼んだ。人工的な「もっちり」とは違う自然な歯ごたえ、噛んで味わう香りと甘味。だしの味も贅沢だった。よそから来た我々が「じ~ん」と、深い感動に包まれているそばで、ビジネスマンから子供連れまで、地元の人たちが”いつもの”昼食を楽しんでいる様子が羨ましい。
ご店主がいらしたので挨拶し、いろんな人に薦められていてやっと来られた旨を伝えると、入口脇の製粉所へ案内してくれた。製粉方法で変わる風味、栄養素について話をしながら「小麦は煮ても焼いても食えない」と、たぶん大事なことだから二度言われた。製粉は、大事。真に安全でおいしい食こそ「どんな人でも気軽に食べられるものでなければ」という優しさこそが、この店の本質なのだと思う。
セルフ(小¥240~!)もあるが、注文して作ってもらうメニューも。初心者はまずざるうどんを注文。感涙のワンコイン価格
天ぷら、かき揚げなどをつまみながらうどんを待つ。仕事の合い間でなければ一杯飲みたかった
だしをたっぷり味わいたくてかけうどんも。牛窓港の魚介だしは日替わりなのだとか
真っ白でないのは、栄養価の高い胚芽や表皮を含む全粒粉を使用しているから。小麦はふくほのか、しらさぎの2種(写真はふくほのか)
「うどんは伝統食なのに、小麦はなぜ輸入?」との疑問から、二代目の大倉秀千代さんが約30年前から小麦栽培、石臼での製粉をスタート。尊い。