ファインダイニングから大衆酒場、バーや角打ちまで、日本全国を食べ歩く。ライター佐々木ケイがリアルに食べた、飲んだおいしい店を紹介。今回は、"とにかく旨い肉"が食べたいときに訪れたい東京 六本木にある「祥瑞(しょんずい)」。
全国津々浦々、豊かな経験による独自の切り口で取材、執筆。その守備範囲は食、酒、旅をテーマに、飲食店、生産者、酒類、ホテル等と幅広い。JSA認定ワインエキスパートで、特にイタリアワインに詳しい。シェフやワイン関係者からの信頼も厚い。『éclat』をはじめ、『BRUTUS』など連載多数。
Instagram:@sasaki__kei
東京の夜の熱気、豪快な肉とワイン。
「祥瑞(しょんずい)」東京・六本木/ビストロ
30年以上の歴史があるが、ステーキが主役の今のスタイルになったのは15、16年前のこと。私が通い出したのものその頃で、歴代のスタッフのこと、亡くなられた創業者の勝山晋作さんとのこと、ワインの造り手や関係者との出会いなど、個人的な思い出は数えきれないほどある。けれど、今の「祥瑞」の魅力は、もっとフラットなところにある気がする。とにかく旨い肉、決して外れのないワイン、密やかなロケーションやそこに渦巻く東京の夜の熱気。それらを現マネージャーの柴山健矢さんがスタッフと一緒に盤石な店のカラーにしてきた。
焼きの香ばしさも味なステーキ。フルール・ド・セル、マスタードで。
もちろん元からあった美点だけれど、ナチュラルワインが急速に広がっていった2010年代はその「聖地」と言われ、決してフラットな顔などしていられなかった店だ。時代を経てゆるぎない――古典酒場のような――東京の景色になった。それが今の「祥瑞」なんじゃないだろうか。
多すぎず少なすぎないメニュー、ワンオーダーのシステム、料理のシンプルさや提供されるテンポなどすべてが、目まぐるしい東京でパワフルに生きる人の欲望にフィットしている気がする。入口の重い扉はいつも風圧でさらに重さを増していて、一度閉まると外の世界・時間から切り離されたような不思議な感覚に陥る。
ブランドや部位、サイズもさまざまな牛肉から好みを選ぶ。
鮮魚のカルパッチョ。エシャロットが効いている。
マッシュルームのサラダ。シンプルだけれどワインに合う。
「祥瑞(しょんずい)」