話題の料理人の新店、洗練された北朝鮮料理、そして伝統茶と菓子の美しきマリアージュ。そこには、ただ“おいしい”にとどまらない、大人の感性を刺激する体験が。美食が集まるソウルの“食”のトレンド最前線!
今一番の熱視線。あのアン・ソンジェシェフの店が再始動!
【梨泰院】MOSU SEOUL
南山の高台に位置する韓国最高のダイニング
ソウルの喧騒から離れ、静寂に包まれる漢南洞。韓国初のミシュラン三ツ星に輝いた『MOSU SEOUL』が、’25年3月にこの場所で再オープンした。「家に遊びにきたかのような、自然体でリラックスできる空間で食事を楽しんでいただきたいです」と話すオーナーシェフのアン・ソンジェ氏。Netflix『白と黒のスプーン』の審査員としても脚光を浴びたスターシェフだ。韓国食材をベースに枠にとらわれないメニューは、夜のコースのみの8品。エホバッ(朝鮮かぼちゃ)を麵に見立て、蒸し汁をソースとして添えるなど、素材のキャラクターを最大限に引き出すのが彼の信条。素材選びに対しても、「例えばアワビなら、自分が求めるものは、穏やかな海にいるのか、冷たい海の底にいるのか、徹底的に探し出します」とこだわる。「伝統もとても大事ですが、それ以上に変化しつづけ、進化することに重きを置いています。キムチの発酵が伝統食なら、私は韓国に根づいた食材で発酵をさらにどう生かしていくのか。その上のステージを目ざして努力をしています」。器や家具など細部にまでシェフの美意識と優しさが息づいた“家”では、旬の韓国を五感で味わう特別な体験が待っている。
’60年代後半の邸宅をリノベーションした空間は世界的建築家のチョ・ミンソク氏が手がけた。高台にあり、大きな窓からは美しい木々や山を望む。
曲線美が優しい雰囲気を醸すエントランス。横にはシェフこだわりの庭も
済州島産イシビラメの窯焼き。魚の骨とオリーブで仕立てたソースとキャビアを添えて
懐石料理にも精通するシェフが韓国の素材を使い再解釈したごま豆腐。日韓交流への思いもこめて
10代でアメリカに移住し日本料理やフレンチで修業したアン・ソンジェシェフ。予約は毎月15日にオープン。夜のコースW420,000
窯で焼いたのりのカップにポテトサラダと甘エビをのせて
韓国らしさを感じるエホバッグクス(麵)
DATA
ソウル特別市龍山区フェナム路41ギル 4
서울특별시 용산구 회나무로 41길 4
17:00~23:00
定休日 月・日曜、1月1日、旧正月、旧盆
要予約(予約は「CATCH TABLE」から)
https://www.mosuseoul.com/
北朝鮮料理の“進化系”が続々と
【麻浦】リブッパン 리북방
北朝鮮出身の祖母の故郷の味を洗練のひと皿に
「北朝鮮料理を“おまかせ”で提供するのは世界初」と語るのは、アメリカの大学で料理芸術を学び、NYのミシュラン三ツ星フレンチなどで研鑽を積んだチェ・ジヒョンシェフ。洗練された感性で仕立てた北朝鮮料理が新鮮だとソウルの食通の間で注目の一軒だ。「北朝鮮出身の祖母の手料理で育ったので、店を出すなら原点の味で勝負したかった」と、コースは祖母の故郷、咸鏡南道・遮湖地方の名物スンデ(豚の腸詰め)が主軸。韓国では主に春雨を詰めた屋台料理として親しまれるが、ここでは豆腐や卵、鴨肉などを用いて“元祖の味”を追求しつつ、ヌーベルキュイジーヌへと昇華。薬味のアミの塩辛やハチミツ味噌との相性も抜群だ。「辛い料理はゼロ。定番に少し飽きたら立ち寄ってほしい」とシェフ。カウンター越しにはスンデをゆでる大きな釜があり、ライブ感あふれる空間も心地いい。
野菜スンデ、卵と餅米を詰めた白スンデ、豚の血と脂身を詰めたアバイスンデ、鴨スンデ。どのスンデにも共通する素材は豆腐。それぞれに合う薬味を添えて。昼と夜いずれのコースでも4~5種のスンデを味わえる
豚の腸に具材を詰め、ゆでて冷ますを繰り返す。毎週火・木曜に1週間分約250㎏のスンデを仕込む
昼のコースW59,000(7品)と夜のコースW89,000(9品)から。締めにかまどで炊いた釜めしがつく。
北朝鮮・江原道の港町に伝わる元山チャプチェ。鯖、柿、梨などに自家製の桃の発酵酢をかけて
メミル(そば粉麵)を使用した、ゆで豚をのせた冷麵。冷ました豚肉を使うのも北朝鮮の食文化から
チェ・ジヒョンシェフ(左)はNetflix『白と黒のスプーン』に出場し一躍有名に
DATA
ソウル特別市麻浦区麻浦大路1ギル16 2F
서울특별시 마포구 마포대로 1길 16 2층
予約可能時間は、月~金曜12:30、19:00(火・木曜は19:00のみ)、土・日曜12:30、17:00、19:30
無休
要予約(予約は「CATCH TABLE」から。「LEE BUK BANG」で検索を)
Instagram:@leebukbang
【安国】無垢屋(ムグオク) 무구옥
築70年の趣(おもむき)ある伝統韓屋で鶏をまるごと味わう
昨年12月にオープンした北朝鮮式参鶏湯の店。参鶏湯といえば鶏の腹に餅米や朝鮮人参、ナツメなどを詰めて煮込んだ料理だが、ここはゆでた若鶏(具材は詰めない)、鶏スープ、白めしを別々にし1人前の定食で供すのが特徴だ。北朝鮮には鶏とニラを一緒にゆでて食す料理があり、そこにヒントを得たのだそう。軟らかくてジューシーな鶏肉は、そのまま食べても、濃厚なスープにくぐらせても、白めしと一緒に食べてもよし。さらに葱生姜ソース、ハムチョ塩(厚岸草を加えた塩)、韓方醤油をお好みでつけるもよし。連日行列ができるのも納得の、期待を裏切らないひと皿。
’54年に建てられた韓屋を改装。今年、聖水に待望の2号店をオープン予定
国産若鶏を一日150~200羽使用し長時間煮込んだスープは、ポタージュのよう。鶏だしの優しい風味があとをひく
「イカと鶏の和え物」W9,500。せり、大根がアクセントに
「参鶏白飯」W18,000。スープには別添えの山参培養根、義城にんにくをお好みで
DATA
ソウル特別市鍾路区栗谷路1ギル7
서울특별시 종로구 율곡로 1길 7
11:30~15:00(14:00LO)、17:30~21:00(20:00LO)
無休
整理番号の遠隔登録は「CATCH TABLE」で可能
Instagram:@muguok_seoul
【教大】ソグァンミョノク 教大本店 서관면옥 교대본점
冷麵新時代を牽引(けんいん)する新名店で最旬の一杯
今、韓国では平壌冷麵が一大ブーム。名店といえば老舗がお決まりだったが、最近は素材や盛りつけにこだわり、心地いい空間とサービスで勝負する店が増えている。その先駆けがここ。代表のソン・ゲミョン氏は「新時代の冷麵文化を切り開いていきたい」と意気込む。麵はデンプンなどのつなぎをいっさい使わず、済州島産そば粉100%。店内の石臼でそばの実を毎朝ひき、鮮度を極める。冷麵の生命線であるユクス(だし)は韓牛の新鮮な肉のみで煮出し、その日に作ったものを翌日には使いきるという徹底ぶりだ。「冷麵が最もおいしいのは、そばが生きる秋から冬」と代表。旬の一杯を堪能したい。
「平壌冷麵」W16,000。透き通ったユクスは牛骨を使わず、肉だけで煮出した証し。コクのある牛だしが胃にしみわたる
「コルトン冷麵」W18,000。きのこ、大根、えごま、のりなどを混ぜて供すあえ麵。生えごま油としょうゆを回しかけて
毎朝ひきたてのそば粉を使用
’19年開業の本店。今年3月、3軒目が新世界百貨店本店にオープン
DATA
ソウル特別市瑞草区瑞草大路56ギル11
서울특별시 서초구 서초대로 56길 11
11:00~15:00(14:50LO)、17:00~21:00(20:30LO)
定休日 旧正月、旧盆
Instagram:@seogwanmyeonog
伝統茶×伝統菓子、麗しきモダンなマリアージュ
【明洞】HOUSE OF SHINSEGAE Dessert Salon
都会のど真ん中に誕生した、大人が今訪ねるべき場所
今年4月、新世界百貨店本店に誕生した新たな商業施設「ザ・ヘリテージ」5階のデザートサロンが評判だ。ここでは新世界百貨店の韓食研究所が、伝統料理研究家のソ・ミョンファン氏や老舗茶舗の18代目キム・ドンヒョン氏と考案した餅や韓菓、伝統茶で客人をもてなす。シグネチャーの茶菓セットは、迎え茶である紅花茶の優雅な香りを楽しんだあと、4種から選べる本茶とよもぎ餅などの5種の伝統菓子が供される。菓子は一貫して上品な甘味が印象的だ。夏限定のピンス(かき氷)、冬限定のあずきがゆなど季節のデザートを目当てに訪れる人も。菓子は購入ができ、おみやげにも最適。ソウル市有形文化財に指定された旧第一銀行の歴史的な近代建築を生かし、美しく復元された「ザ・ヘリテージ」は、随所に抑制のきいた華やかさが宿り、空間に浸るだけでも十分に行く価値がある。
「代表茶菓子セット」W35,000。迎え茶と急須で供される本茶、菓子5種の組み合わせ。本茶は橘香、梅香、菊香、桂香の4種のブレンド茶から選ぶ。菓子は干し柿団子、松の実団子、よもぎ餅など
お茶に精通したスタッフが店内のオープン空間でお茶をいれる
お茶は単品でも注文可。3種の菓子がつく。オリジナルブレンド茶の「梅香」W25,000。コーヒー好きには黒大麦を焙煎していれる「麦珈琲茶」も
中庭を望む広い店内。午前中がねらい目。同フロアには伝統工芸の展示、4階にはミュージアム、地下1階には工芸のギフトショップなども
DATA
ソウル特別市中区南大門路42ザ・ヘリテージ5F
서울특별시 중구 남대문로 42 더 헤리티지 5층
月~木曜10:30~20:00(19:20LO)、金~日曜、祝日10:30~20:30(19:50LO)
定休日 月1回(百貨店と同一定休日)、旧正月、旧盆
テーブル予約は「CATCH TABLE」で可能
https://www.shinsegae.com
【弘大入口】1994 SEOUL
店主の生まれ年を冠した店は若きセンスであふれる
近年増えているティーペアリングの店の先駆け的な存在がここ。餅屋を営む母をもつ、’94年生まれのイ・ミョンジェ氏が「市場の食べ物としてではなく、本来は優雅で風情のある餅の世界観を広めたい」と’23年にオープン。茶道はチョ・グクソン氏、韓菓はソ・ミョンハン氏といずれも大家のもとで学び、その確かな腕と卓越したセンスは、茶をいれる所作や菓子に漂う洗練さからも感じとれる。一日3回のコースのみで、メニューは2カ月ごとに替わる。お茶は四季のブレンド茶など2種、菓子は餅菓子や薬菓など多彩な約7種。美しい器や調度品も心を満たす。
カウンター6席のみ。2階では菓子やお茶、器などを販売
コースは80分W80,000。小さなお重で供される米粉の蒸し餅、栗のきんとん、ナツメの蒸し餅。秋は河東産の発酵茶に柿の葉、クコの実などをブレンドしたお茶と
河東産の冷たい紅茶には、中に栗やナツメを詰めた柚子のシロップ漬けを
DATA
ソウル特別市麻浦区ソンミサン路23アンギル20-12 1~3F
서울특별시 마포구 성미산로 23안길 20-12 1~3층
販売 10:00~18:00(コースは木~日曜12:00、14:00、17:00)
定休日 火曜、旧正月、旧盆
コースは要予約(予約は「CATCH TABLE」から)
Instagram:@1994seoul_official
【ソウルの森】OMOT
ティーセレモニー形式で韓国茶の世界に浸る
ほの暗い照明の神秘的な空間に癒しの音楽。韓国の伝統茶を五感で堪能できるティーサロンはその供し方もユニークだ。「毎年テーマを決めていて今年は“十長生(シプチャンセン)”。韓国には太陽、山、水、石など長生きを象徴する10のモチーフがあるのですが、そこから物語を仕立ててお茶を演出します」と語る共同店主のノア氏とヘジン氏。例えば十長生のひとつである鶴がくわえる桃に着想を得て、白桃と河東産の白茶を合わせる。“ティーセレモニー”と呼ぶコースは5種類のお茶とデザートのペアリング。随所に伝統茶の文化や歴史にまつわる豆知識が織り込まれるのも楽しい。
ティーセレモニーは75分W35,000。白桃にギリシャヨーグルトとカカオグラノーラを添えたデザートに河東産の白茶を。店内では茶葉や茶器の販売も
解説担当はノア氏。「茶葉はすべて韓国産。智異山の周囲に多い野生の茶畑の葉をよく使います」
十長生の石から済州島の火山をイメージ。ココナッツウォーターベースのドリンクは、よもぎの粉末茶をのせて
DATA
ソウル特別市城東区ソウルの森2ギル12 B1
서울특별시 성동구 서울숲2길 12 지하1층
販売 12:00〜17:30、18:30〜20:30(コースは12:00、14:00、16:00、19:00)
定休日 火曜、1月1日、旧正月、旧盆
コースは要予約(予約はInstagramのDMなどから)
Instagram:@_omot_