金沢が常に輝き続ける理由のひとつに、芸術や文化を生み出し、高める、心の豊かさがある。美しいもの、新しい考え、技の探究……。障害福祉と伝統工芸をかけ合わせ、新たなアートへと導く「CACL」代表・起業家の奥山純一さんが、今の金沢のアートを紐解く。
人を思う優しさで、この地の文化の“マドラー”役に
九谷焼の産地、石川県能美市に構える社屋にて。10tもの陶磁器片を保管する倉庫も完備。能登の特徴的な風景だった黒瓦も震災で多くが廃材に。建築家の永山祐子、建築材料の最大手、LIXILとともに、その黒瓦をアップサイクルし新たな建材にする共同プロジェクトもスタート。「あたりまえを疑うことをやりたい」
九谷焼と輪島塗、石川県の二大工芸を結び、新たなアートへと導くのが奥山純一さんだ。もともと障害福祉事業で社会貢献にも視線を向けており、アートを愛するコレクターでもある。その起因は
40代で突然難病を発症したことでメンタルをくずし、社会と切り離されていく母親の姿だった。
「ある時、九谷焼の工房で目にした廃棄される陶磁器片に、母の人生が重なりました。はみ出したカケラに命を加えたいと」。
その後、能登の地震が起きる。被災した輪島塗職人に手をさしのべる中で、九谷焼や珠洲焼の陶磁器片を輪島塗で金継ぎのようにつなぐことを思いたつ。取り組みは話題となり、’25年秋にはパルファム ジバンシイとのコラボレーションも実現。
「文化が生活に溶け込む土地で、混ぜ合わせる“マドラー”役になれれば」。金沢には外からの新しい発想を受け止める度量がある。