コウケンテツさんが教えてくれた春野菜のレシピが集合。前菜的なナムルに始まり、ヘルシーなメイン、ごはんもの、そしてスープまで。香りとほろ苦さ、そして軟らかな甘さ。春の野菜はそっと、体を目覚めさせます。素材本来の味そのままに、ごく淡い味つけで。韓国家庭料理の優しく鮮やかなフルコースです。
「韓国料理といえば焼き肉をはじめ、肉中心のイメージをもつかたも多いかもしれません。けれど本来は、その季節ごとの野菜をたくさん食べる料理。春には香りのいいものをたくさん味わって体を目覚めさせるんです」とコウさん。
「淡い味つけで、春野菜ならではのほろ苦さや繊細な味わいを楽しみます。僕も、母が菜の花のナムルを作ってくれると、『ああ、春になった』と感じたものです。韓国の人はとにかく山菜が大好きで、トレッキングの名所には必ずといっていいほど、とれたての山菜を食べさせてくれる食堂があるんです。しょうゆも味噌もキムチもすべて手作りで、店ごと、地域ごとに特徴があってとてもおいしい。なかには、『日本だったら雑草じゃないの?』っていう山菜を出してくれるところも(笑)。そんなとれたてを、さっとゆがいてごま油と塩くらいで軽くあえたナムルが最高なんですよ」
にんにくや赤とうがらしを使った刺激ある味つけの印象が強い韓国料理ですが、このような素材そのものを生かす淡い味わいの料理も実は多いのです。
「食材そのものの色合いを生かしたナムルがよく食卓に上がることでもわかるように、韓国料理は色のバランスも大切にします。五味五色の考え方で、青・赤・黄・白・黒の五色の素材と、辛・甘・酸・塩・苦の五つの味わいをバランスよく取り入れることが、体を健やかに保つ秘訣とされているんですね。例えば、ゆで豚を葉野菜で巻いて食べるポッサム。肉料理ではありますが、ナムルを中心にたっぷりの野菜も添え、自然に野菜をたくさん食べられるように工夫されています」
そして、韓国料理で欠かせないものといえば、体を温める汁もの。「特にワカメスープは、家庭でもお店でも愛されているメニュー。鶏や豚など、使うだしはさまざまですが、今回は春らしく軽やかに昆布だしで。ワカメスープがおもしろいのは、シンプルにも豪華にもできるところ。鮑やウニを入れたものまであるんですよ。今回は、母の故郷である済州(チェジュ)島でよく作られる一杯を。タイを使って、少し贅沢に仕上げています」
コウさんの韓国の器を拝見
韓国でよく足を運ぶのは、市場の道具店や韓国の作家の器店。アルミのマッコリカップは市場で見つかる。手前の急須とカップは韓国伝統茶の店で購入。奥は10年ほど前に購入した作家ものの炊飯土鍋。左は日本でも注目される韓国の作家、リー・ヨンツェさんのカップ
韓国料理をベースに幅広いジャンルの家庭料理を提案。テレビ、雑誌、書籍など多方面で活躍。登録者数220万人超えのYouTubeチャンネル『Koh Kentetsu Kitchen』でも、日々の食卓に寄り添う料理を発信している。
撮影/邑口京一郎 スタイリスト/朴 玲愛 取材・原文/福山雅美 ※エクラ2026年5月号掲載