東大寺や春日大社、興福寺など、名所をめぐっても、デイトリップのため駆け足で後にすることが多かった奈良。最近は奈良の歴史と静寂に身を置けるハイエンドホテルが増えている。今こそ、1300年の歴史をもつ古都のおおらかさに抱かれ、知的好奇心を刺激し、口福を満たす充実のデスティネーションへ。
VILLA COMMUNICO(ヴィラ コムニコ)
若草山のふもとの薪火ガストロノミー
今、フーディたちが目ざすオーベルジュ
シェフ堀田大樹さんはイタリアで修業後、京都や奈良のレストランで経験を積み、’18
年、奈良・東生駒に「コムニコ」を開店。奈良の文化や歴史を伝えるローカルガストロノミーは人気を呼び、遠方から訪れるゲストも増えていった。「帰りの時間を気にしながら料理を提供し、食べてもらうことは、ゲストにとっても私にとってもストレスに感じて」と’24年、目の前に若草山が広がる奈良公園内にヴィラをオープンした。若草山の山焼きや東大寺二月堂のお水取りなど、ヴィラ周辺の火にまつわる神事に着想を得て、主な熱源は薪火に。蒸したり、揚げ焼きにしたり、使い方も多彩だ。堀田シェフの料理はボーダレスで、一見斬新に見えるが、素材のポテンシャルを引き出し、食べるとスーッと体にしみわたる。「レストランから出たあとも同じ世界観を感じ、客室に戻ってからも余韻に浸ってもらいたい」と、ヴィラ全体の空間づくりも堀田シェフが監修。左官仕上げの美しい土壁で統一された館内も美しく、非日常へエスケープできる。
『VILLA COMMUNICO』のコースより。寒ブリに昆布だしでゆでたレタスを重ね、柑橘の不知火(しらぬい)や発酵麴ウォーターを使ったソースをかけて。ブリしゃぶをイメージ
奈良県で生まれ育ち、奈良愛あふれる堀田シェフ
店内には薪窯を備えた作業台が設けられ、照明を落とした空間は舞台のように目をひく
目の前は若草山。ガラス窓の向こうには日なたぼっこする鹿の姿も
肉のうま味がジワリと広がるベストな火入れ。滋賀県の精肉店サカエヤの熟成牛とサラダ
宿泊しないといただけない朝食。塩麴に漬けた鴨の焼き物や伝統野菜である大和真菜のおひたしなど、食材はほぼ奈良産。奈良の郷土料理である茶がゆをオマージュし、野菜のだしと紅茶で炊いたかゆも楽しめる
もとは土産物店だった建物を外観だけ残し改装。唯一改装前の和の趣(おもむき)が残るラウンジ
客室は全5室
発酵・熟成食品が並ぶ棚
Data
奈良県奈良市雑司町486の5
☎050・3176・1787
1室2名利用1泊2食つき
1名¥67,000 〜
https://villa-communico.com/
撮影/伊藤 信 取材・原文/天野準子 ※エクラ2026年5月号掲載