季節の移ろいや情景を簡素にして見事なまでに美しく表現する京都の和菓子。1882年創業の老舗、塩芳軒では二十四節季に合わせてほぼ半月ごとに菓子を変えて販売。その一瞬の美しさとおいしさを求めて、いざ京都へ!
京都の和菓子には味のよさや姿形の美しさはもちろんのこと、自然をいかに伝えるかという心がある。「季節の移ろいと人の情感を重ねながら形にしていくのが和菓子やと思います。花鳥風月や歳時に託すことが多く、それを時におおらかに、時に間近で緻密にとらえ、自由な心で形にしています」と語る塩芳軒の5代目主人・髙家啓太さん。
塩芳軒では二十四節気に合わせてほぼ半月ごとに菓子を替え、9月後半ごろからショーケースの中は秋めいてくる。一年の中でも題材が豊富なときで、先駆けは重陽や秋草、名月。やがて菊や紅葉となり、菊は重陽の菊を表す「菊の香」から「菊日和」「まさり草」「光琳菊」を経て、1月下旬の「寒菊」まで長く続く。紅葉の菓子は変化の妙があり、「山路」「照葉」「初霜」「並木道」「錦秋」「山もみじ」などが順に登場し、葉先の色づきに始まり、紅に染まり、霜に震え、最後は朽ち葉へと移り変わる。素材も秋になると新物の栗やさつまいも、山いもやあずきが出まわり、白あんに小麦粉を混ぜて蒸してよく練ったこなしという生地や羽二重餅がよく使われ、味わいも増す。「わずかな違いで表現しているので、想像力をもって味わっていただくといろいろな秋を感じてもらえます」。小さな秋ながら、奥深く、楽しみはつきない。
塩芳軒
1882年創業の菓子司。洗練された風味と美しさをもった菓子を手がける5代目・髙家啓太さん。●京都市上京区黒門通中立売上ル飛弾殿町180 ☎075・441・0803 9:00 ~17:30 ㊡日曜、祝日、月1回水曜不定休 取り置き可 生菓子¥400