1755年の創業以来、「ヴァシュロン・コンスタンタン」のメゾンには、卓越した時計製造の追求とパイオニア精神があふれている。創始者のひとりは永遠の時に思いをめぐらせ、またもうひとりは世界に通じる扉を開いた。その精神を伝える時計「オーヴァーシーズ」とともに旅に出よう。
ヴァシュロン・コンスタンタンのオーヴァーシーズ
「創業より270年以上にわたって、途切れることなく時計製造を続ける世界最古の時計マニュファクチュール」。
ヴァシュロン・コンスタンタンを語るときに、この一文は欠かせない。しかしこのメゾンの本質は、長い歴史に甘んじることなく、常に革新を怠らない点にあった。
18世紀のスイス・ジュネーブには、優れた時計職人たちが集結し、時計作りに適した明るさの屋根裏部屋(キャビネット)にアトリエを構えたことから、「キャビノティエ」と呼ばれていた。彼らは時計製造だけではなく天文学や算術、芸術、自然の摂理にも通じていて、人々の尊敬を集めていたという。
そんなひとりだったメゾンの創設者ジャン=マルク・ヴァシュロンは、1755年に内弟子を雇い、工房を設立。1819年には海を越えて販路を拡大するビジネスマンのフランソワ・コンスタンタンを共同経営者に迎え、ヴァシュロン&コンスタンタン社が誕生した。
伝統を受け継ぎ文化や芸術を後援してきたこのメゾンが「オーヴァーシーズ」の体現者として、芸術家であり探検家のザリア・フォーマンを選んだのには必然性があった。気候変動によって変わりゆく自然の姿に警鐘を鳴らすという社会的な意義は、現代に欠かせないコンセプト。さらに彼女の作品からは過去と現在、そして未来をつなぐ時間の経過が目に浮かぶ。
例えば作品の題材となった氷塊の中には、閉じ込められたままの太古の気泡が漂っている。相通じる壮大な時間の概念を共有する、芸術作品と時計。「オーヴァーシーズ」を通して、未来へ続く悠久の時を感じたい。
ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、ザリア・フォーマン。探検家でもある彼女は、20年近く極地を旅して、変わってゆく地球の風景を題材にした作品を発表している。
’23年メゾンは「オーヴァーシーズ」の顔となる芸術家として、彼女を選んだ。後援を受けてアイスランドを訪れた彼女は、温暖化で溶け出す氷河から太古の気泡が放たれる音に魅せられ、そのかけらである氷塊の一瞬の姿を、メゾンのための特別な作品「フェルスフェアラ、アイスランド no3」に表した。
旅する心を日常にもたらす知的な美しさのきわだつタイムピース
「オーヴァーシーズ」が誕生したのは1996年。それ以来革新を繰り返し、その時代に即した最新の美しい姿で登場する。名前の由来は、フランソワ・コンスタンタンが七つの海を渡って、メゾンの新たな可能性を切り開いたことから。
ブレスレットのリンクとベゼルの形が、メゾンを象徴するマルタ十字を思わせる。ブレスレットと付属の2本のストラップを、装いに合わせて簡単につけ替えることができる、インターチェンジャブル仕様。
「オーヴァーシーズ 33mm」(33mm径/SS、ダイヤモンド約0.8ct、5気圧防水、クォーツ、デニムブルー色のレザーとラバーのストラップ2本を付属)¥2,772,000/ヴァシュロン・コンスタンタン
photography:Masanori Akao(whiteSTOUT) styling:Yukari Komaki text:Hiroko Naruse ※略号は次のとおり。SS=ステンレススチール ※エクラ2026年2・3月合併号掲載