過去と現在が交錯する街。尾上右近さんの「歌舞伎俳優の京都」 五選

歌舞伎俳優にとって、歌舞伎発祥の地・京都は特別な場所。ふだん東京に暮らす尾上右近さんにとっても思い入れの深い街だ。数あるお気に入りの中、今回訪れたのは、このためだけに訪れたいくらい特別な縁を感じるスポット。過去と現在が交錯する空間で、右近さんが感じたこととは?

1.伏見稲荷大社

「歌舞伎の人気演目『義経千本桜』の通称「鳥居前」に登場する伏見稲荷大社。10代のころから、たびたび訪れている特別な場所です。最初に来たときは、舞台道具そのままの風景にテンションが上がって、坂東巳之助さんとふたりで「狐六法」を踏んだ覚えが(笑)。東京・歌舞伎座の敷地内にもお稲荷さんが祀られていて、ここはその総本山。いつ来てもぐっとくるものがあります」(尾上さん)。

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奥社への参道を囲む朱塗りの千本鳥居。その鮮やかさ、重厚感に圧倒される

全国に約3万社ある稲荷神社の総本宮。創建は奈良時代で、五穀豊穣、商売繁昌の神として長く庶民信仰を集めてきた。本殿は、稲荷山のふもとにあるが、稲荷山全体が神奈備とされており、右近さんは山の頂上まで登ったことも。朱塗りの鳥居が立ち並ぶ"千本鳥居"は圧巻で、外国人観光客の人気も高い。

京都市伏見区深草藪之内町68
☎075・641・7331 終日参拝可能
拝観料/無料 無休

2.東福寺 禅堂

歌舞伎のお化粧をする時間は、禅とよく似ています。鏡に向かって、気持ちを落ち着かせて、自分と対峙する。以前からそう思っていたので、有名な東福寺の禅堂で座禅を組むことができたのは、貴重な経験でした。高い天井、太い柱。その大きさに包まれていると、気持ちが自然と落ち着きます。室町時代の修行僧も同じように感じていたのかな?

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日本最古で最大の歴史ある禅堂。ここがひとつの宇宙空間のよう

臨済宗・東福寺派の総本山・東福寺。室町時代に建てられた禅堂は、寺の道場としては、現存する中では最古で最大。歴史ある内観からは、当時の禅僧たちの生活の一端がうかがえる。禅堂は、ふだんは閉じられているが、毎週日曜日は朝6時から座禅会が開催されるのでチャンス。参加費は不要。

ジャケット¥30,000・パンツ¥33,000/パーキング(マーカウェア) ベスト¥19,000/ヘムト PR(バーンストーマー) カットソー¥13,000/ダブルジェイケイ ベース
京都市東山区本町15の778
☎075・561・0087
9:00~15:30(11月は8:30~16:00)

3.嵯峨野 竹林の道

憧れの曾祖父・六代目尾上菊五郎は、「竹」にゆかりのある人。銀座にもっていた家を「竹心庵」と名づけたり、竹林の日本画を残していたり。僕もその絵が大好きで、幼いころ、まねして竹林を描く練習をしました。そんなこともあって、ずっと来たいと思っていたこの竹林。独特の涼やかさがあって、心がまっすぐになるような特別なパワーを感じます。きっとここには何かがいますね。

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平安時代の趣を今に残す竹林。情緒豊かな小径は絶好の散策コース

平安時代から貴族に愛された嵯峨野。とりわけ数万本の竹が生い茂る一帯は、当時の趣をそのままに残している。大河内山荘から野宮神社にかけて続く竹林の道をゆらゆらと歩けば、まるで平安時代にワープしたかのよう。毎年12月、京都・嵐山花灯路の期間中は、竹林もライトアップされ幻想的に。

カーディガン¥50,000・靴¥36,000/パーキング(マーカウェア) ニット¥37,000/スズキ タカユキ パンツ¥28,000(カモシタ ユナイテッド アローズ)・ストール¥22,000(fratelli luigi)/以上ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店
京都市右京区嵯峨小倉山田淵山町
嵯峨野観光鉄道・トロッコ嵐山駅から徒歩3分 京福電鉄・嵐山駅から徒歩12分

4.佐々木能衣装

お能の装束や歌舞伎の衣装をつくっていると聞いて、一度行ってみたかった『佐々木能衣装』。工房に入った瞬間、時の流れが変わりました。電気を使わない、昔ながらの手織りの世界。生み出される織り物は、鮮やかな色彩の中にも落ち着きがあって、色が前に出るだけでなく、引き込まれるような奥行きを感じます。職人さんの手の動きの確かさに伝統を支える人の愛と信念を感じました。

伝統を支えるのは、5人の職人と、フランスからきた手織り物の機械

創業以来、100年以上にわたり、能・狂言・歌舞伎などの装束を手がけてきた『佐々木能衣装』。その製法は、桃山時代からの能衣装づくりの流れを受け継いだもの。現在は、明治期より受け継がれている木製の織機と木製ジャカードを使い、5人の職人が手で織っていく。その繊細な作業に右近さんは終始感動。

ジャケット¥65,000・ベスト¥38,000/スズキ タカユキ シャツ¥24,000/パーキング(マーカウェア) メガネ¥45,
000/ジョイ エブリ タイム(Mr.Gentleman EYEWEAR) バングル¥34,000・リング¥15,000/ヘムト PR(20/80)
京都市上京区裏門通中立売上ル今新在家町202番地
☎075・414・0195

5.法然院

法然院には、今年6月に仕事で初めて訪れました。歴史を感じさせる苔。木々に溶け込む美しい山門。年月がつくり出す美しさは、奥行きがあって、京都は、自然と向き合う密度が濃いのだと感じました。実はここには僕の祖父・六代目 清元延寿太夫の相三味線だった清元榮壽郞さんのお墓があり、ご縁の深いお寺だと、あとで知りました。

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自然と調和し、季節ごとに美しさを変える情緒あふれる寺院

法然院の始まりは、浄土宗の開祖・法然上人が弟子とともに念仏修行をした草庵。ふだんは本堂に入ることはできず、伽藍の公開も春と秋の2回だけだが、白い盛り砂で水を表した白砂壇、名水が湧き出す泉など、素朴ながらも情緒あふれる境内にいると心は安らかに。近くには右近さんの好きな哲学の道もあり、静かに時を過ごすのに最適。

京都市左京区鹿ヶ谷御所ノ段町30
☎075・771・2420 6:00~16:00
eclat10月号掲載 撮影/長山一樹(S-14) ヘア&メイク/白石義人 スタイリスト/三島和也(Tatanca) 取材・文/佐藤裕美

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