【大人のオーベルジュステイ〈後編〉】薪火から生まれる美味!酒蔵の一角に立つリストランテ『VENTINOVE』

“豊かな余韻”を体に染み渡らせる「オーベルジュステイ」。今回は群馬県川場村のリストランテ『VENTINOVE』を紹介。すべての調理を薪火と薪竈で行い、料理の味を深め、店の個性を生み出している。

VENTINOVE(群馬)

VENTINOVE(群馬)

薪火で風土の味をつくる酒蔵の一角に立つリストランテ

食材の産地に拠点を置き、薪火の竈を使うことで、野菜料理がより、表現豊かに。イタリア料理から軸足をぶらさず、シンプルな味を磨き上げる。縁あって「土田酒造」の一角に店を構えたことから、日本酒も提供。発想からではなく“必然”から生まれたユニークなペアリングもキャラクターに。穏やかで的確なマダム・舞さんのサービスも店の顔。

「赤城牛サーロインのビステッカ」。

「赤城牛サーロインのビステッカ」。繁殖肥育を一貫して手がける「鳥山畜産」の黒毛和牛は脂切れがよく、赤身に凝縮感がある。現在の「土田酒造」のシンボル、生酛(きもと)造りで醸す「シン・ツチダ」とともに。

「以前に増して、料理が楽しくてしかたない」と、竹内シェフ

「以前に増して、料理が楽しくてしかたない」と、竹内シェフ

西荻窪時代からのスペシャリテ 「タリアテッレ ボロネーゼ」。

西荻窪時代からのスペシャリテ「タリアテッレ ボロネーゼ」。群馬県産の地粉で打つパスタでバージョンアップ。コースの締めは、常時数種類そろう手打ちパスタをソースとあわせて選べる

その日の野菜 がカウンターに、すべて地元産

その日の野菜がカウンターに、すべて地元産

朝食。

朝食。旅好きの竹内シェフ夫妻が、タイのストリートフードから着想を得たもち米のお粥に、下仁田ポークのアリスタや野菜の煮込み、シェフのお母様が作る漬物などを添えて。

テーブルなどの 家具は地元の職人にオーダー。 大きな窓が景色を切り取る

テーブルなどの家具は地元の職人にオーダー。大きな窓が景色を切り取る

DATA

群馬県利根郡川場村谷地2593の1(土田酒造敷地内)

☎非公開
定休日:月・火曜
料金/¥35,000~(1室2名利用時、2食つきの1人料金)

客室/1室
レストランのみの利用も可能、コース¥11,000~(15:00~19:00LO)、一日2組限定

“リミット”が味を深める。厳しさに鍛えられた美味

文/佐々木ケイ

東京・西荻窪で人気を博した『トラットリア ヴェンティノーヴェ』は、’22年、群馬県川場村でリストランテとして再スタートを切った。イタリアの修業先は精肉店併設の有名ステーキレストランで、西荻窪時代も炭火で焼く肉料理で鳴らした竹内悠介シェフ。新たな店の厨房ではすべての調理を、薪火と薪竈で行うことにした。「不便さはない」と話すが、これもまたリミット。独活(ど)のグリルを主役にした温かいサラダから赤城牛サーロインのビステッカ、かき菜のリゾットまで。直火の勢いや香りはもちろん、保温・蓄熱の特性を自在に操り、シンプルな料理の味を深め、店の個性を生み出している。

ダイニングから歩いて帰れる場所に整えられた客室は、「帰りを気にせずに」というおもてなしだ。確かに、だからこそワインも心行くまで、となるわけだが、それだけではない。自然と、そこで生きる人の日々が詰まった料理の余韻は、同じ自然の中でこそ増幅する。ホテルのような豪華さはなくても、しんとした静けさや星空、月の明かりが最高の“ファシリティ”になる。

<教えてくれた人>
●佐々木ケイ…食の記者・編集者。食、酒、旅をテーマに飲食店、生産者、ホテル等について取材、執筆。本誌をはじめ『dancyu』『BRUTUS』ほか連載多数。イタリアでは、これまで13州40軒以上のワイナリーを訪問。JSA認定ワインエキスパート。
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