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【小泉今日子さんインタビュー】心がブレそうになったときに支えてくれるのは“セルフシスターフッド”
12月13日からAmazonオーディブル(以下Audible)で配信される小説『ピエタ』。朗読を務めるのは、2011年に本作に出会い、ぜひ舞台化したいと10年以上にわたり構想を続け、プロデュースと主演を務めた小泉今日子さん。作品の魅力を誰よりも深く知る彼女の言葉は、エクラ世代がこれからを生きるための道しるべのようでもある。
悩み多き50代に人生の先輩からメッセージ!この先の人生、私をうまく生きるには?
人生の先輩が語る「私の50代と、これからの50代へ」
迷い、とまどい、体や気分の不調……揺れる年代をどう乗り越えたらいい? 大人の人生を自分らしく謳歌する先輩たちが、今、振り返って思うこと。
中尾ミエさん(歌手、俳優)
山は下りなきゃ登れない。次はもっと高く、と自分を信じて
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ダンスや水泳で体を鍛え、70代でアクロバットに初挑戦!
「50代……まあ、いろいろあるわよね。でも、私の子供くらいの年代じゃない? まだまだ若いわよ」
最近はあまりかけられなくなったこの言葉に心がゆるんでしまうのは、甘えだろうか? しかし、中尾ミエさんは、そんな思いを受け止めるように、おおらかに微笑む。輪郭に柔らかくなじんだグレイヘア。カラーリングをやめたのは、50代のときだった。
「似合うからとかじゃなくて、もうこの状態が自然だから。染めた黒髪って、やっぱり肌の色に対して強すぎるのよ。それに、どこか自分を隠してるっていう意識もあったと思うのね。いつも今ひとつ胸を張れない、というか」
自分は自分、いつでも堂々と──それが、歌手、俳優として60年の芸歴を重ねてきた中尾ミエさんの矜持。78歳の現在までの道のりは、常に新しい挑戦によって開かれてきた。近年、多くの人に衝撃を与えたのが、’19年、’22年に上演されたブロードウェイミュージカル『ピピン』への出演。サーカスの要素を取り入れたこの作品で、73歳にして空中ブランコで宙吊りになりながら歌唱するアクロバティックな演技を披露したのだ。
「公演後の楽屋に、みんな、感動して泣きながら来るのよ。稽古前、懸垂が10回できる体になっておいてといわれたときは『えぇーっ!』と思いましたけど、ダンスは30代くらいから始めていたし、50代からは本格的に水泳を始めてマスターズの大会に出場させてもらったりもした。基礎体力ができていたおかげで、1カ月以上の長い公演をやっても疲れませんでした。だから、体を動かすことだけはやっておいたほうがいいわね。50代はもうギリギリだけど、今始めれば、私のように70歳になっても大丈夫。この調子なら80代もいけるかな?と思ってます」
体の鍛錬だけでなく、50代以降はいくつかの習い事も新たに始めた。その中で現在、中尾さんの日々に張りをもたらしているのが、俳句。
「体が動かなくなったときにできる趣味ももっておきたいと思って始めたんだけど、例えば植物にしても、空模様にしても、自分がいかに身のまわりのことに注意を払っていなかったかということに気づかされましたね。今まで使ってなかった細胞が眠りから覚めたのかも?という感覚ですよ」
思いついたことはなんでもやってみる。「誰でもそうだと思うけど、50代からはちょっと暇になるしね」と中尾さん。確かに、私たちが今いるのは、人生の踊り場なのかもしれない。家庭も仕事も人間関係も、ひと通りの山谷を登って下りてたどりついた現時点。でも、そこからが肝心だと、言葉を続ける。
「誰にだってスランプはあるもの。そんなときこそ勉強や鍛錬をして知恵や体力を蓄えておけば、いつかついた力を試したくなりますよ」
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「完成してやることがなくなったら、それこそ人生、不幸じゃない? だから、常に目標をつくるんです。それが達成できたら、またその次を」
思いついたことは今すぐ。そして、失敗を恐れずに
「人間、上り調子のいいときばかりなんてありえないし、誰にだってスランプがある。それが人生でしょ? いったんは下りなきゃ、次の山には登れない。その、下りてくるときに自信をなくしたりするんだけど、そのときこそ勉強したり鍛錬したりして、知恵や体力を蓄えればいい。そうすれば、自分にどんな力がついたか試してみたくなるじゃない? 実感できれば次はきっと、前より高い山に登れますよ」
では、どこを目標にするべきか? それを見据えるのに、中尾さんがくれたアドバイスは3つ。ひとつは……。
「とにかく早く始めること! 50代だと、まだまだ余裕があるから『そのうちね』なんて思ってるでしょうけど、私たちくらいになると、もう一年一年が本当に貴重なんですから。老婆心でいいますけど、これと思ったことは早く始めたほうがいいです。『いつか』ってときはこないんだから」
2つ目は、「失敗を恐れないこと」。中途半端につけた大人のプライドは、逆に、仇(あだ)になるのだとか
「知らないこと、初めてのことに挑戦するんだから、失敗しないわけがないでしょ? それに人間、失敗したり、恥をかいたりすることが、一番の勉強になるんですよ。体だって、鍛えれば当然、筋肉痛になる。でも、それを積み重ねて乗り越えることで、本物の筋力がつくんですから」
そして3つ目は、「何事も完成しないものだと悟ること」。それはおそらく、人生も……そういうと、「完成なんかしたら、つまんないじゃん!」と、大笑いと力強い声が返ってきた。
「だって、完成してもう何もやることないと思ったら、逆につらいよ? 生きてるかぎり、今までと違う可能性を求めていないと。よく、亡くなった人のことを『志半ばで残念だったでしょう』というけど、完成してもう何もないってほうが不幸だと思う。だから私、常に目標をつくってますよ。で、それを達成したら次を。常にそこに向かっていないと、私だって自信がなくなっちゃう。自分なんか必要ないのかなって」
完成しない人生を、力強く歩む、その姿が“私”そのもの。そしてもうひとつ、中尾さんが教えてくれたのは、孤独の中に心を閉じないことだった。「今の目標は、毎朝公園に集まって一緒に運動する近所の仲間たちを教育することね。私より年長の人もいるけど、身長が伸びたとか、筋肉がついて胸が大きくなったとか、体って、動かしていれば、いくつになっても進化するのよ! そんなかたたちが元気に私のコンサートに来てくれたりするんだから、現役でいる意義もまだまだあるのかなって……。継続は力なり。これからも、みんなで努力していきますよ」
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歌手、俳優・中尾ミエさん
安藤優子さん(キャスター)
自分探しよりも“自己受容”が大事。がんばってきたことを否定しないで
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体と心を見つめ直し、40代後半から学びの場へ
政治、経済、社会問題に国際関係。どんなニュースを伝えるときも、まっすぐ前を見据え、私たちに真摯に語りかけてきた安藤優子さん。その姿勢は“背中”に支えられていたのだということが、お会いしてわかった。
「トレーニングを始めたのは40代から。背中に肉がつくのだけは避けたくて、特に肩甲骨まわりをよく動かしてました。運動していたせいか、更年期による症状はほとんど感じなかったです」
30代後半から報道番組で日本初の女性メインキャスターを務め、湾岸戦争などの海外現地取材も担っていた安藤さんの激務と充実。しかし、ふと立ち止まる瞬間には、不安も感じていた。「24時間、ファイティングポーズをとりながら、自分のキャパシティー超えのプレッシャーに追い詰められている状態。しかも、確実に年齢なりの変化が出てくるじゃないですか。体重が増えたり、体型が変わってきたり……。忙しさを言いわけに自分の体もコントロールできていないことに、ずっとフラストレーションを感じていました」
安藤さんを変えるきっかけになったのは、そんな日常での、ある発見。
「車の運転中、信号待ちをしている間に、若い女性の欠点を探している自分に気づいたんです。『あの子、ちょっとおなかが出てない?』と。若さに嫉妬している自分の視線に気づいたとき、すごくみじめで……。自分の体とまじめに向き合おうと思った瞬間でしたね」
以降、どんなに忙しいときも、朝7時から2時間のジムがルーティンとなった。ピラティス、筋トレ、サーキットトレーニング。半年を過ぎるころには、体重がおもしろいように落ちはじめた。「運動で体を積極的に動かしたあとは、自分の中に血がめぐるからか、前向きな心地よさを感じるんです。加えて、イライラしなくなるなど、精神のコントロールもきくようになりました。なによりよかったのは、この体は誰のものでもない、自分のものだと気づかされたこと。自分の体のマスターは、やっぱり自分なんですよ」
そしてこのころ、安藤さんはもうひとつの大きな挑戦に踏み出した。’05年、46歳で上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士前期課程に入学し、学び直しを始めたのだ。テーマは政治と女性。学生は外国人学生が多くコミュニケーションは英語、100冊単位の文献講読の課題が出されるハードなものだった。しかし、そこには報道の現場とは違った充実感が存在していたと、安藤さんは振り返る。
「視聴者のかたがたにニュースをお伝えするのがアウトプットなら、学びは完全にインプット。しかも、学びには自分しかいないんです。山のような文献も、ページをめくり、一行一行読み込んで付箋をはって、頭に入れていくしかない。どこまでも個人的なこの作業を通して、報道の場で得たものとアカデミズムの知識が相互に補完し合い、結果、どちらの時間も自分の中で尊いものになりました」
授業は、必ず最前列で受講。いつも本を鞄に入れ、移動前後に10分でもすき間ができれば読み込む時間にあてる。
第一線の社会人が学びに勤しむ、その真摯な背中は、きっと現在同様に美しかったに違いない。還暦までに博士号取得を、という目標を約束どおり(60歳と10カ月!)、見事に果たした。
「仕事とプライベートな学び、どちらかに拘泥してどちらかだけを選んでいたら、私はきっとどちらも続けられなかったでしょうね。人生の選択肢があるとして、私、いくつ選んでもかまわないと思っているんですよ」
「自分の体は自分のもの。鍛えはじめると、精神状態もコントロールできるようになりました」
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「人生の選択肢は、いくつあってもいい。これまでの自分をリスペクトしつつ、新しい一歩を踏み出す時期です」
「よくやったよね、私」。リスペクトから始めよう
自分にはこれしかできないと思い込まず、やりたいことは全部──、50代、人生の残り時間を意識しはじめた今、その思いは誰の心にもわくもの。しかし、それをすぐに焦りにシフトさせることはないと、安藤さんはいう。
「それはあまりに生まじめすぎると思うんです。だって、皆さん、これまでだって立派にやってきたじゃないですか! 仕事、家事、育児……日々、自分のいる場所で一生懸命に生きているだけで偉いわけなので。自分探しという言葉に私はあまり肯定的ではなくて、自分は探すものじゃなく、つくっていくものだと思うんです」
もう少しいうならば「自己受容、かな」と安藤さん。その時々に顔を出す自分を認め、そこから始める。この姿勢は、自己肯定感につながるという。「世界中の女性がその傾向にあるといわれていますが、日本の女性はとりわけ自己肯定感が低い。それはやはり、男性主導の社会で生きてきて、女性は家と家の周囲のコミュニティで無償のケア労働を担ってきた歴史が長かったから。家事、子育てをして一人前、親の面倒を見てあたりまえ……それじゃ、自己肯定する機会は与えられませんよね。でも、ここまでがんばってきたことを否定したら絶対ダメ。『本当によくやったよね、私』と自分をリスペクトしつつ、新しいことに挑戦するんだと。精神論ではなく、そう認識を変えて乗り越えていけばいいと思うんです」
現在は生放送の現場を退き、自身のペースでジャーナリズムと学びの実践を続ける安藤さん。いつかあの姿勢を、また画面で見る日があるのだろうか?「年齢を重ねた女性がメディアで活躍できるのは、社会の成熟度の証拠。誰もが自分を受容できて、真に多様性を認められる世の中になれば……『アンドー、またニュースやってるの?』というときがくるかもしれないですね」
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キャスター・安藤優子さん
野宮真貴さん(ミュージシャン)
ミニスカートもハイヒールも自分の「着たい」を第一に
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60歳でミニ再解禁!老眼鏡もおしゃれアイテムに
ミニ丈のワンピースとハイヒールを着こなしたそのスタイルは、まさにミューズ。渋谷系サウンドとともに青春を過ごしたエクラ世代にとって、野宮真貴さんはずっと憧れの存在だ。
「ふだんはフラットシューズを履いているし、ミニも40代のころには封印していたんですよ。でも、還暦を迎えたとき、ステージでミニ解禁!と宣言して以来、また着るようになりました。この先もっと年齢を重ねたときよりも、きっと今のほうが似合うだろうなと思うから」
フランクな語りが聞けるのも、思えば奇跡のようだ。完璧なスタイリングとつややかな歌唱をあわせもつ野宮さんは、長く神秘的な存在だったのだから。「30歳で入った『ピチカート・ファイヴ』での私の立ち位置は、小西康陽さんが作る曲の物語を演じる女優。年齢も国境も飛び越えて変身する役割だったので、年齢は非公表だし、私生活についても話していませんでした。でも、40歳になってソロ活動を再開してからは、自分自身を表現することにしたんです」
そして現在、野宮さんの存在は、さらに私たちの身近なところにある。渡辺満里奈さん、松本孝美さんと4年前に結成したユニット「大人の女史会」で、更年期世代の女性を元気にする情報を積極的に発信しているのだ。
「私たちが50歳・55歳・60歳になったときに始めた活動です。ちょうど更年期からポスト更年期までのいろいろな変化を体験する時期だから、ひとりで悩んでいないでみんなで解決しよう!というのが合言葉。健康や美容などさまざまな分野の専門家のかたにお話をうかがったり、人生の先輩の体験談を聞いたりして、同世代の女性たちと共有し、一緒に考えていけたらいいなって」
ほがらかに語る野宮さんだが、40代から50代にかけては、やはり年代なりの紆余曲折も経験したという。
「40代前半は、まだ全然イケイケでしたね(笑)。30代に出産し子育てと仕事で忙しくしていた反動でパーティざんまい、完全に不良のお母さんでした。ソロになってこの先どうしようかという不安もあったから、できるだけ忙しくしていたかったんだと思います。でも、45歳を過ぎたころから少しずつ自分の老化を自覚するようになって…」
重くはなかったものの、更年期特有の症状や、容姿の「うれしくない変化」を実感した野宮さん。当初は、美容面でできるかぎりの対処を試みていたが、ある日、その心境に揺らぎが起こる。
「ストレートヘアをきれいにキープしていても、髪と自分の顔がマッチしていないことに気づいたんです。ドレスアップして家を出ようとしたその瞬間に気持ちが萎(な)えてドタキャンするような、気持ちの落ち込みも経験しました。小さな字が見えなくなったのもショックでしたね。外見はとりつくろえても、確実に老化はすすんでいるんだと」
しかし、そこで沈み込まないのが、野宮さんの底力。老眼鏡を買いにいき、気に入るものを見つけられないとなると、メーカーに直談判。老眼鏡ならぬおしゃれな「リーディンググラス」をプロデュースしたのである。
「これを機にメガネをおしゃれアイテムにできるなぁと。老化は誰もが経験するし、嘆いていてもしょうがない。目の錯覚でもいいから、自分が機嫌よくいられるための工夫をしていこうと」
「老化は嘆いていてもしかたがない。それより、自分が機嫌よくいられる工夫を」
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「自分のおしゃれを楽しむ大人がたくさんいれば、世の中はもっと楽しくなると思うんです」
抗うのではなく、年齢は「超越する」もの
自分に似合う赤い口紅を選ぶこと。人生の記憶がつまったワードローブを大切にすること。自分なりのトレードマークをもつこと。後ろ姿にも気をくばること。顔を上げ、背すじを伸ばして歩き、声にも、語る言葉にも気持ちをこめること──野宮さんが自著につづったおしゃれのヒントは、いずれも大人世代に勇気を与えてくれるもの。自分らしくいられるために必要なのは「その時々に、自分にしっくりくるかこないかを見極める」ことだと続ける。「普通なら、60代でミニのワンピースを着る人はいないでしょう?(笑)でも、自分が着たければ着ればいいと思うんです。この年齢になれば、もう人の目は関係ない。そもそもいかに個性的であるかが大事な世界で生きてきたので、人に合わせなきゃという気持ちはないし、どんなにちぐはぐだったとしても『あの人、おしゃれを楽しんでいるんだな』という大人がたくさんいれば、世の中、楽しいじゃないですか」
加齢に抗(あらが)うのでもなく、受け入れるのでもなく、超越する──それが自分の道だと、野宮さん。そう、超越は、そもそも得意技だった。
「ボーカリストとしては、渋谷系とそのルーツの名曲を歌い継いでいく『渋谷系スタンダード化計画』を、デビュー30周年の’12年から続けています。やっと自分のやるべきことが見つかった、それが50代の収穫だったかな。次のバースデーライブでは、渋谷系以前の私のルーツであるニューウェーブをテーマにするつもり。音楽を浴びると、いつでも細胞が活性化するのを感じますね
仕事でも生活でも、ますます跳躍力を高める日々。最近始めた“あること”が、さらにはずみになっているという。「大人の女史会でタップダンスを習いはじめたんです。更年期以降、女性は骨が弱くなるでしょう? でも、タップダンスは骨粗鬆症予防になる“かかと落とし”に似ているし、ステップを覚えることが脳トレにもなる、いいことずくめじゃないかと(笑)。そうじゃなくても、新しいことを始めるって、楽しいですよね。50代はまだまだ気力も体力もある時期ですし、時間もお金も自分の楽しみのために使えば、きっと見えてくるものがあると思いますよ」
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ミュージシャン・野宮真貴さん
読者のお悩みにズバッと回答!私の行く道、教えてください
どんな場面、局面においても“私”を貫くには、いったいどんな心構えが必要? 今回、お話をうかがった3人の先輩たちに、本音でお答えいただきました。
〈お悩み〉会社員をやめ専業主婦になって数年たつのですが、心底これ!と思える仕事や生きがいが見つかりません。さいわい生活には困りませんが、このままぼんやりと老後を迎えていいものでしょうか?(53歳・主婦)
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中尾さん 見つからないのはね、見つけようとしてないから! やりたいこと、自分の楽しみなんて、自分で見つけるしかないものですよ。だってそうでしょ? たとえ一緒に暮らしている夫婦でも家族でも、趣味が違うんだから。それが何なのかわからないのは、つまりは自分をわかっていないってこと。だから、まずは集中して、自分について考える習慣をつけましょう。今の世の中、テレビやネットを見ているだけでも一日があっという間に過ぎちゃうけど、それをしなければ、考える暇なんていくらでもあるでしょう? それに、迷う人は、何もやってないから迷うんですよ。不安がっているだけで、行動が伴ってないのね。だからまずは、なんでもいいからやってみればいいの。とにかく手をつければ、「これを究めるためにはこっちもやったほうがいいな」と興味がだんだん広がって、自分に足りないものがわかってくると思う。私も、体を動かすことひとつとっても、いろいろやりましたよ。30代でジャズダンスを始めて、それを究めたいからクラシックバレエをやって、50代からは水泳にタップダンス。そうやって行動範囲を広げていくことが、「自分には、こんなこともできるんだな」という再発見にもつながっていくしね。とにかく、生きがいはつくるもの! そう心得て、行動してください。
〈お悩み〉「私らしさ」って、自覚していないといけないものでしょうか?趣味らしい趣味ももちあわせていないので、やりたいことがあって楽しく軽やかに進んでいる人を見ると自分が情けなく、悲しくなります。(55歳・会社員)
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安藤さん ちょっとご自分を否定しすぎでは……? もっと自己受容してほしいなぁと感じました。自分を受け入れられないとき、人は比較に走るんです。他者との比較によって、自分という人間の輪郭を描こうとする。でも、比較とは優劣をつけることで、そこからは何も生まれません。だって、自分は自分なんですから。何がなくても日々を楽しむ、その感情を大事に、素直に表しているだけで十分、人は輝いて見えるものですよ。
野宮さん 趣味、別になくてもいいと思います。誰もが趣味をもっているわけじゃないし、私もこれといって趣味のない人間です。誰かと比べてしまうから悩むのでしょうけど、その人が存在していること自体が、ほかの誰でもない、その人らしさなので。あまり意識せず、人は人、自分は自分でいきましょう。
〈お悩み〉長年住みたいと思っていた街へ引っ越しをしようか、迷っています。それほど遠方ではないのですが、体力、気力が心配。でも、今が最後のチャンスかとも……。(55歳・主婦)
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安藤さん いいじゃないですか。でも、実行するなら早いほうがいいですね。引っ越しも、新しい土地でコミュニティーになじむのも、相当なエネルギーが必要になりますから。もし完全に今の場所から離れるのがむずかしいのなら、二拠点生活という手もあります。ですが、50歳から一応二拠点生活をしている身で本音をいわせていただくと、大変以外の何ものでもありません! 確かに、行くとすごく気分転換になりますが、メンテナンスもあるし、経費の問題もあるし……特に、家の中をなるべく完璧にしておきたい私にとっては、行くたびにメンテナンス疲れになって、「いったい何しにきたんだろう?」となることもしばしばです(笑)。そういえば周囲でも、年代的に早めの“終活”だといって家や物を処分して地方へ引っ越した人がけっこういますが、案外、すぐに東京に戻ってきます。だから、大事なのは、その時々の状況に合わせて判断して動ける、ということなんでしょうね。
野宮さん お引っ越し、いいと思いますし、きっと最後のチャンスでもないと思います。自分が60代になってから50代を振り返ると、当時は「老けたなぁ」と感じていたけど、あのころは全然若かったし元気だった!と思うんですよね(笑)。いろいろ予想して心配しても、状況は逐一変わっていくものですから、それならば、その時々に楽しめることをやったほうがいい。誰でも、今が一番若いんですから。
〈お悩み〉自分の体型のせいで、スタイルがイメージどおりの仕上がりになりません。顔も黄ぐすみで服が似合わず着たい服と似合う服の乖離がどんどん広がっていく感じです。年齢に応じた新たな視点を教えてほしいです。(51歳・秘書)
中尾さん だったら体型を自分のイメージどおりにしましょうよ! 私なら、まず、高いドレスを作って、それを着られるように体を合わせる努力をします。ずっとそうしてきて、何十年も同じドレスを着られているから、高い出費も十分、元をとれてます。それに、年齢相応でいなさいって、誰が決めたの? いくつになったらこの色やデザインは着ちゃいけないって時代でもないんだし、要するに、あなたの気持ちひとつですよ。
安藤さん 20代や30代の自分と50代の自分は、違ってあたりまえ。だから、やっぱりセルフイメージのリニューアルは必要ですよね。今、年齢を重ねたかたたちの服装を見ていると、娘世代と同じものを着ようとする人と「もう年だから」と“年齢相応”な格好をする人に二極化している気がするんです。でも、その真ん中に「自分は自分」という人がいる。体型を整える、なんて考えはやっつけちゃって、この体型で私はこう着るの!と、年齢は関係なく自分の時間軸で生きているかっこいい人が、必ずいるんです。私の敬愛するデザイナー・島田順子さんも、そんなおひとり。みんなが同じように若づくりするのではなく、多様性を受け入れる寛容性、柔軟性が、これからの社会に必要だと思っています。
野宮さん たぶん、ご自身のイメージが若いままなのでしょうね。筋トレでも散歩でも始めて、まずは体型をもとに戻しましょう。そうすれば着たい服が着られるし、健康にもなって顔のくすみもとれると思います。コツコツ努力するのが苦手なら、あとは着こなしで。今はファッション系のYouTuberが動画でコツを教えてくれますし、ブティックの店員さんに相談してみるのも手。そして、そのときに大事なのは、「自分はこういう服は着たことがない」「こういう色は似合わないから」といわず、一度、いわれたままにしてみることです。自分では意外なものが似合って周囲からほめられたりすると、自信になりますから。私も日々お世話になっていますが、プロの力って偉大なんですよ。
〈お悩み〉友人は、エステに通うと夫に話したところ「この年で⁉」「それって誰得?」と反対されたそうです。私は自分のためだと思っていますが、きれいにしていたいメンタルをいつまで維持できるのか?と思ったりもします。60代以降の美容への考え方を教えてください。(52歳・会社員)
中尾さん 「誰得?」って、バカいってんじゃないわよ。そんなこといってる夫も、きっと怠惰な生活をして年をとって、みっともなくなってるんじゃない? だったら、まずは妻がきれいになれば、きっと引きずられてかっこよくなるはずですよ。お友だちもあなたも、自信をもってエステに行けばいい。だって、これまで夫のため、子供のためって、さんざんがんばってきたんでしょ? だったら、これからもう一度自分に戻るんだと思って、なんでも自由にしたらいい。そうじゃないと、ここから先、もっと年をとったときに「ああ、夫のせいで、家族のせいでムダな時間を過ごした」と後悔しながら過ごすことになるなんて、もったいないじゃない。余裕があるなら、ここから先は、時間もお金も全部自分のために使いましょう! ついでに夫にも見栄えよくなってもらって、素敵な夫婦でいたらいいと思います。
野宮さん 実感として思うのは、60代以降は、美容=健康・元気であること。これまで見た目が一番だったとしても、だんだんそれだけでは立ちゆかなくなってきます。健康でいれば、口角が自然と上がりますし、血色もよくなる。姿勢よくいることも大切です。あと、きれいにしていたいのなら、エステより月に1回ヘアサロンに行くことを私はおすすめします。髪型が今っぽかったり髪がツヤッとしていると、赤い口紅をつけるだけのメイクがさりげなくおしゃれに見えるもの。メンタルとおっしゃいますが、そもそもおしゃれは悩むことではなく、楽しいこと。自分のためにきれいでいたいという気持ちがあるかたなら、ぜひそのまま突き進んでいただきたいですね。あと、いつもスマホのアプリでご自分の写真を修整してしまうかたは、修整画像のほうに自分を近づけていく努力もお忘れなく(笑)。
〈お悩み〉資格もないし、正社員でもない。独身なので、この先も働かなくてはならないと思います。でも、仕事があるのか、できるのか……不安です。(53歳・派遣社員)
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安藤さん 非正規、フリーランスでいることは、束縛されない自由さと、明日飢えるかもしれない自由さ、どちらも覚悟をしなければならない立場。そこには確かに厳しさがあります。でも、このかたがどこまで、どのように働きたいかしだいだと思いますが、仕事はあると思いますよ。そして、会社員のように、どこかに属することだけが仕事のやり方ではありません。もしやりたいことがあるのなら、特別な資格がなくても起業することだってできる、そのくらいの発想の転換をしてみたらいかがでしょう? 今の世の中、起業を応援する公的な助成金もありますし、SNSという強力かつ無料の宣伝ツールも。発信のスキルをつければ、広告収入を得るなど、意外な道が開ける可能性もあります。
〈お悩み〉個人事業主なので、年齢にとらわれずこれからも仕事をしていくつもりです。でも、会社員の夫は、定年後はゆっくり趣味を楽しみたいとのこと。この先、夫とペースが合わなくなるのでは?と心配しています。(56歳・ライター)
野宮さん もし夫が定年して趣味を楽しむようになったら、逆に家のこともやってもらったりしてもいいのでは。そうすれば仕事に集中できて、相談者のかたはさらに生きがいを感じられるかもしれません。もし本当にペースが合わなくなったら、別居してみる方法もあるし……一般的な夫婦の形にとらわれなくてもいいんじゃないでしょうか。いろいろ考えても思うようにならないのが人生。だったら、あまり心を悩ますことに時間を使わないで、その時その時に考えるようにしたほうがいいと思います。
〈お悩み〉15年来のママ友から自分優先でわがままな印象を受けるようになり、最近、今後の付き合いを考えています。ただ、こんな調子で付き合いをやめていくと、自分のまわりに友人がいなくなってしまわないかと……。(51歳・主婦)
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中尾さん わがままってことは、自分の思うとおりに動いてくれないからわがままだって思うわけでしょ? こういうかたって、ひとりの人にすべてを求めてるんじゃないかな。だったら、友だちを増やせば? 人間なんて、この地球上にあふれてるんだから、いくらだって知り合えるよ! で、この人は仕事の仲間、この人は趣味の友だち、とそこだけで付き合えばいい。私のいた「スパーク3人娘」だって、趣味は全然合わなかったし、お互いがどんな生活をしてるかも知らなかったけど、仕事はちゃんとできた。逆に、もし友だちだと思ってたら続かなかったと思う。ひとりの人に多くを求めず、それぞれの場で楽しんで、それ以外は干渉しない。私も含めてみんながみんな、パーフェクトじゃないんだから、いいところだけ見ればいいのよ。
安藤さん 心が相手から離れているのであれば、それはそれでしかたがないこと。面倒な相手とわざわざ付き合っても、しかたがないですよね。それよりは、新しい出会いに心を向けましょう。自分がそうだったので声を大にしていいたいのですが、出会いは誰もがほぼ毎日経験していて、その時代時代に出会う人って、必ずいるんですよ。学生時代からの友だちがいれば、仕事先で知り合って友だちになる人もいるし、突然エステで出会った人も……だから、心配は無用だと思います。要は、その出会いを出会いとするかどうか。例えば、偶然向かい合った人と二言三言話をして、そこから交流を深めるかどうかは、そのかたの意思。気が向いたら、そこから新しい関係を結んでいけばいいんですから。
〈お悩み〉自分と夫の両親は4人とも80代で存命です。でもこの先、一気に4人の介護をするようになったら?と、想像するだけで不安が。自分の生活やメンタルをどのように保てばいいのでしょう。(52歳・パーソナルスタイリスト)

中尾さん 介護も看護も、今は昔に比べればすごくいい時代になって、信じられないほど助けの手に恵まれてるわけでしょう? 知識のない人間が寄り集まって「どうしましょう」っていい合ってるくらいなら、プロたちにお願いしたほうがよっぽどいいの。それに、まだご両親たちがお元気なら、ジムでも行かせてせっせと運動してもらいましょう! 自分たちの足で歩いて生活できるほうが、ご本人たちにとってもずっと明るくいられるはずなんですから。あとは家事でもなんでも、できることはやってもらうこと。一から十まで面倒を見ることが親切ではないのよ。「お願いします」って、頼ればいいの。いくつになっても人間、自分が役に立ってると思えることが生きがいになるんだから。
安藤さん あと10年くらいの間には、誰かしらが何かの介護が必要になりますよね。そのときに大事なのは、家族とどう分担するか、そして、家族だけでは解決できない際にアウトソーシングすることの理解を、今のうちに取り付けておくことだと思います。そして、いざそのときがきたら、精神的に追い詰められないように、ひとりになれる時間を、ごくわずかでもしゃにむに確保しましょう。私の場合、父と母のケアが重なったときには、どんなに忙しくても毎朝7時にはジムに行くことにしていました。閉じていく人生を見守る介護は、育児と違って喜びが少ないぶん、しんどいもの。自分を労る時間を大切にしてください。
野宮さん 4人一度に……ということはないと思いますが、少しずつ具体的な準備はしておいたほうがいいかもしれませんね。なによりも、ご両親それぞれが今後、どんなふうに生活していきたいかを聞いておくことが大切です。体が動かなくなったら施設に入りたいと思うかたもいるでしょうし、最後まで自宅にいたいというかたもいるかもしれないし。施設ならどんなところが希望なのか、そのためのお金があるのかどうか……。エンディングノートを書いてもらう、あるいは聞き出して自分で書く、そのくらいの具体的な準備をしておけば安心だし、計画も立てられる。そうしておけば、メンタルも揺らがないのではないでしょうか。
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