【ファッションデザイナー・野口アヤさんのお宅拝見】なるべくもとの姿に戻して住み継ぐ、名作ヴィンテージマンション

アラウンド50から住みたいのは、これからの暮らしにフィットする家。好きなものを厳選して、いい時間を過ごしたい。そこでおしゃれな人たちのおうちを参考に、暮らしを充実させるヒントを見つけて。今回はファッションデザイナー、ギャラリーディレクターとして活躍中の野口アヤさんのお宅を拝見。
ファッションデザイナー、ギャラリーディレクター 野口アヤさん

ファッションデザイナー、ギャラリーディレクター 野口アヤさん

ファッションデザイナーとして活躍し「Balcony and Bed」などを経て’19年に「ayanoguchiaya」(@__aya_noguchi_aya__)をスタート。シソンギャラリー(@sison_gallery)ではディレクターを務め、アートや工芸を提案。南葉山と東京の2拠点で生活。
リビング

大きな窓に切り取られた庭が、絵画のように美しいリビング。右のソファは4年前に購入したアルフレックスの名作、マレンコ。左は20年前にロイズ アンティークスで購入したヴィンテージで張り替えて愛用。奥にはボーエ・モーエンセンのハンツマンチェアが。コーヒーテーブルはイサム・ノグチのデザイン。手前のウッドスツールは盛永省治作。床は竣工当時のままのフランス製タイル張り。アーチを描くフロスのアルコランプは竣工当時から各戸に置かれていたそう。窓辺にはイサム・ノグチのAKARIシリーズのランプを

住んでみてわかる配慮。暮らしやすさへの優しいまなざし

野口アヤさんと夫のチダコウイチさんが暮らすのは築46年のヴィンテージマンション。洋風の外観に和風の庭、日本のモダニズム建築を代表する名建築家、吉村順三による設計だ。よく「物件に縁がある」というが、野口さん夫婦とこのマンションはまさに縁がある。

「一度目は’00年。今の家の隣の住戸に賃貸で入居し、仕事場を兼ねた住まいとして2年弱暮らしました」

その後も味わいあるヴィンテージハウスを転々とし、たまたま近所に住んでいたときにチラシを見て内見に。

「ひやかし半分だったのですが、入った瞬間、やっぱりここがいい!と」

 
’14年に購入し、再び入居することになった。「できるかぎりオリジナルの姿に戻したい」とカーペットやコルクの床を張り替え、壁紙を塗装に戻し、空調などの設備機器には現代の技術を導入して、手を加えながら暮らしている。驚くのは天井に照明がないこと。

「なので間接照明を置いて暮らしています。最初は『暗っ』と思いましたが、慣れたら快適に。よく眠れるし、夜は暗いほうが自然だと思うようになりました。収納がたっぷりあり、家事室や勝手口もあるため家事動線がとてもスムーズ。風の通り道を考えて窓や通気口が設けられていたり、隣家との間の壁厚はなんと30㎝も。暮らしやすさに配慮したこまやかな工夫がたくさんあって、さすがだなと感じています」

「家も家具も古いものが好き」と野口さん。使い込まれた味わいがあり、今では貴重な素材を使っていたり、手をかけてていねいに作られているからだ。

「もともとは古着が好きで。家具もその延長で、アメリカなどで手に入れたヴィンテージのアノニマスなものを使ってきました。いわゆる名作といわれる家具に目が向くようになったのはこの家に暮らしはじめてから。やはりいいものはいいんだなと、素直に思えるようになって(笑)。この家に合うことを基準に少しずつ手に入れています」

引っ越してきたころと比べると、全体のトーンは変わっていないが、家具はかなり変わっているという。家具もアートも夫婦で納得したものしか買わないし、年々ものが増えていくので、増えたぶんは減らすようにもしている。

「最近は残すべきアートや家具、建築にきちんとお金を払っていこうといういい時流に。この家も家具も小さな修理を重ねて大切に使っていきたいです」

愛猫

2匹の愛猫、ベッチンとフラノ(写真)と暮らす

リビング

吉村順三設計らしい、中心に暖炉のあるリビング。暖炉左のエネルギッシュな作品は若手注目作家の吉野マオ、右は古い和紙に墨でポップに描く奥村乃の作品。ともに野口さんがディレクターを務めるシソンギャラリーにて個展を開催。アートは気分により頻繁にかけ替え、楽しんでいる

ダイニング

午前中はダイニングで過ごすことが多いという野口さんとチダさん。ダイニングチェアはYチェアやアーコールチェア、ドムスチェアを使用。スタンドランプはル・コルビュジェによるパーラメント。壁のアートはジョン・ルーリー。手前のガラスのオブジェはYuri Iwamotoの作品

リビング

夜はリビングで過ごし、VAVAのプロジェクターで映画を見ることも。スピーカーはオーディオ好きなチダさんと同い年のイギリス製。ウーハーはリン。ホームパーティのときはゲストにレコードを持参してもらい、プレーヤーで聞くのが楽しみに。スピーカー上のグリッドのオブジェは森昭子の作品。壁には田中健太郎のアートを

キッチン

オリジナルのミント色の収納扉はそのまま残し、汚れてしまっていた天板を大理石に替えたキッチン。コージーで使いやすく、奥には洗濯機や乾燥機を置いた家事室と勝手口があり、とても機能的

棚

棚の上には藤本健の木製皿などが。左端はバング&オルフセン×デヴィッド・リンチのコラボスピーカー

照明

この家にもともとついていた照明。吉村順三デザインのガラス製ウォールランプ

レコード

CDは処分したがレコードは残し、最近はホームパーティなどで友人たちと聞くのが楽しみに

カトラリーレスト

チダさんが作陶した器やカトラリーレスト。カトラリーレストは大好評でザ・コンランショップで販売も。すぐに完売してしまう人気アイテムに

ガラスのポット

ガラスのポットはスウェーデンのヴィンテージでシグネ ペーション メリンによるデザイン。湯飲みは吉野瞬、菓子皿は濱端弘太

寝室

2階の主寝室。壁は壁紙から竣工時と同じ漆喰塗りに戻した。ベッドはグーグースリープ、ランプはヤマギワで購入したル・コルビュジェのランプドマルセイユ。窓辺には鈴木杏や中村真那の作品、アメリカで手に入れたオブジェなどが

愛猫

愛猫ベッチン。スローは友人のスタイリスト・石井佳苗さんが買い付けたブータンの織り物

アート

主寝室の壁左のアートは門田千明、右はデヴィッド・リンチのポスター。椅子はヴィンテージショップで

洗面室

洗面バスルームは清潔感のある白系にリノベーション。20年近く親交のあるアリシア・ベイ=ローレルのアートを飾った

階段

階段の手すりは、オリジナルに近い赤紫色のベルベット生地に張り替えた。壁にはオーガミノリのアートが

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